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第五章 星々は移ろい、種族は邂逅する。
第101話 ドラガシメル人達のプライドと人間
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アンジェル=カンテ准将はシールドを解除し、融和色のブルーで船体を発光させる。
「いけたようだ。降りるぞ」
竜司は、船体の出入り口へ向かう。
勝手知ったる船。
目の前でハッチが開く。
「人間からすると、大きいな」
ドラガシメル人は、平均二メートル五〇はある。
現在、竜司は一七三センチちょっと。
元の、ミー=キャエルは二メートル六〇を越えていた。
優秀種の証。
立派な体躯としっぽを持っていた。
中へ入ると、アンジェル=カンテ准将が出迎えに出てきたが、その目は卑下していることが見て取れる。
そのため、久々に指輪を発動。
そして、その姿を見ると全員が敬礼をする。
そもそも、通路に入ってきたときから、常人ではないプレッシャーは感じていた。
だが、そのプライドが許さなかった。
元々、羽による区別があるドラガシメル人の社会。
地球人など、下等生物。
それがたとえ翼を持っていても、跪く理由にはならない。
貴様達は、我々より下だと考えるのが普通。
竜司とマイリは迷うことなく、メインブリッジへと向かい、そして、竜司は認識コードを口にする。
船のシステムがコードを認識。
その瞬間、船は竜司の指揮下に入る。
これは、セクスタプレト以上が持つ特権。
この船団の指揮官アンジェル=カンテ准将はクアドラプレト。
つまり四枚羽。
隊と船への命令権はあっても、完全掌握は出来ない。
カンテ准将は命令を受けたとき、その程度の仕事だと思っていた。
社会の決まり的に、彼女では、仕事が限定される。
これは決まり事だから仕方が無いと。そして、役職も准将は最高位となる。
地球方面臨時使節部隊の司令。
そこそこの任務。
種族が発生した星。そこに後発で生まれた種族。
猿。それと手を取れとの命令。
うんざりだった。
命令を受けたとき、思わず彼女は聞いた。
「はっ? 殲滅ではなく?」
「殲滅するな。これは賢者様方の総意だ」
はっ? 賢者様がこの件に絡んでいる? そんな仕事を私に。
彼女はその言葉が信じられなかった。
賢者が絡んでいるという事は、重要案件。
そのおかげで、出立までの数日。彼女は落ち着いて眠ることが出来なかった。
だけどまあ、賢者がモニター上に姿を現し、かつての上司が、責任者として現地集合。すべての理解と、いつもながらの理不尽を甘受する。
ああ、やっぱりと。
自分はここまで、隊を運んできただけの責任者。
大きな仕事は、上位の仕事。
だが、地球人となった竜司は変わっていた。
独特の価値観は消失し、いや元々マイリを愛していたことから、その素養はあった。
彼は変な差別をしない。
仲の良かった部下を搭乗リストから見つけると、政府の交渉役へとチームを編成。
その中に、カンテ准将も含まれていた。
そして、メンバーに注意が通達される。
「地球人は、確かに我々から見ると遅れている。だが、それは経過した時間の問題だ。我々は悠久の時を経て、今の我々がある。種としての上下など考えるな」
その言葉になぜか、彼女が食いつく。
「ですが、データによると超短命です」
そう、ドラガシメル人の社会では、羽の多い長命種こそが優秀。
短命な者は、劣っている。
持ち得る知識や技能は、生命体として生きる時間に比例をする。
それは当然の事実。
「短命だが、この世界の発展は、まだたかだか三百年程度。まだ発展をするだろう。すでに遺伝子解析まで行っている。そして、今回の騒動で、上位エネルギーの存在に気が付いた、今から一気に変わるだろう」
「それでも、短命では限界があります」
そう言って食い下がる。
「仕方が無い。実は賢者の依頼で少し実験をした。内容は口外禁止だ良いな」
竜司はそう命令をし、説明を始める。
「私は、一度死んだ。だが、マイリの発明した技術により地球人として生まれ変わり現在の状態だ」
彼女は、自身のこだわりで、まさか賢者が絡む実験の話が語られ出すとは思ってはいなかった。
えっこれ聞くと、命がやばいんじゃない?
