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感染と拡大

第9話 夜中のデート タイプ花蓮

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「誰だって。このパターンは、さすがに初めてのタイプだな。今までされた事がないよ」
 顔を、おそらく胸? に埋めた状態で、今しゃべっている。
 しゃべるたびに、ピクピクするのは口や顎が動く振動が伝わる生だろうが、地味に鼻先にある金具か? フロントホックなのか当たって痛い。

「いい加減にしてくれないか。花蓮」
「うーん。もう少し。お尻を支えてくれると助かります。先輩」
 手を伸ばすと、ズボンじゃなくミニスカート。
 この感触は、モロパンだな。
「ひゃう。うううっ。ああっ」
 お尻を支える手に、重みがずっしりくる。

 おまえもか、どうも、僕というか。うーん眷属かな。
 それになると、感度が上がるな。
 ハアハア言っている、花蓮を、下ろす。
「ああいいっ。くみが言っていたのが、分かった」
「くみはどうした?」
「昼過ぎ。家族に、どなどなされました」
 ビシッと、敬礼する。

「そのミニスカートやめないか? 異論はあるかもしれんが気になるし他の奴の目線がな」
「焼き餅ですよね」
 あー。見られたくないのも確かか。
「ああそうだ」
「分かりました」

「それはそうと、おまえの能力は?」
「えーと、体からの毒散布です。弱ければ、麻痺するだけ見たいですけど」
「どうして、あのとき使わなかったんだ。麻痺させて逃げていれば、巾着にされずにすんだだろう」
「いや。あのときは焦っていたし。くみを巻き添えにすると思って」
「友達のために、自分の貞操を捨てようとしたのか?」
「あーうん。はい」
「ばかだな。おまえは」
 つい、抱きしめ。頭をなでる。

 さっきの、すぐ後。
 時間を置かずに2度目なので、結構強力に来たようだ。
 こしが、がっくんがっくん。なっている。

「はふはふ。ひゃうん」
 周りにうろついている警察に見られても面倒。

 この辺り、小高い山の公園かな。
 痴漢とのぞきのメッカ。
 影に潜り移動する。

 お姫様抱っこして、ベンチに座る。
「わあ。ここ良いですね。景色綺麗」
「落ち着いたか?」
「ちょっとだけ。触ります。周りくらいですし。ミニだから障害物なしで、すぐ奥まで到達」
 そう言いながら、俺の左手を握って、自分へと導こうとしてくる。

「あっ。ちょうど2人釣れた。範囲を狭く出せるか?」
「あーうん。このくらい?」

「あーこんな暗いところで、いちゃついていると危険だよ。覗かれるし。覗かれたいなら俺らがじっくり見てやるけど? どうだい。男優はむろんおべばぎ」
 そう言いながら、白目をむいて倒れる。

「意外と時間がかかるな」
「範囲を超えると無毒化させるから、距離ですかね。もう少し広くても。ひゃうん。ああっきた」
「倒れる前に帰るぞ」

 そう言って、こいつの家の近く。児童公園まで来た。

「大丈夫か?」
「ここからなら、家はすぐなので。チュウしてくれれば、大丈夫ぶいです」
「ああそうか」
 軽くだが、キスする。

「ふひゃ。あぶない。またいくところでした。おやすみなさい」
 とは言ったが、危険なので、出口まで着いていく。
「あそこの、角の家なので。おやすみなさい」
 と言い。帰ろうとしたが、振り返る。

「あっそうだ。先輩。明智さんが、いい加減うっとうしいので、殺(や)っていいですか?」
「あーあれでも友人なんだ。見逃してくれ」
「むー。それじゃあ。総って呼ぶのと。付き合っているのを、言うのはだめ?」
「まあ仕方ないな」
「よし。じゃあ私の事は、花蓮と呼び捨てで、お願いしますね」
 そう言って、投げキッスしながら走って行った。

「意外と元気だな」
 俺は、そのまま家に飛ぶ。


「空手使いはどうなった?」
「後藤のやろう。昨夜の連絡から後。消息不明です」
「パクられたんじゃ。ないだろうな?」
「ええ聞いてみましたが、所轄にはいません」
「ちっ何奴もこいつも。ああっ? サブにしろ、その……後藤にしろ。強えよな」
「はい。そうですね。後藤は、今なら抜き手で、3cmの鉄板をぶち抜けると言っていましたし。実際コンテナの扉ぶち抜いて。引っくり返すパワーも……。行方不明? えっ。かしら。俺たち何と戦っているんでしょう?」
 そう聞かれても口元に握りこんだ手を当て、動きが止まっている。かしらこと、遠藤。

「どう考えても、ヤバイ事が分かった。上に連絡して迷惑を掛けないためにも、姿を消すと説明しよう」
「許して、もらえます?」
「どうかな? 下手すりゃ埋められるな。おまえら逃げろ」


「破門だぁ? 遠藤。てめえ、ふざけてんのかと、言いたいところだが。おまえだけじゃない。俗に言う。違法という。しのぎを掛けている人間が、日本中だけじゃなく、世界中で殺されている。まあ、巻き添えを食った警官とかも、死んでいるらしいが」
 そう言って、机の引き出しを開け。何かを取り出す。

「相手は、一般の素人。ある日突然。人を殺したくなって、殺してもいい。自身の良心が痛まない。そんな言い訳に、悪い奴を探しているらしい。だが、シンガポールじゃ、道路にツバはいても、殺されるらしい。そいつら、銃弾より早く動けるって聞いたしな。ああ。そうだ。アメリカじゃ。教会に懺悔をしに行ったら。牧師が笑いながら、撲殺したってよ。『悔い改めよ』とか言いながら。よっぽどじゃ無けりゃ信用できねえ。お巡りが、赤信号は止まれとか言いながら、いきなり襲ってくるかもしれねえぞ」
 そう言って笑う。だがかなり疲れた表情は見て取れる。
 実際。悩んでいた。仲間は仲間でいた方が信用できる。
 だが、誰かが、トカゲの尻尾を踏むかもしれない。集団では、そのリスクは大きくなる。

「それ何処の、世紀末な話ですか?」
「リアルだ。ほら、選別だやるよ」
「こりゃ?」
「デザートイーグル.50AE。弾頭径は0.54インチ。装填弾数7発だ。レベルIIのボディアーマーを貫通する。じゃあな。気を付けろ」

 その数日後。遠藤はどこかの公園で、7発全部を撃ち尽くし。糸の直径1cm近い蜘蛛の巣に、捕らえられていた。無論すべての体液を、失った状態で。
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