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第三章 国との関わり

第47話 ライセンス取得

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「お帰り。遅かったわね。何かあったの?」
 ジト目の伶菜に、そう聞かれて、ビクッとするが、言い訳はある。

「ああ、たいした事は無いが。銀河が滅ぶから、何とかしろとばあさんに言われた」
 さらっと言ってみる。
 マイリが俺の左手にしがみつき、しなだれかかってご機嫌。
 伶菜には、いちゃついていたのはバレバレだろう。

 だが、言葉の持つ威力は、でかかったようだ。

「んがりゅうぞれ」
「はっ?」
「いや竜ちゃん。そんなこつ、さらっと言うことじゃないよね」
「言葉が変だぞ。何処の人だ?」
 そう聞くと、伶菜は何故か、エイという感じで、空中にチョップする。

「いや、そんな事は良いの。それよりホント?」
「ホント。モンスターを倒して、力を取り戻せとか何とか」
「大変じゃない」
「大変だよ。でも、賢者が言うという事は、やれることだからなぁ」
 そう言って空を仰ぐ。

 夕飯時に、親にも説明をして、許可を貰う。
 ついでに、隊長さんである、橋本さんも夕飯に呼んである。

 橋本さんはすでに固まり、箸で掴んでいたたくあんが、ぼてっと、テーブルに落ちる。

「っそれ、共有をして良いかい?」
 そう言ってテーブルから、たくあんを拾い食べ始める。

「ええ、話をしてもらって、特別にライセンスを頂けませんか?」
「それは、君の力は知っているし…… いや、攻撃的な力もあるのかい?」
「あーええ。癒やしの力と言っている力。収束をして射てば、かなりの威力はあります」
 そう言うと、当然考え始める。
「ふむ、一度見せてくれるかい?」

 後日。呆れられた。
 自衛隊や、治療に関係する俺を、危険にさらすなんてと言っていた人たち。
 目の前には、ひっくり返り腹を曝す戦車。

 向こうでは、リモート式の旧型戦車が、キャタピラだけを残してほぼ溶けている。
 中には砲弾があったようだが、爆発もせず。崩れるように溶けた。
 光の中では、位置エネルギーや運動エネルギーが無効化され、化学変化すら無効化される。

 近くでひっくり返った戦車は、殴ったら転がった。
 こっちは有人だが、大丈夫だろうか?

「こんなモノですかね」
「ちょっと、野球のボールを投げるから、力を使ってみてくれ」
「ああ、はい。どっちですか? 分解と攻撃」
「攻撃だと、軸線上にいるとまずいよね」
「そうですね」
「じゃあ分解で」
 ぽいっと投げられたボール。

 投げられ、頂点位置からの落下中、紐はほどけ皮がはがれる。
 芯に巻かれた紐も朽ちて、地面ではベシャと潰れる。

 そう、攻撃の軸線上に飛行機がいるとまずい。
 日本上空は意外と混雑をしている。
 分解はとりあえず射程距離が短い。

 そして、力を纏った物理攻撃。
 戦車の装甲を叩き潰す。
 拳はちょっと痛い。

 面白いので、いそいそと上半身の服を脱ぎ、物理になった羽をだし、羽による空間干渉を見せる。
 ひっくり返った戦車が、ごろんと転がる。

「羽が、実際に」
「この前は、光だけだったよね」
「ええ。体がなじんだので、物理的に生えるようになりました」
「そうかね」
 そう言って、厚労省だかどこかの偉い手さんは、ハンカチで額の汗を拭く。

「どうですか?」
「どうも、規定を変える必要があるようだ。今は彼だけ?」
「いえ、彼女達も使えます」
 一緒に来て、羽が生えた俺を、潤んだ瞳で見ている伶菜。
 そして横にはマイリ。

 ご要望にお応えをして、さらっと力を見せる。

「良し分かった。波形に現れない能力もあると言うことだね、しかもそれがモンスターを倒せば、得られると」
「そうですね」
「ギルドのライセンスを見直し、能力の無い人にも発行するようにする。能力が無い人をノービスとして差別。いや区別をするが、それ以外は、他の能力者と横並びに扱おう」

 そうして俺のごり押しが、ギルドの規定を変えて、普通の人にもライセンスが発行された。むろんノービスは、お近くのモンスター撃退義務は除外。
 それ以上は一緒。

 録画用カメラも配布された。

「これでただ働きからは、逃れられた。頑張って小遣い稼ぎをしよ」
 横で、伶菜とマイリもライセンスを握りしめている。
 当然一般用。
「力を見せたからね。特に、伶菜には治療の方法を教えるから」
「うん。よろしくね先生」

 そう言うふうに、笑顔で言われると、なんか胸に来るモノがある。

 そして、残りの言葉も思い出す。
 『懇意の雌を宇宙船につれておいで』そうか、体を最適化すれば強化ができるかもしれない。

「なあ、伶菜。宇宙船に行って、体のメンテナンスをしないか?」
 寿命とかその他は言わない。

 だが。
「寿命とか長くならない?」
「多分なる」
「良かった。宇宙船でメンテナンスを受けたって聞いてから、気になっていたの。ひょっとするとって。最後、見送られる方が嬉しいけれど、できれば長く一緒に居たい」
 そう言って俺の胸に顔を埋める。
 少しして、ひょこっと顔を出すと、聞いてくる。

「いつ行くの?」
「早め。ひょっとすると、攻撃の能力が上がるかもしれないし」
「じゃあ、まどか達も一緒ね」
「そうだな、でもポッドが一つしか無いな?」
「うん? あるよ。下の階にコールドスリープ用だけど、モードさえ変えれば良いし。ただ、一匹変なのが寝てるけれど」
 マイリが教えてくれる。頭の中でマニュアルを読むと、確かにあった。
 
「ああ、教授か」
「教授?」
 伶菜が聞いてくる。

「ああ、前世で、俺達を殺した犯人だ」
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