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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第98話 世界の違い

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「やつら、リュージにちょっかいを出しているぞ。教えてやれよ」
「あいつら、あの兵達は組織の奴らだ、あの女連れやばい奴らに目を付けられた」
 派遣組と、地元組で意見が食い違う。
 双方共にやばいと思い、相手がかわいそうだと思っている。

「はっ? 何言っているんだ。やばいのはリュージに決まっているだろう」
「何を言っているんだ。あいつらは、ヤクも扱う。下手すりゃ、中南米中の組織が動くぞ」
 
 そんな中、いい加減うっとしくなってきたのだろう。
 マイリから光が放出された。

 背後から、シールドに向かいぶっ放していた奴らが、跡形もなく消えてしまう。
「なっ。なんだあれ」
 その光景に、地元ハンターが驚く。

「マイリちゃんは容赦ないなぁ」
 あるハンターが大きなゼスチャーでやれやれと言う感じで語る。

「容赦が無いのは、アヤだよ。あの黒い炎を振りまく姿ゾクゾクするぜ」
 また別の奴が話しに入ってくる。
「いや、怖いのはまどかちゃんも一緒だよ。上級クラスのモンスターでも手なずけ味方にしちまう」
 わいわいと盛り上がる。

「だけど、それを束ねるリュージが一番すごい。あいつの力は底が見えない」
「そうだな」

「そんなに有名なのか?」
 地元ハンター達が、困惑し始めたとき、本格的に組織の奴らがやって来始めた。
 連絡が付かなくなったのが、引き金のようだ。

「おい、そこの女を侍らしている奴。俺らの仲間を知らんか?」
「さあ、その辺りでモンスター退治じゃないのか?」
 よくわからないが、何か言われたので、適当に日本語で返す。

「何語だそりゃ」
 するとマイリが言い放つ。
「あのゴミなら消えたわ。あなたたちも今なら見逃してあげるから消えなさい」
 さすが、最新で最上位人工生命体。オプテミウムモデル。もう言語理解をしたようだ。

「見逃すだぁ。ふざけんな俺達を誰だと思っている。俺達は……」
「興味ないわ。逃げないなら消えなさい」
 そうして、さらっと消えてしまう。

「あっまた。マイリ気が短すぎるぞ」
「だって、話が通じないんですもの」
 ゴロゴロと、竜司に甘える。


「なに? また音信不通? 一体何が起こっている」
 私設軍の隊長が話を受け混乱を始める。

 私設軍は、ボランティアで掃討に絡んでいるわけではない。
 レベルアップと、銃器の扱い。その訓練のためだ。

 すでに、百数十人が消えたようで、完全に想定外だ。

「どうも、派遣されたハンターに絡んでいたようです」
「派遣のハンター? 奴らは化け物だぞ」
 隊長は、知っていたようだ。

「軍で、何ともならないモンスターを倒すんだ。通常の銃器など効かないレベルの奴らに」
「ええ、どうも手を出したようです」
「くそが」
「落とし前はどうします」
「今はいい。様子見だ」
「今はですね。見逃せばメンツが立ちません」
 副官として存在しているが、こいつは組織の見張り役。
 きっと連絡をしているのだろう。

「とりあえず、ハンター達に絡むなと連絡」
「はい」

 そうして、一時保留となった。

 そして、数日を掛けてモンスター達を追い込んでいく。
「おかしい。強い奴らがいない。雑魚ばかりだ」
 異変に気が付く。
 雑魚ばかり。相変わらず数は多いが、光が煌めき数百単位でモンスターが消える。
 主戦場は、ジャングルへと移行している。

 普通のハンターや、組織の軍人は生息するジャガーやナミチスイコウモリにも気を使う。
 そして水場にはクロカイマンなどのワニも生息。
 樹上にはマツゲハブなどの毒蛇も存在し危険だ。

 とにかく気を使う現場で、派遣組のハンター達は鼻歌交じりに戦闘をしている。
 その驚異的な体力にも、いい加減気がつき始めた私兵達。

 すでに、作戦が始まって三日。
 二十四時間いつ襲ってくるかもわからない敵。
 それは精神的にも影響して、余計に体力を奪う。

 だが、それは普通の人間の場合。
 上位の人類として、レベルアップをしたハンター達は全く違った。

 常に体をシールドが被い。

 ある程度の範囲に入った敵は消滅。
 そう少し変化が遅いが、そこまで来ていた。
 そして、ドーピングされた竜司達は、その比では無い。

 猿の面影を残すモンスターが頭上から襲ってきても、見なくても消滅。
 手を一振りすれば、ジャングルに道が開ける。

「あいつら、人間じゃねえ」
 流石の兵達もその非常識ぶりに驚く。

 なぜか的確にモンスターの位置を把握し、雷や炎。光が飛び交う。

 そしてとうとう、魔王の中の魔王に出会う。

 体長は三メートルを越え、肥大化した筋肉は、今までの比ではない。

「でかいな」
 派遣ハンターが口々に言う。

 そして、レベルの低い地元ハンターや私兵達は、姿を見た瞬間に体が恐怖を覚え、動けなくなる。
 生物としての差。

「あれが、魔王」
 私設軍の隊長アリスター=ダフィールドは、今まで傭兵として戦場を巡りひりつくような場面を幾度も経験をした。

 だが、一度姿を見ただけで体が動かなくなるのは初めてだ。
 副官も組織で抗争もあり、その現場を経験していた。
 だが、この現場の異常さは初めての経験。

 平然と歩いていた派遣ハンター達が、魔王の攻撃で木をへし折りながら吹っ飛んでいく。
「何だこれは」
 吹っ飛んでいったハンター達が「驚いたぜ」などと言いながら起き上がってくる。
 彼らもまた非常識だと、今更ながら理解をする。
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