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第三章 国との関わり

第37話 少しの変化

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「あんた達。年頃だし。するなと言わないけれど。学校も行かずに何をしているの?」
 母さんにもろに見られて、お小言中。
 ものすごく気まずい。

「でも、おばさん。婚約者の私を差し置いて伶菜ったら……」
 彩がそう言うと、母さんが困った顔になる。

「えっ。言っていなかったっけ。ごめんね。今回の騒動で、関係者の親が集まって話した結果。婚約の話はなくなったわよ」
 衝撃の告白。

「私、聞いていない」
「あーごめんね。皆がバタバタしていたし。伶菜ちゃんのお父さんが、それなら中学校の時から、伶菜ちゃんと竜の字は婚約者も同然だと仰って。彩ちゃんのご両親も納得をしたけれど、彩ちゃんには言えなかったのね」
 それを聞いて、彩はガーンという感じのポーズで固まった。

「まあ良いけれど。学校には行くこと。子どもはまだ作らないこと。分かった? 出来ないなら、清く正しい生活をしてもらうわよ。当然外でもガードの方達が見張っているし、ホテルなど使えないでしょうし」

「あーうん。みんな良いな」
「「はい」」
 元気な、伶菜とまどか。
 それと比べて、彩は落ち込み中。
 そして、何故か手を上げるマイリ。
 犬は流石にやめてくれ。

 この時、マイリは理解をしていた。
 それで、賢者様はあの人工生命体からだを、わたしにお与えくださったのね。ドラガシメル人と違う容姿については、此方へ来て、すぐに理解をした。
 それが雌型であることも。

 賢者のすべてを見通す優しさに、心を打たれて泣いてしまう。

「マイリどうした?」
「犬って泣くの?」
 全員が、見たことがないと首を振る。
 だが、伶菜だけは理解をする。
 私たちと、一緒なんだと。

 マイリをぎゅっと抱きしめて、そっと囁く。
「ごめんなさいね。でも彼を好きなの」
 言葉は通じるのか分からない。でも彼女は伝えたかった。

 俺達は、しかられて仕方なく、昼から学校へと行く。

 彩あたりが、いや奴しかいない。
 きっとしゃべったのだろう。当然騒ぎになり、女子のほうでは、「きゃー」とか言っていたし、なんだか、女子のもじもじした感じが、教室の中で流行っていた。

 放課後になると、何故か。
 女子に積極的に手を引かれて、教室をを出ていく生徒が複数。
「意外と、みんな付き合っていたのね」

 丁度、俺が能力を思いだして、精神波動を発したあたりで、付き合いだした連中がいたと分かった。

 まあ、クリスマス前だったしな。


 帰ろうかと思ったら、伶菜から提案をされる。
「マイリの事について、皆に言ったほうが良くない?」
「ドラガシメル人の事もか?」
「うん。前世がそうでも、いまは地球人の竜ちゃんでしょ。それに、たまにある奇行も、そうだったのかって納得が出来るし」
 そう言われて、首をひねる。

「奇行?」
「うん。みんなは言わないけれど。結構マイリとしゃべっていたり、顔をスリスリしているでしょ」
「あれは、挨拶なんだよ」
「ほら、説明が必要でしょ」

 そういう事で、密談と言えば、カラオケボックス。
 両隣と正面は、強制的にガードの人たちが取ったようだ。

「竜ちゃんの秘密公開」
 パフパフとパフパフラッパや、シャンシャンとタンバリンが打ち鳴らされる。

「えー実は、宇宙人の前世があり、さらに記憶があります。現世での転生者。佐藤竜司です。よろしくぅ」
「わあー」パフパフパフパフ。シャンシャン。

 楽器が入ってくるのは、盛り上がっている振り。
 音漏れをするからね。

 そこまで考えたのに、話が筒抜けだと思っていなかった。
 どうして、しゃべるのにマイクを使ったんだ。
 そう色々と、おバカだったよ。

「マルタイの特記事項と思われます。盗聴を開始いたします」
「許可」
 当然こうなる。

「高校生は、高校生ですね」
「若者らしい行動については安心はしたが、秘匿情報。内容はかわいくないレベルだぞ」
「そうですね。地球を宇宙人が監視しているのが、本当だったとは」
「しかも、史実もある。天使が宇宙人。それも、ドラガシメル人と人種名まで」
「隊長。あの犬。宇宙人の端末だそうです」
「その様だな」
 隊長の頭は、急激に色素が抜け、薄くなる。

「これって、私たちが聞いていい話でしょうか?」
「文明の進んだ世界にも、陰謀があるんだな」
「あのぉ、神の話まで出てきましたけれど」
「そうだな。報告後。忘れた方が良さそうだ」

 ガード達の顔色は、ドンドンと悪くなっていく。
 隊長の足下には、ハラハラと髪の毛が舞う。

「私たち、でっち上げで、逮捕されませんよね」
「さあ? 国家レベルというか、世界レベルの重要情報だな」
 それを聞いて、一人がはっとした顔をする。

「日本には、CIAが入って居ますよね」
「それどころか、諜報機関はうようよしている」
 そう言いながら、上を向いた隊長は確実に一〇歳は老けていた。

「このカラオケボックス、盗聴防止は」
「いま俺達は、何をしている?」
「ですよね」
 全員が、お通夜状態となる。


「わかったぁ」
 彩が元気よく手を上げる。

「理解できたのか?」
「うーん。まあ。竜ちゃんは竜ちゃんだという事は、理解した」
「私は、納得はした。あの力を見たし。あの犬がモンスターじゃなくて端末だっていうのはびっくりだけど。気にしない」
 まどかは、なんとなく、理解をしたようだ。

 伶菜は理解しているし、問題はないだろう。

 なぜか彩は、コブクロさん達の赤い糸を歌い始める。
 だが、歌詞を聴いて理解した。何故かじゃなく、彩としてはこういう心情なのか。

「だが…… この曲。すんごく難しいぞ」
 その日、隠れた彩の才能を見た。
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