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第2章 新たな社会の始まり
第44話 隊の強化
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チームを潰された責任は、結果的に俺たちはとらされることは無かった。
だが合同の葬儀に出席し、悲しむ同僚や家族の方々を見て、おれは隊長というものに対して、半ば強制とはいえ安易に受けて、受けた俺は、その責任を放棄していた事に気が付いた。
今までは、自分の家族。そして、仲の良い者たちだけだった責任範囲が、組織というものの中で大きくなっていた。
少し考えれば、わかりそうな答え。
自然と、涙がこぼれる。
これはきっと、自責の念から来たものだろう。
ただ、とめどなく溢れる涙。
目の前では、誰か偉い人が言葉を紡ぐ。
「突然現れた脅威から、国民を守るため。詳細は申せませんが、特殊な訓練に挑んでいた彼ら。本当なら、日本の。いや世界の救世主としてなるべく挑んでいました。道半ばで優秀な彼らを失ってしまったのは、非常に大きな損失です。ご家族の方々には大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。ですが、我ら残されたものは、彼らの遺志を継ぎ、我らは、必ず平和な世界を取り戻す努力を行い、達成します。残された家族の方々が、胸を張り、道半ばで倒れられた隊員が、あの組織の一員だったと誇れる結果を目指し、精進いたします」
そうか、そうだよな。
その日、志も新たに、隊長として頑張ろうと決意をする。
数日後、決意も新たに、隊員みんなの力を見せてもらうことにした。
聞けば自衛隊格闘術も習得をしているらしいので、それを試すことにした。
「えー山瀬です。これから少し皆さんの力を見せていただきます。ただ双方の力の差が分からないので、最初は優しくお願いします」
そんな宣言をしたが、その後は
「もっと早く」「もっと強く」「単調ではなく相手に会わせて変化をして」
そんな言葉のオンパレード。
「ひどい。翔太より弱い」
思わず、本音が漏れる。
それを横で聞いていた、紗莉と翠、紬から笑いがこぼれる。
翔太は微妙な顔だが。
その後、無敵モードの翔太やほかの3人も、組手に参加してもらった。
こちらは武術を習っていなかったので、非常に勉強になった。
ただまあ、圧倒的身体能力の差がある。
技により、多少差し込まれても、力とスピードでかわせるし、逆に少々無理な体勢からでもひっくり返すことができる。
やがて、隊員も疲れて来たのか、紬にころころと転がされ始めたので終了する。
時計を見ると、3時間程度経っている。
「やめー」
そう声をかけた瞬間、倒れる隊員たち。
うん? ああ、足がもうだめなのか。
一生懸命立とうとしているが、足にまるで力が入らないようだ。
呆然としている、わがチームの戦術補佐官。森大介1等陸尉を呼ぶ。
ゾンビの様な動きで、こちらにやってくる。
「隊員の基礎的能力が、低すぎます」
そう言われなくても、分かっていたのだろう。
「失礼ながら、隊長たちの方がおかしいという意見が多数です」
少し、顔が引きつっているがまあいい。
「どうしよう? 聞いていいかな?」
「はい。なんでしょう?」
「今まで、境界の奥でどうやって倒していたの?」
「基本装備で突入していました」
「と言うことは、主に小銃で倒していたのかな?」
「はい。そうなります」
身内の事を考える。
当然みんな、初期装備はこん棒から開始だ。
銃などもってのほか。
「よし明日。例の深い穴に突入する。装備はナイフのみ可とし基本は素手。0900ここへ集合。状況終了。わかれ」
そう言って、解散した。
ある隊員たち。
「解散と言ったって、体が動かねえ」
「こら、人にしがみつくな。あいつら、3時間動きっぱなしで、どうして平気なんだ? まだこっちの方が、人数多い分休めたよな」
元のチーム40人。5人減ったが35人。
「ああ、それを生かして、掛稽古(かかりげいこ)をする感じでずっと戦っていた。まあ転がるのはこちらばかりだけど。あの紬副長って中3だったよな」
「ああ。そうだ。無造作に近づいたら目の前で消えたよ。気が付いたら空を見ていた」
「最初は、まだ身体的な能力差でやられていたけれど、時間が経つにつれ技を覚えられて、触れた瞬間。こっちは転がっているんだもの。やってられねえ」
「でもいい加減起きて、何とかしないと、明日はあの穴に入るんだろう?」
「わかっている。だが時間が経つと余計に力が。完全にくっころ状態だ」
「くっころと言えば、わが隊の奈央ちゃんとさくらはどこだ?」
目だけで探すと、居た。
「ああ畜生。こんな時にさわやかな笑顔で、手を差し出せば」
「ああ。完全に同意だ。だが動かん」
「何とかあそこまで行って、上に倒れこむという手もあるぞ」
「ばれたら懲戒だな」
そんな彼ら、動けるまでに30分ていどを要したようだ。
その晩、幾人か風呂場でおぼれて、死にそうになり。
ほかにも、夕食中に意識を飛ばしたり、そもそも食えなかったり。
運動部あるあるを、数年ぶりに体験したようだ。
翌朝彼らは、集合時ですでに歯をくいしばり立っていた。
よくは無いが、全員に修復を掛ける。
本当は、自己修復に任せた方が筋力はアップするが、レベルアップ的な物は、単純に筋肉量が増えているようではないので、まあいいだろう。
