上 下
83 / 109
第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第84話 常識? 何それ

しおりを挟む
「なんだあれは?」
 彩の炎を見て誰かが叫ぶ。

「あっちも見ろよ」
 驚いていたのは、地元のハンター達。
 派遣組はもう見慣れた光景。

 マイリや竜司が使う光。
 その脇で、ちょこまかと悠月が、体が変わったため補正を入れながら、光を纏いモンスターを殴っていく。

 身長が伸びたせいで、イメージにずれがあるそうだ。

 そして、伶菜も光を纏う。
 再調整で、さらに出力は上がっている。
 放射するだけで、弱いモンスターが消滅していく。
 前に竜司が使っていた技。
 かなり身体が強化されたらしく、自身でも驚いている。
 ただ、竜司との睦み事において、感覚が鋭くなりすぎて、楽しめないとぼやいていた。

 そして、まどか。
 周りに、モンスターを侍らし、お菓子を食べながら悠々と戦場を歩いて行く。

 その一団が、魔王に向けて進むと、気のせいか魔王がじりじりと後ろへ下がっていく。
 魔王が何かを配下に命令するが、モンスター達は進んでこずぶんぶんと首を振る。
 うん。いやいやをしている。

「あれがチーム、ドラゴンズアイだ。日本の民間チームトップだ。個々の力が飛び抜けていて、軍でも勝てないと言われている」

「そうなのか」
 彼ら地元チームは参加はしたが、未だゴブリンを数人でど突いている状態。
 周りに比べると、数段どころかひよっこだ。

 上位チームはすべて光を纏っている。
 そのラインが今は基準だと言われ始めている。

 進化の先は、ドラゴンズアイが示してくれる。
 彼らに追いつけ。
 それがトップチームの合い言葉。

 それにたいして、一部のこだわりある人間達が、不満をつのらせているようだが、実力差は埋めようが無い。

 それに、なぜか国の上層部から、彼らに手を出すなと命令される。
 そう、早期に世話になった上流階級。
 竜司に感謝するものは多い。差別はするようだが、神の使いは別だと言う認識らしい。そう言って、自身を無理矢理納得させているのかもしれないが。

 そう言っている間に、モンスター達は数を減らしていく。

 地元の人たちには信じられない光景。
 果敢に挑んだ警官は、なすすべなく倒れ食われていった。
 それが完全に逆転。
 今モンスター達が、何とか逃げようとしてあがいている。

 信じられない光景。
 徐々に人が集まり、歓声が大きくなっていく。
 町が救われ、モンスターから解放をされる。
 それが目の前で起こっている。

 人々は、足を踏みならし、まるでサッカーの試合でも見ているかのように、歌まで始まって、異様な雰囲気の中討伐が行われる。

「なんか、こういうのも良いなあ」
 のんきに周りを見回す竜司達だが、いくつかのモンスターには気にいらなかったようだ。
 囲みを突破し、村人へと一団が流れる。
 そこへ軍が割り込み、銃を乱射。

 村人は良いが、ハンター数人が怪我をする。
 考えれば当然。

 光が周囲に広がり、撃ち込まれた弾丸が、怪我をしたハンターからコロコロと押し出されてくる。

「気を付けろや」
 そんな怒声が聞こえる。

 体なら良いが、頭なら即死だ。

 愚かな行為と、その後の奇跡。
 さらに村人は加熱し、武器を持ち、周囲で逃げ回るゴブリン達に対して、突入を開始する。
 禁忌感よりも仲間を、家族を、町を守る。
 そんな意識が、芽生え始める。

 それは実は、今までの所でも起こった。
 実際、魔王が討伐された後、速やかに住人が討伐を始めた。
 ギフト的に与えられた能力は無くても、モンスターを退治することにより力を得ることはギルドを通じて周知されていた。

 だが平和なところで暮らすと、人々は暴力を禁忌する。
 そのため、警察や軍を頼っていた。
 だが、対応が遅れると、魔王などが現れ自分たちの命が危険となる。
 それが身にしみ、理解をした。

