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第二章 宇宙人来襲

第24話 少しずつ変化する日常

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 ベルタ=スローンズは、竜司家を確認すると、手土産を買いに走る。

 三十分後には、竜司の家でベルを押していた。
「こんにちは。先日助けていただいた、ベルタ=スローンズと申します」
 顔を上げる、ベルタ。

 目の前にいるのは、伶菜。
 ベルタは、きっと兄妹だろうと考える。
「あの。お兄さんいらっしゃいます?」

「おに? ああ。少しお待ちください」
 伶菜は、竜司の事だろうと、理解をして呼びに行くことにする。

「ねえ、竜ちゃん。お客さん。助けて貰ったって言う外人さん」
「外人さん? 言葉が……」
「大丈夫だと思う。日本語をしゃべっていたから」
「なら良いか」
 彩に、宿題を進めるように言い残し、階段を降りていく。

 あー。見たことがあるな。あの三人の内の一人。

 身長と、髪の毛の長さで、男だと勘違いをした人。

 玄関へ行き、竜司が現れた瞬間に、ベルタの表情は変わり、惚け恋するそれに変化する。
 
 竜司の後ろをついてきた伶菜は、敏感にそれを察知する。
「あっ。この前はありがとうございます」
 そういった彼女は、顔が変わっていた。

 先日は、抗がん剤の影響もあり、多少人相が良くなかった。
 まるで減量後の力○徹のように。

 今の彼女は、どう見ても女の人だった。
「あっいえ。たんなる、ついででしたので」
 そう言って流す。
 いま、竜司は非常に、体調が悪かった。

 やっとの事で帰って来たが、帰って来た途端に彩に捕まった。
 要件は、いつもの事。宿題をやりたくないという意思表示。
 なだめて、宿題をさせていた所だ。

 ふっと、立ちくらみがおこる。

 後ろにいた伶菜が、何とか受け止め、相手を代わる。
「すみません。彼ったら、今体調が悪いみたいで」
「かれ?」
「ええ。私、彼ので」
 伶菜の言ってみたかった台詞。これだけで、他の女にマウントが取れる。

「フィアンセ。そう……。――そうですか。体調が悪いのなら、後日また参ります」
 そう言って、ベルタの態度は変化し、あからさまにご機嫌状態から、落下する。
 軽く頭を下げると、とぼとぼと、玄関を出て行く。

 手土産の中身は、なぜかタオルだった。

「フィアンセがいて、同棲中なのね。いえ、彼女が言っただけで彼に言われたわけじゃ無い。きっと彼女も狙っていて牽制なのかも知れない」
 一応、自身にとって都合の良いパターンのみを考え、自分の心を説得。再度会った時のことを期待する。

 その後彼女は、書き込みのせいで、誰が特定をしたのかは不明だが、自身を訪ねてくる人達の相手で困ることになる。


 そして、竜司はその後、変化を実感していた。
「変化が中途半端なのか、魂に引かれてドラガシメル人の特性が出た。どういう変化なんだ?」

 彼は脱衣所で、意識的に出し入れが出来る羽に困っていた。
「まあ、隠せるだけ良いか。この星では目立ちすぎる。力が大分戻ったのは良いが」
 物理的に生えてきているわけではないのを、鏡で確認して安堵する。
 だが、彼は、この変化のおかげで、モンスター退治を現在躊躇している。

 羽はまだ、物理的なものではないが、力を使ったときには、勝手に展開するし、この変化が進み肉体的変化となった場合は、偽装が必要だ。

 竜司は自身だけの変化と思っていたが、その影響は、周りにも広がっていた。
「最近、竜ちゃんがそばに来ると、心が温かくなるし、気がつけば涙が出るのよね」
「そう。なんだか尊いよね」
「そうそう」
 三人が顔を突き合わせて、相談をしている。

 最初は気のせいかと思った、だが、積み上がっている宿題の向こう側で、彩が涙を流していた。
 まどかは、宿題でどこか分からず彩が泣いているのかと思ったが、いつもの様に問題の答えは真っ白っだった。

 よくみると、すぐ脇で竜ちゃんが寝ていて、意識の制御が外れ、力が漏れていたようだ。
 襲おうとして近付き、その波動を感じて、精神を揺さぶられたようだ。

 そして、まどかも近くへ行き。竜ちゃんの姿を見た途端その影響を受ける。
「なにこれ?」
 悲しくはない。それどころか、幸福感が心を満たしていく。
 そして、涙がとめども無く湧いてくる。

 そして、伶菜もやってきて、同じ状況にはまる。
 寝ている竜司の脇で、涙を流す三人。
 ものすごく、シュールな状況が出来上がる。

 そして、これは何? となったのである。

 当然みんな、何にも出来ない。

 そんな日々の中、政府から通達が来る。
 『正式に、能力者は登録をしてください』

 自身で分かっていない人は、病院で能力検査が出来ます。
 まどかと彩は、能力を発動して、すぐに確認が出来た。
 だが、おれと伶菜は病院へ行き、発動時の脳波パターンがないか調べた。
 検査の結果、二人とも全くないという事だ。

「二人ともなかったね」
 そう言う伶菜は、何故か嬉しそうだ。

「能力がなくて、残念じゃないのか?」
「それはそうだけど、その…… 竜ちゃんと一緒だし」
 そう言って、手を繋いでくる。

 そして、家に帰ると、嬉しそうな顔をして、能力者カードを見せびらかす奴らがいた。

「能力のない人間が、カードを見せびらかされたときに、受ける悲しさを理解できないのか?」
 まどかはそう言うと、すぐ理解をした。
 彩は、彩だ。

 見せびらかした時には、黙って椅子へくくりつけ、宿題を目の前に積む事にした。
 三回目で理解したようだ。

 ただ、彩にしてみれば、唯一の自慢。自分の特技が出来たため、嬉しかったようだ。
「そうだな。他に自慢できるものがないものな」
 つい素直にそう言って、泣かしてしまった。

 おかげで、機嫌が直るまで一時間ほど、頭をなでることになった。
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