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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ
第65話 宴
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「さっさと、部屋割り通りに移動し、八時には広間に集合。あと五分だ」
先生達の声が、ロビーに響く。
些細なことで時間を食って、予定が押した。
走るなよと、言われているが無理だ。
生徒達が走って行く。
「俺達は、非常口近くの部屋で、隣は神宮路かぐや達の部屋だな」
彼女達の部屋はすでにクリーニングされて、前にはガードが二人立っている。
俺達の部屋は、この一週間。関係者以外入っていないらしい。
「おい、早くしろ」
ここは宇宙船。
荷物を置きに来ただけ。
一日目で、お土産を買い込み、荷物も増えたし置きに来た。
「「「はーい」」」
「いやあ、宇宙船て便利」
にこにこ顔のまどか。
「じゃあ行こう」
降りたら警備部の人が、目を見開き驚いていた。
「えーと。ああ、上ですか?」
「そうです。夜はシールドを張るので、休んでいただいても大丈夫ですよ」
「お気遣いありがとうございます。ですが、業務ですので大丈夫です」
橋本さんなら、おう、すまんなで終わる所だが、真面目だな。
時間が無いので、三階まで降りる。
客室は四階以上で、三階までにレストランや宴会場、二階にお土産屋さんやゲームコーナーなど。
一階の裏側には露天などの浴場があり、七階には展望大浴場まである。
ちなみに生徒は、七階の大浴場のみ使用可で、九時から十時までと時間が区切られている。
だが、俺達の部屋には展望家族風呂があり、使用可とも言われている。
俺達と、となりの部屋のみ。
もし大浴場に行くなら、時間をずらして、警備スタッフも一緒という事らしい。
結局、バラバラと広間に集まる生徒。
理由が理由なので、やかましく言われないが、集まった所から食事を始める。
俺達の膳は普通だが、神宮路かぐや達の膳は、見た感じは同じようだが、素材が違う。
どう見ても、素材の高級感がちがう。
刺身のエッジや色。
小鍋用の牛も、脂身の感じがA5以上と語っている。
サシの入り方が、全く違う。
よく見れば、チープに作った極上品の器。
樹脂箸に見せかけた、つや消しの漆仕上げの箸。
椀も、漆仕上げの高級漆器だよな。
わいわいと食べている所で、先生から忠告が入る。
「えーみんな。旅行に来て浮かれ、今日一人帰ることになった。せっかくの旅行だ。楽しいのは良いが、浮かれすぎて台無しにするな。以上心に刻んで、全日程を終了させよう」
岸野先生は、このタイミングで呼び出されて、不在のようだ。
お言葉は、細矢先生からだった。
よく見れば、ここなしか先生達の膳も、内容が違うな。
カニの脚が、汁椀からはみ出している。
まあいい。
問題は、俺の鍋にいつの間にか積み上げられた、エノキと椎茸、ニンジン。
「彩。お前まだキノコとニンジンが食えないのか?」
「えっ。そういう訳じゃ。竜ちゃん好きでしょ」
「普通だな、椎茸を網で焼いて、ポン酢で食べるのは大好きだが」
「そうなんだー」
反応をしたのは、伶菜。どこからかメモを出して書いている。
まどかはいつもの早食い。
珍しく、となりの神馬と話をしている。
神馬もすでに食事が終わっている。
何だろう、この二人、似た感じのイメージ。
ちょっと切れ長で、つり目。
挑発的な眉。
薄めの唇をキリリと引き締めている。
そして、俺には違うが、まどかは人に興味があまりない。
神馬も同じだろうと思ったが、目が合う。
そして目が合うと、ふいっとそらす。
これは、良くある、教室での一幕。
興味のある男を見つめてしまい、目が合うとそらしてしまう。
恋愛の初期パターン。