 そうなれば、やることは一つ。戦う勇気を奮い起こし、力を発揮する。
 震える足に気合いを入れ、無理矢理動かし、硬直し堅くなる体を強引に動かす。
 暴力になれない人間は、攻撃をされたとき、防御反応から、体がこわばり動かなくなる。

 武道などで、慣れていても、とっさの時には動かないときがある。
 それを動かすのは、冷静な判断と気合い。
 
 身近な所で、車の運転でも、やばいと思い固まるか、とっさにハンドルが切れるかは、その判断力の差。
 動けないと、アクセルを踏んだまま固まり最悪を招く。

 昔の忍者が言った刃の下に心を置けとか、常在戦場は多分それを教える言葉だろう。

 誰かが言っていた。
『常識なんて言葉は無い。自分の言葉に自信が無い奴が、人を説得するためにくっ付ける言葉だと。小学生がよく言う、みんなが持ってるとか、言っていると同レベルだと』

 決まり事。つまりルールは明確だが、マナーは千差万別。そう言うことだ。
『常識なんて言葉を常用する人は、近付かない方が良い。詐欺師か悪徳商法の勧誘だとも言っていた』

 そうこの場では、戦い自身を、みんなを守ることが正義。
 暴力にあがない、服従し食われるだけの状態を脱しろ。

 それを、この場のみんなが理解した。
 人は強くなれるのだと。

 今、魔王を消し去った。竜司のように。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

追放公爵ベリアルさんの偉大なる悪魔料理〜同胞喰らいの逆襲無双劇〜

軍艦あびす
ファンタジー
人間界に突如現れた謎のゲート。その先は『獄』と呼ばれる異世界へと繋がっていた。獄からは悪魔と呼ばれる怪物の大群が押し寄せ、人々の生活が脅かされる。 そんな非日常の中で生きる宮沖トウヤはある日、力を失った悪魔『ベリアル』と出会う。ベリアルはトウヤに「オレ様を食べろ」と言い放ち、半ば強引にトウヤは体を乗っ取られてしまった。 人と悪魔が生きる世界で、本当に正しい生き方とは何なのだろうか。本当の幸せとは何なのだろうか。 ベリアルの力を求め襲いくる脅威に立ち向かう二人の、本当の幸せを賭けた闘いが幕を開ける——!

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

物欲センサー発動中?いや、これは当たりかも!

SHO
ファンタジー
地球の表層の裏側に存在するという地下世界《レト・ローラ》 ある日通学途中に起こった地震によって発生した地割れに通勤通学途中の人々が飲み込まれた。飲み込まれた人々はレト・ローラの世界に存在する遺跡へと転移させられてしまう。 状況を飲み込めないまま異形の怪物に襲われる主人公たち。 混乱と恐怖の中で高校生の杏子はクラスメイトのコンタと奇跡的に合流を果たした。 そして2人は宝箱がずらりと並んだ部屋へと迷い込む。その宝箱を開いた時、手にするの希望か絶望か、はたまた安全かトラブルの種か。 凸凹コンビが織りなす恋と魔法とチートアイテムが地底世界を揺るがす一大スペクタクルSFファンタジー!(?) 「俺(あたし)達の明日はどっちですか!?」 王道SFファンタジー突き進みます。テンプレ有り。主人公無双予定。ご都合主義?言わずもがな。 R15は一応保険。 小説家になろうでも公開中 *表紙イラストのコンタとパイナポは巴月のん様より頂きました!

天使の探しもの

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
創造主との賭けにより、身体を二つに分けられ、一切の能力をも奪われて地上に落とされた天使・ブルーとノワールは、遠く離れた場所にいた。 しかし、天界に戻るためには、二人が出会わなければならない。 二人は数々の苦難を乗り越え、そして…… ※表紙画は詩乃様に描いていただきました。

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

処理中です...