あれは、細胞自体がきっと別な構造に変化をしている。
「動けるようになったかな? それでは行こう」
そう言って全員を転移させた。
だが合同の葬儀に出席し、悲しむ同僚や家族の方々を見て、おれは隊長というものに対して、半ば強制とはいえ安易に受けて、受けた俺は、その責任を放棄していた事に気が付いた。
今までは、自分の家族。そして、仲の良い者たちだけだった責任範囲が、組織というものの中で大きくなっていた。
少し考えれば、わかりそうな答え。
自然と、涙がこぼれる。
これはきっと、自責の念から来たものだろう。
ただ、とめどなく溢れる涙。
目の前では、誰か偉い人が言葉を紡ぐ。
「突然現れた脅威から、国民を守るため。詳細は申せませんが、特殊な訓練に挑んでいた彼ら。本当なら、日本の。いや世界の救世主としてなるべく挑んでいました。道半ばで優秀な彼らを失ってしまったのは、非常に大きな損失です。ご家族の方々には大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。ですが、我ら残されたものは、彼らの遺志を継ぎ、我らは、必ず平和な世界を取り戻す努力を行い、達成します。残された家族の方々が、胸を張り、道半ばで倒れられた隊員が、あの組織の一員だったと誇れる結果を目指し、精進いたします」
そうか、そうだよな。
その日、志も新たに、隊長として頑張ろうと決意をする。
数日後、決意も新たに、隊員みんなの力を見せてもらうことにした。
聞けば自衛隊格闘術も習得をしているらしいので、それを試すことにした。
「えー山瀬です。これから少し皆さんの力を見せていただきます。ただ双方の力の差が分からないので、最初は優しくお願いします」
そんな宣言をしたが、その後は
「もっと早く」「もっと強く」「単調ではなく相手に会わせて変化をして」
そんな言葉のオンパレード。
「ひどい。翔太より弱い」
思わず、本音が漏れる。
それを横で聞いていた、紗莉と翠、紬から笑いがこぼれる。
翔太は微妙な顔だが。
その後、無敵モードの翔太やほかの3人も、組手に参加してもらった。
こちらは武術を習っていなかったので、非常に勉強になった。
ただまあ、圧倒的身体能力の差がある。
技により、多少差し込まれても、力とスピードでかわせるし、逆に少々無理な体勢からでもひっくり返すことができる。
やがて、隊員も疲れて来たのか、紬にころころと転がされ始めたので終了する。
時計を見ると、3時間程度経っている。
「やめー」
そう声をかけた瞬間、倒れる隊員たち。
うん? ああ、足がもうだめなのか。
一生懸命立とうとしているが、足にまるで力が入らないようだ。
呆然としている、わがチームの戦術補佐官。森大介1等陸尉を呼ぶ。
ゾンビの様な動きで、こちらにやってくる。
「隊員の基礎的能力が、低すぎます」
そう言われなくても、分かっていたのだろう。
「失礼ながら、隊長たちの方がおかしいという意見が多数です」
少し、顔が引きつっているがまあいい。
「どうしよう? 聞いていいかな?」
「はい。なんでしょう?」
「今まで、境界の奥でどうやって倒していたの?」
「基本装備で突入していました」
「と言うことは、主に小銃で倒していたのかな?」
「はい。そうなります」
身内の事を考える。
当然みんな、初期装備はこん棒から開始だ。
銃などもってのほか。
「よし明日。例の深い穴に突入する。装備はナイフのみ可とし基本は素手。0900ここへ集合。状況終了。わかれ」
そう言って、解散した。
ある隊員たち。
「解散と言ったって、体が動かねえ」
「こら、人にしがみつくな。あいつら、3時間動きっぱなしで、どうして平気なんだ? まだこっちの方が、人数多い分休めたよな」
元のチーム40人。5人減ったが35人。
「ああ、それを生かして、掛稽古(かかりげいこ)をする感じでずっと戦っていた。まあ転がるのはこちらばかりだけど。あの紬副長って中3だったよな」
「ああ。そうだ。無造作に近づいたら目の前で消えたよ。気が付いたら空を見ていた」
「最初は、まだ身体的な能力差でやられていたけれど、時間が経つにつれ技を覚えられて、触れた瞬間。こっちは転がっているんだもの。やってられねえ」
「でもいい加減起きて、何とかしないと、明日はあの穴に入るんだろう?」
「わかっている。だが時間が経つと余計に力が。完全にくっころ状態だ」
「くっころと言えば、わが隊の奈央ちゃんとさくらはどこだ?」
目だけで探すと、居た。
「ああ畜生。こんな時にさわやかな笑顔で、手を差し出せば」
「ああ。完全に同意だ。だが動かん」
「何とかあそこまで行って、上に倒れこむという手もあるぞ」
「ばれたら懲戒だな」
そんな彼ら、動けるまでに30分ていどを要したようだ。
その晩、幾人か風呂場でおぼれて、死にそうになり。
ほかにも、夕食中に意識を飛ばしたり、そもそも食えなかったり。
運動部あるあるを、数年ぶりに体験したようだ。
翌朝彼らは、集合時ですでに歯をくいしばり立っていた。
よくは無いが、全員に修復を掛ける。
本当は、自己修復に任せた方が筋力はアップするが、レベルアップ的な物は、単純に筋肉量が増えているようではないので、まあいいだろう。
あれは、細胞自体がきっと別な構造に変化をしている。
「動けるようになったかな? それでは行こう」
そう言って全員を転移させた。
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