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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ
第61話 修学旅行へ出発
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ゴールデンウィークは、ほぼ缶詰だった。
随分噂が広がり、伝手を頼って、日本にアクセスしてくる、困った患者が一気に来たようだ。
むろんリスト化をして、後日、有効活用をするようだが。
そんな中、手を怪我をしたピアニストとか、事故で足が動かなくなったスポーツ選手など、一般の人間も増えてきた。
偉そうな、利権真っ黒な政治関係者より随分ましだ。
そしてそれは、奇跡の復活という形で、ニュースを騒がせる。
「さてと、それじゃあ。楽しんできてくれ」
そう言いながら、端末などの装備一式を渡される。
「ええ、まあ。今日を合わせて、四日だけなので、すぐ帰ってきます」
「待っているよ」
そう言って、隊員が大集合。
なぜかというと、乗り込むバスの、クリーニングをしていたから。
そう、爆発物などのチェック。
「あの人達に、お土産必要かなあ?」
彩が珍しく気を使う。
「丁度、工場見学があるから、恋人で良いんじゃない」
伶菜がそう言ったら、悪乗りが始まる。
「そうねえ、伶菜をばら撒いたら喜んでくれるかもね。独身の人多いし」
こんなくだらないことを言うのは、まどか。
「ブラックね。想像するから、変なこと言わないでよ」
当然、伶菜は嫌そうな顔。
以前なら、おバカポジションは彩で、まどかはもっと棘があったし、冷静に場を見ていた。まあ明るくなったのは、良いことなのだろう。
移動中、バスの窓から、外を見ていて一人の神父さんと目が合う。
何かをしていたらしく、額の前でスパークをする。
「精神干渉系かな? じゃあの周りにいた人たちは」
そう神父さんの周りにいた人たち。
二十人ほどだったが、一様にバスを見送っていた。
彼は、ディーデリヒ=クレンク。
元々、暗殺術者。
現場に存在する、木の枝でも何でも使い暗殺を実行。
元フランス国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)出身で、一時イギリスの英海兵隊特殊舟艇部隊SBSにも在籍。
この時に、同じ闇の六聖人となった、ルカス=ブランチと出会う。
そして、そんな彼は、世界的異変の時に、精神系能力を得た。
まさに無敵。
だが。
「せっかく準備をしたのに、奴ら何処へ行く」
そう思い見送る途中で、本人を見つける。試しに、能力を発動。
だが、ブロックされ、顔を見られることになる。
あまりにうかつだが、対象が、平和な日本の高校生だとわかり、油断があった。
現役時代なら、絶対にしなかったミス。
その事で警戒させて、彼は任務を実行できなくなる。
直接的なやり取りは、もう少し後だが、彼はまどかに負けた。
そう、宇宙船で生まれ変わった、新人類。まどか。
「教会の諸君。一般の地球人とは違うのだよ」
調子に乗って、そんな事を言ったとか。
マイリの日記『地球人観察日記』に書かれていた。
観察日記は、外見から始まり、栄養の摂取。つまり料理や感情の機微。伶菜が集中的に書かれているが、刺激に対する反応と、その結果が細かく書かれている。
上上下下左右左右BAで、伶菜は攻略できるようだ。
それはさておき。
空港では定番のように、幾人かが手荷物検査などで捕まり騒ぎとなる。
そして出発。
「へー。機体の上下。流速の差で、持ち上げているんですね」
「後は、翼の傾きにより押し上げている」
そう言うと、マイリは首をひねる。
「ですから、気体層の密度の差で、こんなに揺れるのですね」
「今日は、意外と揺れるな」
「どうして、重力をコントロールをして飛ばないのでしょう。その方が簡単のに」
「物質間の分子間力については、ここではまだ、研究中なんだよ」
「そうなんですね」
マイリからすると、基礎学問でもこっちでは違う。
――しゃべらないように、口止めしておこう。
いや、逆に小出しで、広めていくべきか?
そんな事を、しばらく考える。
ふと見ると、彩が見知らぬ男としゃべっている。
隣に座る伶菜に聞く。
座席は、班ごとでならんでいるが、最近末席に彩がいるため、隣の班の奴だろう。
「ああ。ええと、サッカー部で結構人気者の人。名前忘れちゃった。クラスメイトには違いないわ」
「彼は、大石主税と申すものでございまする」
マイリが補足してくれた。
「そうそう。大石君。彼有名人なのよ」
マイリが、言ったおかげで、思いだした様だ。
「何が有名なんだ?」
「ええとね、試合で怪我をさせられたキャプテンの敵を取りに、部員四十七人で他校に押し入ったの」
「良いのか、それ?」
「うーん。まあ。停学や退学も出たけど、でもまあ、男気があるとして有名なのよ」
伶菜は言い切った。
「ふーん」
なんだか、久しぶりの笑顔を与えたのが、他の男というのが釈然としないが、笑顔が出るならまあ良い。
今ちょっと微妙なんだよな。
あれは事故だから気にするなと言っても、姉としては無理なのだろう。
直後を見た、伶菜の怒りが結構大きくて、俺もちょっと引いてしまった。
確かに、地球の医療技術なら死んでいただろう。
だが、あの事件に対して、妙な干渉がなかったとも、言い切りができない。
俺自身も、反射して、葉月に影響があるのを考えて、シールドを張るのがおくれたし、そう色んなことが重なった結果だ。
まあポッドがあるからと、頭だけを守る判断をしたのは俺だし、もっと大きく避けても良かった。あの角度なら天井だし。
そんなことを考えていて、ふと思いつく。
あの時、即死をしたとして、この状態で、まだ魂自体は、固定されているのだろうか?