そんなことに気がづき、焦りながら話を聞く。
「ドラガシメル人の因子を組み込んだ。この体もそうだし、他にも幾人か被験者がいる。そして、タイプベータを散布し、今現在、ここの生物は進化途中だ」
「「「なっ」」」
その情報に部屋の全員が驚く。
「それは知性体を使った実験。禁止されているのでは?」
「惑星改造で、タイプベータは普通に使うし、なあ、セル=ビーム」
「はっ。使用します。いえ幾度も使用し、その後焼き払いましたが」
そう報告をしながら、ずっと泣いている。
構造的に、泣けないはずだが面白い。
「ああ。いえ、改変をした生物の強化実験です」
「あったなあ。変化個体が魔王化して、本星にまで乗り込み。大騒ぎになった事件」
「そうです」
「だが、その研究自体は、賞賛され。被害を考え星系内での実験が禁止されただけだ」
「あっ」
そう言われて、彼女は端末で検索したようだ。
「そもそもこの実験は、賢者が主導だ。何か意図があるらしいが、そこまでは聞いていない。聞いてみるか?」
「ひぃ。いえ。問題ありません」
竜司が笑いながらそんなことを問いかけると、彼女は引きつる。
そう言えば、この方は賢者様。その孫の一人。
「いけたようだ。降りるぞ」
竜司は、船体の出入り口へ向かう。
勝手知ったる船。
目の前でハッチが開く。
「人間からすると、大きいな」
ドラガシメル人は、平均二メートル五〇はある。
現在、竜司は一七三センチちょっと。
元の、ミー=キャエルは二メートル六〇を越えていた。
優秀種の証。
立派な体躯としっぽを持っていた。
中へ入ると、アンジェル=カンテ准将が出迎えに出てきたが、その目は卑下していることが見て取れる。
そのため、久々に指輪を発動。
そして、その姿を見ると全員が敬礼をする。
そもそも、通路に入ってきたときから、常人ではないプレッシャーは感じていた。
だが、そのプライドが許さなかった。
元々、羽による区別があるドラガシメル人の社会。
地球人など、下等生物。
それがたとえ翼を持っていても、跪く理由にはならない。
貴様達は、我々より下だと考えるのが普通。
竜司とマイリは迷うことなく、メインブリッジへと向かい、そして、竜司は認識コードを口にする。
船のシステムがコードを認識。
その瞬間、船は竜司の指揮下に入る。
これは、セクスタプレト以上が持つ特権。
この船団の指揮官アンジェル=カンテ准将はクアドラプレト。
つまり四枚羽。
隊と船への命令権はあっても、完全掌握は出来ない。
カンテ准将は命令を受けたとき、その程度の仕事だと思っていた。
社会の決まり的に、彼女では、仕事が限定される。
これは決まり事だから仕方が無いと。そして、役職も准将は最高位となる。
地球方面臨時使節部隊の司令。
そこそこの任務。
種族が発生した星。そこに後発で生まれた種族。
猿。それと手を取れとの命令。
うんざりだった。
命令を受けたとき、思わず彼女は聞いた。
「はっ? 殲滅ではなく?」
「殲滅するな。これは賢者様方の総意だ」
はっ? 賢者様がこの件に絡んでいる? そんな仕事を私に。
彼女はその言葉が信じられなかった。
賢者が絡んでいるという事は、重要案件。
そのおかげで、出立までの数日。彼女は落ち着いて眠ることが出来なかった。
だけどまあ、賢者がモニター上に姿を現し、かつての上司が、責任者として現地集合。すべての理解と、いつもながらの理不尽を甘受する。
ああ、やっぱりと。
自分はここまで、隊を運んできただけの責任者。
大きな仕事は、上位の仕事。
だが、地球人となった竜司は変わっていた。
独特の価値観は消失し、いや元々マイリを愛していたことから、その素養はあった。
彼は変な差別をしない。
仲の良かった部下を搭乗リストから見つけると、政府の交渉役へとチームを編成。
その中に、カンテ准将も含まれていた。
そして、メンバーに注意が通達される。
「地球人は、確かに我々から見ると遅れている。だが、それは経過した時間の問題だ。我々は悠久の時を経て、今の我々がある。種としての上下など考えるな」
その言葉になぜか、彼女が食いつく。
「ですが、データによると超短命です」
そう、ドラガシメル人の社会では、羽の多い長命種こそが優秀。
短命な者は、劣っている。
持ち得る知識や技能は、生命体として生きる時間に比例をする。
それは当然の事実。
「短命だが、この世界の発展は、まだたかだか三百年程度。まだ発展をするだろう。すでに遺伝子解析まで行っている。そして、今回の騒動で、上位エネルギーの存在に気が付いた、今から一気に変わるだろう」
「それでも、短命では限界があります」
そう言って食い下がる。
「仕方が無い。実は賢者の依頼で少し実験をした。内容は口外禁止だ良いな」
竜司はそう命令をし、説明を始める。
「私は、一度死んだ。だが、マイリの発明した技術により地球人として生まれ変わり現在の状態だ」
彼女は、自身のこだわりで、まさか賢者が絡む実験の話が語られ出すとは思ってはいなかった。
えっこれ聞くと、命がやばいんじゃない?
そんなことに気がづき、焦りながら話を聞く。
「ドラガシメル人の因子を組み込んだ。この体もそうだし、他にも幾人か被験者がいる。そして、タイプベータを散布し、今現在、ここの生物は進化途中だ」
「「「なっ」」」
その情報に部屋の全員が驚く。
「それは知性体を使った実験。禁止されているのでは?」
「惑星改造で、タイプベータは普通に使うし、なあ、セル=ビーム」
「はっ。使用します。いえ幾度も使用し、その後焼き払いましたが」
そう報告をしながら、ずっと泣いている。
構造的に、泣けないはずだが面白い。
「ああ。いえ、改変をした生物の強化実験です」
「あったなあ。変化個体が魔王化して、本星にまで乗り込み。大騒ぎになった事件」
「そうです」
「だが、その研究自体は、賞賛され。被害を考え星系内での実験が禁止されただけだ」
「あっ」
そう言われて、彼女は端末で検索したようだ。
「そもそもこの実験は、賢者が主導だ。何か意図があるらしいが、そこまでは聞いていない。聞いてみるか?」
「ひぃ。いえ。問題ありません」
竜司が笑いながらそんなことを問いかけると、彼女は引きつる。
そう言えば、この方は賢者様。その孫の一人。
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