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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第70話 園遊会は混沌へ

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 普段は、絶対来ないようなホテル。

 その裏側には、建物側からのみ入れる庭園が広がる。
 十一時過ぎ、招かれた者達は集まってくる。

 竜司達にくっ付いている、警備の者も幾人かは中へと入る。
 本来の業務に近く、そこは慣れた者達、流石にビシッとこなす。

 そう、普段はいい加減だが、ふつう要人警護はこういう場の方が多い。
 橋本達の真面目な一面を見て一様に驚く。

「ごきげんよう」
 かぐや達に迎えられ、なんでも良いから褒めろと言われていた竜司。
「これはこれは、かぐや様。麗しくも華麗。見惚れてしまいますな」
 そんな、どこぞのじじいのような、美辞麗句を伝える。

 だが思ったより効き目があったようで、一瞬かぐやは、膝の力が抜ける。
「はうっ」
 とか言いながら。

「ちょっと、褒めすぎじゃない」
「そうよ、私たちのことは、あまり褒めてくれないのに」
 文句を言うのは、彩とまどか。

 今朝からドレスを探して走り回り、レンタルをしてきた。
 その時にみんながウエディングドレスに走り、危なくレンタルされるところだった。
 ウエディングドレスだと、レンタルでも二十万とか三十万平気でするんだよ。

「きみが佐藤竜司君だね、娘共々これからよろしくお願いするよ」
 そう言って現れたのは、三家のお父さん達。
 少し控えているのは、都賀や神馬の家だろう。

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。このような場。初めてで何か失礼なことをしないかとドキドキですね」
「君の立場なら、これからこういう場に呼ばれることも増えるだろう。身内のパーティで、なれておくことをおすすめするよ。しきたりについては娘達に聞けば良い」
 そうして、エスコートすることが決められた。

「父さん達も、あの辺りで偉そうな人に捕まっているね」
「テレビで見たことがある。昨日の今日で、これだけ人が来るって。身内って言ったけれど、絶対違うよね」

 そう財界とかの偉い手さん達がわんさかいる。
 ただ、内輪と言うだけあって、その表情は柔らかいのだと思う。

 マイリと伶菜は、料理について解析中だし、彩とまどかは都賀風夏と神馬悠月と共に、料理のはしごをしている。
 ドレスで食べ過ぎると、お腹ぽっこりになるぞ。

 必然的にお嬢様達三人と話をするが、意外ではないな。かなり俺のことについて詳しく知っているようだ。
「では、ドラガシメル人が地球で栄華を誇っていたと」
「ああ習った歴史ではね。俺はその時、千歳くらいだったから、地球から出た後に生まれた」
 ほーという感じで、驚いてくれる。知らない知識への貪欲さを彼女達に感じる。

「地球には来られまして?」
「ああ来た。その当時のひとにも会ったが、教会に絵として残されていた」
「お名前は?」
「ミー=キャエルだ」
「「「まぁ」」」
「存じ上げております」
 そんな感じで、キャアキャアと話は盛り上がる。

 そして親から、言われていただろう、少し技術的なもの。
 つまりエネルギー的な話となるが、高次の次元についての基礎が判っていないためそこで躓く。
 この世界、目に見える次元以外に多層化された高次の世界がある。
 地球人には、見ることも感じることもできないが確かにあり、その次元の差がエネルギーとして利用ができる。

 みるみるうちに、彼女達から表情が抜けていく。
「ごめんなさい。私たちではその、理解が及ばないですわね」
「ええ、こちらから問いかけて、理解ができないのは少し悔しいですが」
「申し訳ありません。父の会社の関係者に、理論物理学の方が確か居られたと思いますが」

 素の表情が出たところで気がついたが、少したれ気味のかぐやの目がさらに下がり、眉もへにょっと八の字になっている。
 織戸由布紀と久賀妃美子は、もうちょっとりりしい、キリッとした眉。
 細面と切れ長の目だが、織戸の方が少し目が大きい。
 つまり、一番美人系は織戸で、久賀は少しきつそうに見える。
 かぐやは意外と、お笑い担当?

 そんな失礼なことを考え、笑ってしまう。
「申し訳ありません」
「いやいい。問題ない」
 理解できないのを、笑ったのかと思われたか。

 そうして和やかに、進んでいたが、親の方で色々とややっこしくなっていく。

「では、好きで彼と一緒にいることを認めていると」
「そうですね。うちの娘も含めて、彼とは離れたくないと言うことでして」
 神宮路などの各家と、鈴木家などの旧来の家、お互いに情報共有は良いが、言葉尻を捉えて怪しくなっていく。

「では、うちも認めようではないか。将来的に婚姻に拘ることはなく、彼はこの世界においての重要人物。その方が良いかもしれないな」
「そうですな。ならばうちも、そういたしましょう」
「今、国の保護下にあるということ、ならば安心。そこの橋本君、きみが警備責任者だったね。部屋に空きが無いかね。彼のそばへ使わそうと思うのだが」
「ならば当家の娘は、警備に関しお役に立ちまする。是非おそばに」
 こんなことを言うのは、神馬家だ。

「竜司殿のお父上、今会社はどちらに…… おお、そうですか。そこなら……」
「いや、それなら私の方が、関わりが深い。ぜひサポートをさせていただこう……」
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