「なあ、マイリ」
そう言いかけたとき、機体に衝撃と落下が始まる。
随分噂が広がり、伝手を頼って、日本にアクセスしてくる、困った患者が一気に来たようだ。
むろんリスト化をして、後日、有効活用をするようだが。
そんな中、手を怪我をしたピアニストとか、事故で足が動かなくなったスポーツ選手など、一般の人間も増えてきた。
偉そうな、利権真っ黒な政治関係者より随分ましだ。
そしてそれは、奇跡の復活という形で、ニュースを騒がせる。
「さてと、それじゃあ。楽しんできてくれ」
そう言いながら、端末などの装備一式を渡される。
「ええ、まあ。今日を合わせて、四日だけなので、すぐ帰ってきます」
「待っているよ」
そう言って、隊員が大集合。
なぜかというと、乗り込むバスの、クリーニングをしていたから。
そう、爆発物などのチェック。
「あの人達に、お土産必要かなあ?」
彩が珍しく気を使う。
「丁度、工場見学があるから、恋人で良いんじゃない」
伶菜がそう言ったら、悪乗りが始まる。
「そうねえ、伶菜をばら撒いたら喜んでくれるかもね。独身の人多いし」
こんなくだらないことを言うのは、まどか。
「ブラックね。想像するから、変なこと言わないでよ」
当然、伶菜は嫌そうな顔。
以前なら、おバカポジションは彩で、まどかはもっと棘があったし、冷静に場を見ていた。まあ明るくなったのは、良いことなのだろう。
移動中、バスの窓から、外を見ていて一人の神父さんと目が合う。
何かをしていたらしく、額の前でスパークをする。
「精神干渉系かな? じゃあの周りにいた人たちは」
そう神父さんの周りにいた人たち。
二十人ほどだったが、一様にバスを見送っていた。
彼は、ディーデリヒ=クレンク。
元々、暗殺術者。
現場に存在する、木の枝でも何でも使い暗殺を実行。
元フランス国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)出身で、一時イギリスの英海兵隊特殊舟艇部隊SBSにも在籍。
この時に、同じ闇の六聖人となった、ルカス=ブランチと出会う。
そして、そんな彼は、世界的異変の時に、精神系能力を得た。
まさに無敵。
だが。
「せっかく準備をしたのに、奴ら何処へ行く」
そう思い見送る途中で、本人を見つける。試しに、能力を発動。
だが、ブロックされ、顔を見られることになる。
あまりにうかつだが、対象が、平和な日本の高校生だとわかり、油断があった。
現役時代なら、絶対にしなかったミス。
その事で警戒させて、彼は任務を実行できなくなる。
直接的なやり取りは、もう少し後だが、彼はまどかに負けた。
そう、宇宙船で生まれ変わった、新人類。まどか。
「教会の諸君。一般の地球人とは違うのだよ」
調子に乗って、そんな事を言ったとか。
マイリの日記『地球人観察日記』に書かれていた。
観察日記は、外見から始まり、栄養の摂取。つまり料理や感情の機微。伶菜が集中的に書かれているが、刺激に対する反応と、その結果が細かく書かれている。
上上下下左右左右BAで、伶菜は攻略できるようだ。
それはさておき。
空港では定番のように、幾人かが手荷物検査などで捕まり騒ぎとなる。
そして出発。
「へー。機体の上下。流速の差で、持ち上げているんですね」
「後は、翼の傾きにより押し上げている」
そう言うと、マイリは首をひねる。
「ですから、気体層の密度の差で、こんなに揺れるのですね」
「今日は、意外と揺れるな」
「どうして、重力をコントロールをして飛ばないのでしょう。その方が簡単のに」
「物質間の分子間力については、ここではまだ、研究中なんだよ」
「そうなんですね」
マイリからすると、基礎学問でもこっちでは違う。
――しゃべらないように、口止めしておこう。
いや、逆に小出しで、広めていくべきか?
そんな事を、しばらく考える。
ふと見ると、彩が見知らぬ男としゃべっている。
隣に座る伶菜に聞く。
座席は、班ごとでならんでいるが、最近末席に彩がいるため、隣の班の奴だろう。
「ああ。ええと、サッカー部で結構人気者の人。名前忘れちゃった。クラスメイトには違いないわ」
「彼は、大石主税と申すものでございまする」
マイリが補足してくれた。
「そうそう。大石君。彼有名人なのよ」
マイリが、言ったおかげで、思いだした様だ。
「何が有名なんだ?」
「ええとね、試合で怪我をさせられたキャプテンの敵を取りに、部員四十七人で他校に押し入ったの」
「良いのか、それ?」
「うーん。まあ。停学や退学も出たけど、でもまあ、男気があるとして有名なのよ」
伶菜は言い切った。
「ふーん」
なんだか、久しぶりの笑顔を与えたのが、他の男というのが釈然としないが、笑顔が出るならまあ良い。
今ちょっと微妙なんだよな。
あれは事故だから気にするなと言っても、姉としては無理なのだろう。
直後を見た、伶菜の怒りが結構大きくて、俺もちょっと引いてしまった。
確かに、地球の医療技術なら死んでいただろう。
だが、あの事件に対して、妙な干渉がなかったとも、言い切りができない。
俺自身も、反射して、葉月に影響があるのを考えて、シールドを張るのがおくれたし、そう色んなことが重なった結果だ。
まあポッドがあるからと、頭だけを守る判断をしたのは俺だし、もっと大きく避けても良かった。あの角度なら天井だし。
そんなことを考えていて、ふと思いつく。
あの時、即死をしたとして、この状態で、まだ魂自体は、固定されているのだろうか?
「なあ、マイリ」
そう言いかけたとき、機体に衝撃と落下が始まる。
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