大体、タイミングを合わせて、変顔を見せると、イベントがスタートをする。
中学校の時、モテる先輩から、笑わせれば落ちると習った。
男女の切っ掛けなど、そんなものだとも言っていた。
結婚式で友人の紹介と聞いたら、大体コンパだとか、縁がありなどと言えば、ナンパだとも。
そして、神馬は無表情ながら、明確に顔が赤くなる。
まどかも、気がついたのだろう。
警戒が強くなる。
「ひょっとして、竜ちゃんに興味があるの?」
まどかが突っ込む。
「いえ、終始、女子の輪ですので、殿方、いえ男子になれていなくて」
そう言って、神馬は答える。
むろん、こちら側の面々も耳が大きくなっている。
横にいるマイリから解析結果がくる。
「彼女、体温の上昇と発汗が見られます。仲間に入れます?」
「いやまあ、様子を見よう」
だが、かぐやはそれが面白くなかったようだ。
「皆さん、この後ご予定がないなら、二階に参りませんか? そちらも入浴時間は決まってないのでしょう?」
そうして、神宮路との卓球対決が決まった。
ただまあ、普通の人間と俺達。
相手にはならないが、そこで、自分たちの非常識さを認識をする。
七色の軌道を持つ変化球。
某テニスのような、コートに落ちたら最後、自分の手元に戻ってくる玉。
コート面を撥ねずに、滑っていく玉。
やる気になれば、どう変化させても、コーナーのエッジをかすめさせることも可能だし、ネットギリギリに落とし、バックスピンでそのままネット。
相手は点など取れない。
そうそうに、神宮路達は離脱し、マイリと彩の戦いが始まった。だが、すべての玉はネットの外側を回り込み、コートの反対側エッジに落ちる。
つまりコートの両側で、両者が自身のコートの周りを、半円を描いて走り回る。
壮絶なスキール音と摩擦で、周囲には靴底が焼ける匂い。
「やめろ。一般の人がドン引きだから」
その様子を、呆然と眺める人たち。
「あの方達、奇跡の治療を行うと聞いていましたが、人外な身体能力。悠月は何か聞いていますか?」
同じお付きの都賀風夏が、悠月に聞いてくる。
「通常のヒトでは無いとは聞いておりますが、それ以上は」
「確かに、その様ですわね」
先生達の声が、ロビーに響く。
些細なことで時間を食って、予定が押した。
走るなよと、言われているが無理だ。
生徒達が走って行く。
「俺達は、非常口近くの部屋で、隣は神宮路かぐや達の部屋だな」
彼女達の部屋はすでにクリーニングされて、前にはガードが二人立っている。
俺達の部屋は、この一週間。関係者以外入っていないらしい。
「おい、早くしろ」
ここは宇宙船。
荷物を置きに来ただけ。
一日目で、お土産を買い込み、荷物も増えたし置きに来た。
「「「はーい」」」
「いやあ、宇宙船て便利」
にこにこ顔のまどか。
「じゃあ行こう」
降りたら警備部の人が、目を見開き驚いていた。
「えーと。ああ、上ですか?」
「そうです。夜はシールドを張るので、休んでいただいても大丈夫ですよ」
「お気遣いありがとうございます。ですが、業務ですので大丈夫です」
橋本さんなら、おう、すまんなで終わる所だが、真面目だな。
時間が無いので、三階まで降りる。
客室は四階以上で、三階までにレストランや宴会場、二階にお土産屋さんやゲームコーナーなど。
一階の裏側には露天などの浴場があり、七階には展望大浴場まである。
ちなみに生徒は、七階の大浴場のみ使用可で、九時から十時までと時間が区切られている。
だが、俺達の部屋には展望家族風呂があり、使用可とも言われている。
俺達と、となりの部屋のみ。
もし大浴場に行くなら、時間をずらして、警備スタッフも一緒という事らしい。
結局、バラバラと広間に集まる生徒。
理由が理由なので、やかましく言われないが、集まった所から食事を始める。
俺達の膳は普通だが、神宮路かぐや達の膳は、見た感じは同じようだが、素材が違う。
どう見ても、素材の高級感がちがう。
刺身のエッジや色。
