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第2章 新しい世界と新しい生活

第23話 出発準備

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「あらやっぱり、お姫様とか、白馬に乗った王子様とか、一度くらいは夢見ることはありますもの」
 目をキラキラさせて、そうおっしゃる。まことのお母さん。
 こう見ると、親子だなあ。
 ふたりとも、同じような感じで妄想に入っている。

「それなら、俺の方がシウダー王国に帰化しろと」
 つい口をついて言ってしまった。
 慌てて、口に手をあて様子をうかがうが、日本語だったため理解ができなかったようだ。下手にこんなことが俺の意思として伝わればフィオリーナたちは、動き始めてしまう。
 最近テレーザも、すごい勢いで日本語を覚えているんだよな。


 その後寝るときに、多少ごたついたが、翌朝。
「昨日はすいませんでした」
 と謝られた。
「いえすいません。こちらこそ、あんなことになるなんて思っていなくて」

 結局、俺が威圧を掛けたせいで起こったことだと説明をした。
「危険ですから、あまり使わないでくださいね」
 と中村さんに言われてしまった。

「それでですが、時間の概念があるかもわかりませんし、時間を決めていないんです」
 そう説明すると、
「隊員を待たせて、皆さんは基地で待機なさいますか?」
 渡辺さんが提案してきた。

「いやあ、それも悪いですし、俺が待っておきます。リーゾが来た時に困るでしょう」
「あーそうか。それもそうですね」
「では脇に、テントでも建てて控室にしましょう」
 そういう話に落ち着いた。

 さて、そういって、待ちだしたが来ない。
 ふと気になり、魔王城の情報が無いかと渡辺さんに聞いてみた。
「いや詳しい位置とかは不明です。佐々木さんに聞いてみましょう」
 そう言って、すでにテントでぐったりとしている、佐々木さんに話を聞いてみる。
 すると何か知っていたようで、「そういえば」と言って、書類をもってこちへ来た。

 脇のテーブルに、資料が広げられてびっくりした。
 関東から広がっている森は、何者かに引っかかれた爪痕の様に広がり、元の中国大陸の辺りまで広さがあった。
「これすごいですね」
 俺が言うと、
「最初は、アヒルの足跡と呼ばれていたんですが、今はアライグマの後ろ脚と呼ばれています」
「へーこんな足の形をしているんですかね。あっそれで、魔王城は何処でしょう」
「これが、そうだと思われています」
 そう言って指し示したところは、元の地図で日本海の真ん中。
 緯度で函館のもう少し向う側。

 ざっとだが、700km以上あるな。

 俺と、渡辺さんは地図を見て顔を見合わせる。
「いくらリーゾが身長3mくらいあっても、1日で往復1400km以上を走って、なおかつ王様に許可取り。王様って四天王だと簡単に会えるのか?」
 思わずぼやくように言ってしまったが、やっと佐々木さんも理解したようで、
「あの人走って行ったんですか?」
「ああ。イノシシに乗ればわからないけれど、走って行ったな」

 じゃあまあ、期待だけしてゆっくりと待ちましょうか?

 ざっと計算しても60km以上で走らないと無理だな。
「渡辺さん。宿泊も視野に入れて、遠征準備を今のうちにしませんか」
「私もそれを思っていました。どうも皆さん、これから行くところが整備された町が続くとでも思っているのでしょうか?」

 外務辺りの人なら、いろんな所へ行った経験がありそうなのにな。
「リーゾが可哀そうだから、乗れそうなトレーラとかないですか?」
「あります。車両を増やして、すべてにトレーラーを引くようにして手配いたします。距離1400km以上。何日だ?」
 渡辺さんが電卓をたたいているが、
「30kmで進めると予想しても予備含めて4,いや5日見ましょう。衛星写真で見る限り木と木の間はかなり隙間のある感じですが、何かあると遠回りをしないといけませんから」
 そう、提案してみる。

「そうですよね。それに人員かける食事分」
「渡辺さん。ふと思ったのですがヘリコプターとかは、ダメなんですか?」
「着陸するのにある程度の開けたところが必要なんです。大体機体に20m以上加算した位ですね」
「ああそうか。下向きの風が周りにあたって、戻ってくると危険ですものね」
 なんだかんだと決めながら、積み込み修正。
 あまりにも色々が不明の為フィオリーナには話をして、今回は遠慮するように説得した。
 結局夕方まで準備にかかった。
 当然、リーゾは来ない。


 その頃のリーゾ。
「やばい。疲れてちょっと寝たら、なぜか時間が飛びやがった。なんで太陽が無くなっているんだ」

 一応魔王様には、真司が会いに来るという連絡は入れた。
 その後家へと帰り、食べるものを食べた後、少しだけと思い体を休めた。

 本人は少しのつもりだが、休んだ方が体の調子がいいと思いながら目を開けたら、なぜか暗くなっていた。

 びっくりである。
 そこで、真司のことを思い出す。
 やべえ。遅れたら殺されるかもしれない。
 そんな思いで、家を飛び出した。

 平均60km~70kmで走り、疲れれば30km程度まで減速をする。
 身体強化を使えば、もっと速く走れるが、絶対体力切れで到着ができなくなる。
 真っ暗な森の中に、リーゾの叫びがこだまする。
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