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第2章 新たな社会の始まり

第24話 穴の中はどうなっているのか?

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 学校へ行くと、皆のざわめきが昨日よりもひどくなっている。

「なんだよ一体?」
 俺は相変わらず休み時間は、紗莉と他愛のない話をして過ごしている。

 それなのに、妙な視線や指さしざわめきが聞こえて来る。
 まあ無視するけどね。

 そんな一日を過ごして、帰り道。
 また、河原横の穴からモンスターと火の玉が湧いている。

 この前も潰したのに、またかよ。

 一度家に帰り、風呂当番をしっかりこなし、河原へ向かう。

 周りにいる奴を浄化して、小鬼も潰す。
 最近は、しっかり焼くことにしている。
 残すと、また色々言われるからな。

 暗渠の中を見るとまだまだ湧いてくる。

 退治や浄化をしながら、奥へと入り湧いている境界へと手を差し込んでみる。
 手は抵抗もなく差し込めて、反対側には見えていない。
 あっ、齧りやがったな。

 顔を突っ込み、俺の手にかみついている小鬼をぶん殴る。

 最近かまれたぐらいでは、何もならない。
 
 顔を突っ込んだついでに周りに居た奴らも殲滅をする。
 あれ? こちら側で倒すと消えるぞ?

 いったいどういう仕組みだよ?

 訳が分からないが、奥へと進みながらどんどん倒していく。

 途中で下りながらガンガン進んで行く。
 階は、階段ではなく下り坂。

 下った所で平地になり、通路が続く。

 入った時から感じていたが、この空気感。
 綾織の管理空間に近い。

 そうして走りながら、前に出てくる奴らは遠慮なく魔法で焼き払っていく。
 そうやって、移動しながらも、もし出口を閉じられるといやだな、とそんな不安があるため、必然的に足はどんどん速くなっていく。


 もう何段来ただろう?
 一つの、平らな部分が4~500m位? それをえーと10カ所は越えた気がする。

 奥に、光る丸い壁がありそこへ突っ込むと、思いっきり壁だった。

「いてー」
 そう叫びながら、後ろに向けて転ぶ。

 すると、ぶつかった壁がガラガラと崩れ、中に光る球が埋まっていたらしく転がり出て来た。

 さっき光っていたほぼ中心辺りだな。

 そっと手を伸ばして、掴む。
 大きさは、バレーボール位? いやハンドボールかな。

 持って見ていると、気のせいかどんどん小さくなっていく。
 気のせいではなく、明らかに小さくなり消えて行った。

 完全に消えた瞬間、俺の体がおかしくなる。
 これは、神水を飲んだ時の感じ。
 体が壊されて、作り変えられる。

 しゃがみ込み蹲ったまま、どのくらいが経ったのだろう。
 感覚と力が戻って元の状態を跳び越す。

 思わず、「ふははは」と高笑いをしたくなるような全能感。

 もう、奥から奴らが湧いてくることも無くなって、静かな道を戻って行く。

 だが、体を構築しなおすときに、魂に刻まれるように理解をした理。

 そうか、これは一種のダンジョンなんだ。
 地獄とつながる道。

 本当は、湧いてき始める前に潰して止める。
 それが本来の形。
 今の様に、湧いてきたからと言って、外で待ち構えて倒して境を壊すだけではだめだ。

 いま俺が潰したのは、15階。
 それより浅いものは外からでも壊すことが出来る。
 綾織は、300段を潰したというのだから、今できているものなど簡単につぶせるはずだがそれをしないのは、ボソッと言った、やはり自分を人身御供として鬼に差し出した恨みが人に対して多少あるのだろう。

 それと、俺に言った『共に生きようぞ』あの言葉。
 300段を超える深度の洞を潰して、力を得ろとそう言う事なのかもしれない。
 今日、初めて潰したのが15段。
 先は長いな。

 しかし考えると、そんな長生きで、人に隠れて住むよりは、今繋がりのできた国と何とか話をして、生き神様として祭ってもらおう。

 そんな安易でお気楽な考えを、その時の俺はしていた。
 だけど、人は手に余るものをすべて滅して、その上で祟りを恐れ、祀ってきた歴史がある。
 そのことを、歴史の授業で習ったのにすっかり忘れて、たぶん浮かれていたのだろう。

 今回たかだか15段で得た力。それでも、高校生が思い上がるには十分な力だった。

 入口まで戻り、はたと気が付く。
 転移すればよかった。
 外と中は閉ざされた空間で、許可された綾織の洞とは違うが、中で俺が管理者となった時に構造は頭に入って来ていた。
 だからこの中は俺の物なんだ。
 帰りは転移が自由にできたのに。

 まあ落ち込んでも仕方が無い。
 境界を越えて、出入りができないように閉じる。

 これで今後出てこなければ安心だ。
 今度から、めぼしい所は、順に潰していこう。

 そうして家へと帰った。

 さすがに体が、だるく先に風呂へと入る。

 体を洗い、少しぬるめまで水を入れて浸かる。
「あ゛あ゛っ」
 そんな声が自然に出る。
 中で、灯油バーナーのタイマーを回して5分ほどにセットをする。
 外で、チチチチボンという灯油釜独特の音が響きゴーという音が聞こえ始める。

 ジワリと温度が上がって来る。

 この感じがやっぱり気持ちがいい。

 冷たい水でタオルを濡らして額に乗せる。

「あれ? 」という声が聞こえて、ふと見ると紗莉が裸で立っていた。
「なんでだよ。脱衣所に俺の着替えがあっただろ」
「えー? どこに」
 風呂から出て、見に行くと紗莉のパジャマや下着しかない。
 なんでだ?
 もしかして、棚から着替えが脱衣籠に落ちて…… 母さんがさっき洗濯するって持って行ったからその時か?

 俺が裸で呆然としているのに、後ろでバシャバシャと紗莉は体を洗っている。
「風邪ひくよ。後で着替え持ってきてあげるから一緒に入る? まだ温まっている途中だったんでしょ」
「馬鹿だろお前。俺達もう高校生だぞ」
「お父さんたちもたまに一緒に入っているよ」
「そりゃ夫婦だからだろ」
 そう言うと、洗うのをやめじっと見て来る。
 目がそんなに私と一緒は嫌なの? そんな事を訴えて来る。

 普通は逆だろ? そう思いながら湯船に戻った。
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