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第三章 国との関わり

第49話 アクシデントと切っ掛け

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「ここはなに?」
 サブ乗員の、スリープ室だが。

「乗組員の仮眠室だよ」
 わかりやすく答える。
「へぇー」
 葉月は、珍しいのだろう。落ち着きなく周りを見回す。

 彩とまどかには、軽く説明をしてある。
「服を脱いで、中へ入ってから、右前の青いボタンを押す。他のは触るなよ。コールドスリープモードは、急には解除できないからな」

「「分かった」」
 そう言って、ついたての向こうに、消えていった。

 だが、葉月の悲鳴。
 あわてていくと教授だ。
 恐竜の顔に、背中には六枚の羽。
 俺には懐かしいが、葉月には見慣れないもの。

「触るなよ」
「つっ、これっ、生きているの?」
「生きている。目下コールドスリープで、お休み中だ。起こすと食われるぞ」
「がおー」
 そう言って、顔の横に両手で、鷲摑みの掌を作ってみせる。

 すると笑われた。
「竜ちゃん。いくら何でも子供扱いしすぎ」
「そう言えば、中三だったか」
 そう言ったら、くるりっと回って膝上のフレアスカートをはためかす。

「ほら男の人が好きな胸も、結構あるでしょ」
 そう言って、両腕で胸を持ち上げる葉月。

 ふっふっふっ。つい意地悪を言ってみる。
「彩の方が勝ってるな」
「むうっ。竜ちゃん、揉んで。そしたらきっと大きくなるから」
「それは迷信だ」
 取りあえず、ぶった切る。

「もうっ」
 そうして、また走り回る。

 そんな中、何故こんな所にあるのか分からないが、警備用の汎用ブラスターがあった。

「いかん。それに触るな」
 その時には、すでに遅く。
 何気なく床に落ちていた筒を、葉月が拾い上げる。
「へっ」
 葉月がそう言ったとき、光が走る。

 俺の右肩と、耳を持っていった光は、天井のシールドに干渉して消えた。
「怪我は無いか?」
 葉月にそう聞くが、状態を理解したらしく、床に落ちている血だらけの腕を拾って持ってくる。

「怪我はないか?」
 もう一度聞くと、葉月は頷く。
「良し、そこのポッドに入るから」
 モードは多分コールドスリープ。
 中で、ブラスターの発射があれば、上でも警報が鳴ったはず。

 マイリが来れば、このくらいでは死にはしない。

 ポッドへ入り、腕も入れて貰う。
「大丈夫だから」
 それだけ言って、中でクローズ用のボタンを押す。


 竜ちゃんを撃っちゃった。
 よく分からないけれど、武器だったみたい。
 光は、私の肩口を抜けて……
 幸いなのか、私には、あたっていない。

 でも、竜ちゃんは、右腕が肩の所から丸く切りぬかれて落ちちゃった。
「怪我は無いか?」
 そう聞かれたけれど、私は、落ちちゃった手を一生懸命に拾う。
 すぐくっ付ければ、何とかなるかも。

 でも、竜ちゃん。
 耳もなくなってる。
 それなのに、また私に「怪我は無いか?」と聞いてくる。
 痛いと思うのに、優しい顔で。

 頷くと、安心した様で、周りを見回して、恐竜さんの横にある入れ物へ入ってしまった。
「それも入れて」
 そう言われて、体の脇に腕を入れる。
 切り離された腕は、肘から上が大分なかったのに、ずっしりと重かった。

「大丈夫だから」
 竜ちゃんがそう言うと、蓋が閉まってきた。

 少しすると、誰かが降りてきた。
 さっき撃ったあの筒と同じ物を、腰の辺りに構えて。
「大丈夫? 一人?」
 聞いてきたのは、最近見かける女の人。
 ものすごい美人。

 ちらっと床に転がるブラスターと、私の格好。
 そう私は、竜ちゃんの腕を持ち上げて血だらけ。
 でも、外見的に欠損とかがないことが分かると、ポッドを覗き込む。
「あらまあ。また、死んでしまうとは情けないって言われるわよ」
 そう言いながら、何かをすると、ポッドの横にパネルが出てきた。

「読めない」
「勉強不足」
 スパッと言われた。だけど。
「冗談よ」
 そんなことを言って、空中で手を振っている。

「深部までの冷却が終わっていないし、溶かしながらで治療。数日はかかるわね。放っておくしか、ないわね」
 そう言うと、何故か私にピースサインを出す。

「ここで、主人公交代です。オプテミウムのマイリが以降冒険します」

 笑顔でそんなことを言った後、いきなり真顔になり、クリーニング装置とかに入れられた。
 服のままで放り込まれて、なんだか温かい液体がかかったはずなのに、出てくると濡れていなかった。
 不思議。
 血だけが綺麗になっていた。

 でも、彼女はさっきまでと違い、私を有無を言わさず、引きずっていき。上の階へ放り出す。
 そして、伶菜ちゃんを呼び、何かをしゃべる。

 すると、さっきのことを言ったのだろう、ものすごい目で伶菜ちゃんにみられた。
「ああ、大丈夫だから。地球だったら死んでたけど、すぐにポッドに入ったみたいだし。一度みんなを下に降ろして、下の二人は、もう三〇分から四〇分くらいで起きるはずだけど、どうする?」
 マイリが伶菜に聞くが、放心状態。

 両頬を挟むようにビンタをする。
「こらっ、あんた番いになるんでしょ?」
「番? ああまあ。そうね」
 だが、まだ目の焦点は合っていない。

「なら、しっかりなさい。お客さん達と、下の二人どうする?」
「どうするって? 何が?」
「もうっ。そんなこと言っていると貰うわよ。当然だけど竜ちゃんを」
「だめ」
 正気になったようだ。
 もう一度、マイリが説明をする。

「じゃあ、お客さんは降ろしましょう」
 そう言うと、伶菜はみんなに説明をしに行く。

 その動きを見送る女の人の目は、丸くなく縦に割れていた。
 そして、その目を見たとき、まるでゴミでもみるような、冷たい目だったと感じた。

 確かに、葉月がそう感じたのは、確かかもしれない。
 マイリは、ドラガシメル人のなかで、生まれてからずっと最下層だった。

 それでも、地球人よりは上。
 竜司は当然別格、そして愛され、力を発現した伶菜は少し認めている。
 だがそれ以外は、等しく興味の範囲外。

 マイリにとっては、等しくただの地球人なのだ。
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