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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第78話 初めての対魔王戦

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 アメリカ。
 カナダとの国境に近い山間部。

 湖の畔にあった、いくつかの町が次々に音信不通になり、調査をすればモンスターのコロニーが造られていた。

 軍とハンター協会が、今、合同作戦を行う。
 まず軍が、一斉射で小者のゴブリン達を掃討し、そこにハンター達が突入。
 威厳を見せるためか、その様子は中継がされた。

「ゴー。ゴーゴーゴー」
 そんなかけ声と共に、突入が始まる。
 陸軍兵達は、戦闘用ヘッドカムから指示を受け展開をしていく。

 それとは違い、ハンター達は悠々と突っ込んでいく。
 こちらは、チームごとに勝手に動き、目指せ初魔王退治一直線。
 まるで、半練りおやつを見た猫の様である。

 モンスター達、その数数千だが、大体は弱いゴブリンとかのモンスター。大物は全部合わせても千体居るか居ないかである。

 ただ大物は、弱いハンターでは対応できないし、小銃は効かない。
 軍や弱い者達は露払いを行い、肉壁に穴を開けていく。

「いけー、オーガだ」
「ひゃっはー。俺が一番だ。誰も手を。うぎゃぁぁー」
 目標のオーガの脇に、オークが武器を持ち佇んでいた。

 乱戦状態で、対象だけに意識を集中したものは、串刺しにされ、ぽいっと投げられる。ほら餌が来たぞという感じで、ゴブリン達に振る舞われる結果となる。

「おう、馬鹿が逝ったぞ」
「俺様だったからなあ。惜しくもない奴を、亡くしてしまった」
 仲間だろうが、悲しむそぶりもなく、彼らは周りのモンスターを掃討していく。
 彼は、嫌われていたようだ。

 軍が彼らの周りを切り開き、小者を駆逐していく。
 言わばどこかの団体が発狂しそうだが、団体構成員達は激減していた。
 身近で襲われるからだ。
 人は我が身に災難が降りかかると、理想よりも現実を優先する。
 つまり色々と言えるのは、平和だからである。

 その様子を一段高いところから眺めていた彼だが、部下だろう。
 もう一人の、女性型角ありに何かを囁く。
 飛行型モンスターが一匹空に上がり、何かを発しながらくるりと輪を描く。

 軍のバリケード。その外には見物の者達が押し寄せて、屋台と共に店が出店し大騒ぎだったが、妙な振動が周囲の山から近付いてきていた。

 彼らは気がつかず、お祭り騒ぎを続けていたが、端からその攻撃を受け始める。

 最初は何か判らなかった。
 だが悲鳴は徐々に広がり、中央部へと近付いてくる。

 この時点で、すでに千近い市民が犠牲になっているが、後背のことで気がつかない。

 魔王は、周囲の山中にモンスターを放ち、次の餌場を探していた。
 それを、呼び戻した。

 軍を始め、ハンター達もモンスターを舐めていた。
 組織的な働き、それがどれだけやっかいかを知ることになる。

 まさに、人間側が包囲殲滅状態。

 気がつけば、物見遊山だった市民達は阿鼻叫喚の地獄絵図。

 車に乗り込み、大柄な車体を生かして、ゴブリン達を轢きながら脱出を目論むが、大柄なボアが側面から突っ込んできて引っくり返す。

 そんな様子を、気がついたカメラが撮影して流してしまう。

 人々は生きたまま食われ、犯される。
 そんな影像が、WEBを通して流された。

 いくつかのチャンネルは即時に遮断をしたが、アメリカに反感を持った国などでは面白おかしく流された。
 自国にもコロニーがあると言うのに。

 そうして混沌の中、指令本部から増援がよこされ、外からまた人間が攻撃を始める。
 空挺による増援。
 規模を減らしていた戦闘ヘリが、急遽武装を取り付け派遣される。

 その戦いは、三日三晩続き泥沼となる。

 他州からも、ハンター達が集まり、その中で光を纏うものが幾人か現れる。
 だが食料もなく戦い続けては、せっかく現れた希望のたねも駆逐されてしまう。

 そんな中、同盟国に派遣要請がやって来る。

 各国のトップチーム。
 その中には、VIPで有りながら派遣される。
 ドラゴンズアイ。

 初めてヘリに乗り喜ぶ面々と、袋を抱えて青い顔で蹲る面々。
 身体能力と、乗り物酔いはイコールではないようだ。

「ああ、ひどい目にあった」
 そう言っている竜司の脇で、まどかは軍用車両でわざわざ寄って、買って貰ったハンバーガーをもぎゅもぎゅと食べている。
 途中でドライブスルー専門店を見つけたためだ。

 好きなドリンクを、ミックスしてオーダーできることが有名らしい。

 少し山側で、すでに解放された陣地へ降り立ち、ヘリの爆風を受ける。
 まどかは、全身全霊で袋を死守。

 そんな中で、ヨーロッパから派遣されたチームに居る男、ディアヌ=マリユスを見て竜司は違和感を覚える。

「あれ、本当に人間か?」
 彼の中に渦巻く魔力に、黒いものを感じる。

「まあ、チームとしてきているんだ。いいか」

 各チームの力は圧倒的だった。
 主に攻撃魔法だが、独特の進化をしている。

 炎が蛇の様に走る。
 それも、複数対象に向かい同時に。

 ある者は、手の一振りで対象のみを切断。
 中に紛れる人間は無事。

 火の粉が空に巻かれると、モンスターのみを攻撃する。

 まどかのモンスターも、巻き添えを食う。
「また殺された。彩みたいなのが何人も居るとやりにくい」
 そうぼやいている。

 そんな中。竜司とマイリ、悠月の周囲には光が広がり、それに触れたモンスターが消滅をしていく。

 その光景は、複数居るハンター内でも異質。
 その噂は、広がっていく。

「あれは、例の対象者です」
「捕獲。いや駄目だろうなあ」
 目の当たりにした軍関係者は、その圧倒的な力を見て、今更ながらなぜ作戦が失敗をしたかを理解した。
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