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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第55話 相互関係

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「目標まで、あと百ヤード」
 インカムで、軍曹が作戦本部オペレーターへ連絡をする。

 丁度そのタイミングで、間抜けな質問が来る。
 ファイブマンセル五人一組で作戦実行中。
 後ろにいるのは仲間のはずだが、下手くそな英語で質問される。
「目標は誰だっけ?」
「きちんと、ミーティングで聞いただろ。リュウジサトウとかいうティーンエイジャーだ」
I knew it.やっぱり
 それを確認できれば充分。生体に電撃を加えて、昏倒させる。

 マイリにも、殺すなと伝えている。
 俺達のフォローは、まだ一口しか飲んでいない橋本さん達のチームが行う。
 ちなみに、橋本さん達は今、四チームが俺達の専任で配属されている。

 彼らも一生懸命走ってくるが、追いつけないようだ。
 だが、作業をしている間に、来れば良い。

「ちょっと待ってくれ、若さがすごいのか、能力がすごいのか」
「はい。野嵜のざきさん、次へ行きますよ」
「ちょっと、連絡するから待て」
 野嵜さんが静かに叫ぶ。

 もう一つの方は、マイリが担当中。

「はーい。陸軍の方達ですね」
「なっ。オペレータ。民間人の女性に見つかった。とてもキュートだが、拉致していいか?」
「ばか、駄目に決まっているが、まずい事態だ、他に人影は?」
「ないわ。今から行くから待っていて。オーヴァ」
 答えたのはマイリ、すでに兵五人はお休み中。泡を吹いて痙攣中だ。
「デムッ」

 オペレータは、当然パニックである。
 民間人の女性と言ったが、その後、一瞬で無力化。
 今からこっちへ来るだと。

 作戦がばれた。
 そう考えるのが適切。

「ザッ。今、角を曲がったの……」

「角。角って何処だ?」
 他のオペレーターと目配せをする。
 目の前にある作戦マップ。
 気がつけば味方の光点は、一カ所に集められている。
 公園だ。

「アルファからデルタ。四チーム完全黙秘。無効化された模様」
「ちっ失敗だ。兵は、後で外交筋から圧力をかける。基地へ戻れ」
「イエッサー」

 そうして、発車しようとするが、当然のように動かない。
「無理よ。今あなたの後ろにいるの。ザッ。ザザッ」
 何故かデジタル通信に、当然のように入ってくる、アナログなノイズ。

「ワッツ?」
 そして、車もシステムもいきなり沈黙をする。
「バックアップバッテリーは、どうなった?」
「不明です」
「チッ」
 そうして当然だが、車両を放棄をして脱出を試みる。
 だが、ドアが開かない。
 防弾のドア。電動アシストがないと重いのは分かるが、それにしても。

 そんな車内に、いきなり誰かが入ってくる。
 いったん宇宙船を中継をして、車内へ転移してきたマイリであった。

「来たわ、お眠りなさいGo to bed.
 一瞬だけ、車内が明るくなる。
 むろん電撃だ。

 車両のドアは、さっきスポット溶接をしたので、宇宙船経由で外へ出る。

「便利だけれど、不便ね」
 マイリが愚痴る。
 すでに警察や、自衛隊が集まってきており、現場は騒然としている。

 そして、日本国内でオペレーション。
 その上、小銃を装備していたことが、当然問題となる。

「大統領、流石に無法は困りますな」
 日本からのホットライン。手元には、認識票がじゃらじゃらしている。

「今調査中だ。軍内で手柄に走った馬鹿者が暴走をしたようだ。その点は謝ろう。だが兵や、装備の即時返却を要求する。良いか、お願いではなく返却要求だ」
 通話をしながら、上から目線の大統領。

「では、詳細を頂けますでしょうか? 何故、何の目的で作戦行動を起こしたのか。それに、身分の証明がない限り、彼らは不法入国のテロリスト。装備と言いましたが、小銃だけですよね?」
「なっ。貴様。そんな事をしてただで……」
「――済みませんか? すでにWEB上で、ニュースが出ております。本物の米軍かと」
 あわてて、大統領はスタッフに合図をする。

 ざっと見ただけで、各言語で日本でテロの文字が躍っており、米軍か?の文字まで。

「ええい。なぜ止めなかった」
「報道の自由ですなぁ。止める権利はありません。ようこそ民主主義の国へ」
 一九九七年に、ホワイトハウスの報道官が発言した言葉『ようこそ民主主義の国へ』を引用する。
「デムッ」
 そう言ったきり、通話は切れる。

「強気ですね」
「まあ今回は、完全に向こうのミスだ。対象の能力を低く見過ぎたな」
「周囲探査能力。それも、コンクリートも鉄筋も関係なく。便利ですよね」
「彼の協力で、開発はしているのだろ?」
「ですが何ぶん、計測ができない現象でして、もう少し時間が必要です」
「前にモンスターの脳が使えるかもと言っていたのは?」
「まだ基礎実験中です」
 そう言うと、腕組みをして考え込む。

「ひょっとして、彼にお願いをすれば、出てくるのじゃないか?」
「某ロボットのようにですか?」
「そうだ」
「聞いてみましょう?」

 そして。
「探査システム?」
「そう、君達の使っているような」
 前に聞かれて、ざっと原理の説明はした。
「多分ポータブルタイプがいくつかありますが、専用のエネルギーパックが必要ですよ」
「そのパックさえ、何とかなれば良いのか?」
 簡単に聞いてくるが、多分無理だろう。

「ですが、低次元のエネルギーだと、そうですね。専用の原発が一基必要かも」
「はっ?」
 原発? 橋本には、どうしてそんなものが、出てくるのか理解できない。

「良いですか。今人類が使っているエネルギーは、一次から四次の簡単なモノなんです。物質を燃やすとかですね。ドラガシメル人は宇宙の流れ全体から、エネルギーを得ています。各コア惑星には、そのための施設があり、汎用的に使えるモノに変換して利用しています」
 橋本さんは、眉間に皺を寄せ、考え込む。

「えーとだな、風とか潮力とかのスケールアップ版だな」
「まあ、そうですね。こっちでは、まだ核融合すら実用化をしていませんし。宇宙ではありふれた現象なんですが」
「まあ分かった。現物があるなら貸して」
 思考は放棄されたようだ。
「良いですよ」
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