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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第96話 真の魔王

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 モンスターが、モンスターを殺す。
 それにより、より強い者がさらに強くなる。
 こうして、一つのエリアに三人の魔王が誕生した。

 テーブルマウンテンというと昆虫と両生類、鳥の楽園と思われがちだが、人が住み猿が走り回る高地もある。

 そんな一つで発生した騒動。


「なんだと、別のコロニー? 我は王。王は一人で良い」
 お互いの王が、そう宣言をする。

 そうして、諍いは始まり戦うが、兵隊のモンスターはともかく魔王はなかなか死なない。
 その中で、激しい戦いの末、一人の魔王が残りの二人を焼き尽くす。

 そして、山を下りアマゾンへと足を踏み入れる。

 抜きん出た力を持つその魔王は、アマゾンを掌握していく。

 数万を数えるモンスターを従え、町へと来襲する。

 彼らにとって人などは、餌に良すぎない。

 捕まえ喰らう。

 むろん、弱いゴブリン達に対しては警察や軍が対応し駆除するが、その数は圧倒的。
 人を捕まえ、その数はさらに増えていく。

 当然、彼らへ連絡が行く。
 そう、ハンター達へ。

「アマゾン?」
「コロンビア?」
「その辺りって怖いところでしょ?」
「そうだね」

 ヨーロッパ辺りには、ノリノリで参加をしていた皆が尻込みをする。
「まあ依頼は、チームに対してだから、俺が参加すれば基本大丈夫だろ」
「でも、川とかに落ちたら、体中の穴という穴に入ってくる、何だっけ?」
「あー。これね。カンディル。おしっこの匂いにひかれてやって来るみたい」
「そうよ。危ないわよ」
 メンバーが顔を突き合わせ、お茶と菓子をつまみながら作戦会議中。

 物知りなまどかから、警告がくる。
「他にも、コロンビアとか、麻薬の栽培とかで有名だし」
「その辺りは、ちょっと検索をすると出てくるな」
 外務省の危険レベルも高く、渡航禁止区域も結構ある。

「ほら、やっぱり危ないわよ」
 彩も調べていたようだが、心配して、少し涙目で訴えてくる。

「私は多分大丈夫なので。それに竜司の行くところへ、付いていかないことは考えられません」
 マイリが、きっぱりと宣言する。

「あのー、そんなに危険でしょうか?」
 風夏が、そっと手を上げて発言をする。
「この流れている情報。どう読んでも危険でしょ?」
 彩は行きたくないようで、すぐに反応。

 だが、次の一言で、黙ることに成る。
「皆さん一人で、マフィアの千人くらい。簡単に退治できますよね。それに、体には常時シールドを張っていて、小銃くらいの弾では貫通しませんし、それをお魚が食い破れます?」
「そりゃ、そうだけど」
「モンスターに比べれば、武装した人間くらい大丈夫よねえ?」
「後は、心の問題ですけれど」
「ああ、人間を殺せるかって言う所だな」
 俺がそう言ったら、マイリが冷淡に答える。

「あら、この仲間は別ですけれど、人ごとき。猿やモンスターと同じでしょう」
 皆の視線が、マイリに向かう。

「まあ、それはドラガシメル人としての意識があるからだよ、他では言うなよ」
「わかっています」
 そう言ってにっこり。

「竜ちゃんもそうなの?」
 彩が聞いてくる。

「意識はどうあれ、今は人間のつもりなんだが。ただ、確かに。彼らドラガシメル人からすると、人はまだ、今でも未開の猿だ。今回の騒動で、今は大分増えたが、高次のエネルギーはつかえないし、意識によって現象は起こせない。文明的にも低い。未だに核物質の浄化も出来ないしな」
「そうね。次元の理解ができないから、亜空間の利用も出来ないし。今やっと遺伝子の解析まで来た所。あと数千年はかかりそう。まだ、天動説から一歩出たくらい?」
 マイリのその言葉で思わず苦笑い。

 風夏と悠月は目を丸くしている。
 簡単には説明したが、全部は言っていなかったか。

 悠月達に、ドラガシメル人のことをざっと説明をする。

「多次元のエネルギーで、星の運行すらコントロールですか?」
「そう、それにより、惑星すら改造する。今回地球で起こっている異常。初期に発生をした謎のエネルギーは理解ができないが、後の二つはドラガシメル人の軍が持っている兵器の可能性がある」
「兵器? 攻撃を受けたの?」
 伶菜が目を丸くする。

「これは予想だが、今宇宙全体で、その最初のエネルギー。彩やまどかが力を得た奴だな。それのおかげで、宇宙全体が少しおかしくなっている。そのため賢者が、何かを考え、地球人の進化を求めた。多分ね。あの人たちの考えは、よくわからないけれど」
「へー。今地球って、そんなことに成っているんですね」
 悠月達が、顔を見合わせている。

「ああ。また連絡は来るだろうが、その時には騒ぎに成るだろう。きっと」

 そうして、一応参加することに成ったが、珍しく彩とまどかがパンツ姿。
「珍しいな」
「うん。渡航注意に書いてあった。スカートは駄目って」
「そもそも戦闘するのに、スカートは駄目って言っただろう」
「それはそうだけど、戦闘すると変に興奮するじゃない」
「そりゃなあ。きっとドーパミンとか出ているだろうし」
「だから、竜ちゃんがしたくなったとき、すぐに答えられるでしょ」
 言っても服装を変えなかったのは、結構おバカな理由だった。

「まどかもか?」
「あーははは。うん。言ってくれれば、いつでもだいじょぶ」
 そう言ってテレテレしている。

「まあいい。行こうか……」
 妙な頭痛を感じながら、結局皆で飛んだ。
 橋本さん達も一緒に。
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