小鍋用の牛も、脂身の感じがA5以上と語っている。
サシの入り方が、全く違う。
よく見れば、チープに作った極上品の器。
樹脂箸に見せかけた、つや消しの漆仕上げの箸。
椀も、漆仕上げの高級漆器だよな。
わいわいと食べている所で、先生から忠告が入る。
「えーみんな。旅行に来て浮かれ、今日一人帰ることになった。せっかくの旅行だ。楽しいのは良いが、浮かれすぎて台無しにするな。以上心に刻んで、全日程を終了させよう」
岸野先生は、このタイミングで呼び出されて、不在のようだ。
お言葉は、細矢先生からだった。
よく見れば、ここなしか先生達の膳も、内容が違うな。
カニの脚が、汁椀からはみ出している。
まあいい。
問題は、俺の鍋にいつの間にか積み上げられた、エノキと椎茸、ニンジン。
「彩。お前まだキノコとニンジンが食えないのか?」
「えっ。そういう訳じゃ。竜ちゃん好きでしょ」
「普通だな、椎茸を網で焼いて、ポン酢で食べるのは大好きだが」
「そうなんだー」
反応をしたのは、伶菜。どこからかメモを出して書いている。
まどかはいつもの早食い。
珍しく、となりの神馬と話をしている。
神馬もすでに食事が終わっている。
何だろう、この二人、似た感じのイメージ。
ちょっと切れ長で、つり目。
挑発的な眉。
薄めの唇をキリリと引き締めている。
そして、俺には違うが、まどかは人に興味があまりない。
神馬も同じだろうと思ったが、目が合う。
そして目が合うと、ふいっとそらす。
これは、良くある、教室での一幕。
興味のある男を見つめてしまい、目が合うとそらしてしまう。
恋愛の初期パターン。
大体、タイミングを合わせて、変顔を見せると、イベントがスタートをする。
中学校の時、モテる先輩から、笑わせれば落ちると習った。
男女の切っ掛けなど、そんなものだとも言っていた。
結婚式で友人の紹介と聞いたら、大体コンパだとか、縁がありなどと言えば、ナンパだとも。
そして、神馬は無表情ながら、明確に顔が赤くなる。
まどかも、気がついたのだろう。
警戒が強くなる。
「ひょっとして、竜ちゃんに興味があるの?」
まどかが突っ込む。
「いえ、終始、女子の輪ですので、殿方、いえ男子になれていなくて」
そう言って、神馬は答える。
むろん、こちら側の面々も耳が大きくなっている。
横にいるマイリから解析結果がくる。
「彼女、体温の上昇と発汗が見られます。仲間に入れます?」
「いやまあ、様子を見よう」
だが、かぐやはそれが面白くなかったようだ。
「皆さん、この後ご予定がないなら、二階に参りませんか? そちらも入浴時間は決まってないのでしょう?」
そうして、神宮路との卓球対決が決まった。
ただまあ、普通の人間と俺達。
相手にはならないが、そこで、自分たちの非常識さを認識をする。
七色の軌道を持つ変化球。
某テニスのような、コートに落ちたら最後、自分の手元に戻ってくる玉。
コート面を撥ねずに、滑っていく玉。
やる気になれば、どう変化させても、コーナーのエッジをかすめさせることも可能だし、ネットギリギリに落とし、バックスピンでそのままネット。
相手は点など取れない。
そうそうに、神宮路達は離脱し、マイリと彩の戦いが始まった。だが、すべての玉はネットの外側を回り込み、コートの反対側エッジに落ちる。
つまりコートの両側で、両者が自身のコートの周りを、半円を描いて走り回る。
壮絶なスキール音と摩擦で、周囲には靴底が焼ける匂い。
「やめろ。一般の人がドン引きだから」
その様子を、呆然と眺める人たち。
「あの方達、奇跡の治療を行うと聞いていましたが、人外な身体能力。悠月は何か聞いていますか?」
同じお付きの都賀風夏が、悠月に聞いてくる。
「通常のヒトでは無いとは聞いておりますが、それ以上は」
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