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第四章 帝国の滅亡へ向けて
第37話 調印式。そして帝国は消滅をする
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一,シュプリンガー帝国は、すべての権利をネメシス王国へ移譲する。
二,帝国貴族も同様。すべての権利をネメシス王国へ移譲する。
調印書には、その二行。
事実上の無条件降伏。
これにより、帝国は事実的に滅んだ。
調印は、今現在皇帝もおらず、妃も魔人に殺されたため、子どもと思ったが、残念ながら子どもが居なかった。宰相では足りないから、各方面の行政官達も連名をする。
一応帝国の印は押されている。
その手前で、こんな話し合いがあった。
「おい皇帝がいない。ニクラスお前皇帝になれ」
「わずか一日だけの皇帝なんか、いやだよ」
「我が儘な奴だな。履歴書に前職皇帝ってかけるんだぞ」
「履歴書って何だ?」
「仕事を貰うときに、書いていく書類だ」
「ひどいな。俺首なのか?」
「それは困るな……」
「ならいい」
そんな茶番。
まあそんな事はあったが、無事に帝国は無くなった。
ひどくあっさりと事が終わったが、その道のりは長かった。
そして、暫定的だがフレーベ侯爵を侯爵のまま、元々の自領を含めて治めるように命令書を出す。帝都が丁度中間くらいだなと言うことで、北側すべても自治を投げる。
聞いた本人は、一瞬だけ喜んだがふと考える……
国の半分。
一体どうやって治めるのかと……
彼は途方に暮れる事になる。
今までの区分で代官を置き、何とかするしかないと考えていると、貴族の心得みたいな文書が渡される。
農奴を含め、奴隷は禁止。
代官などによる罪は、連座制として、上部貴族がその責を負う。
住民台帳を作り、きっちりと把握すること。
農地の広さを計測をして、収量の概算を計算して、税の収量をあらかじめ計算すること。
天候不順などは、係数を用いて推測し、隠蔽などの調査を行うこと。
等々……
意外と細かに決められていた。
問題は、地方税が最大二割。国税二割。
今までは、税が九割といいながら、結局農民からはすべて取り上げ、農民は雑穀や野菜で飢えをしのいでいた。
そして読めば、飢饉などの災害時は、領主が負担をして民を救済。
不足分は、国に必要分を請求すること。
その時、虚偽があればその罪を問う。
暫定法だと聞いたが、かなり細かに書かれていて、厳しい。
「これでは、貴族がまるで民の庇護者ではないか」
そんな言葉が、侯爵から出る。
これは、メーヴィス王国時代に失墜した貴族の威厳を取り戻す意味もあり、骨子はネメシス王国側でも実施されている。
そして、貴族に必要以上の力を持たせないためという意味もある。
「参勤交代させようかなぁ」
などと、ぼやいた事もあるくらいだ。
「王様、報告があります」
「何だ?」
王であるウェズリーは、いつもの様に手を伸ばす。
だが、それを無視して、言葉が続く。
「オネスティ様が、帝国を落としました。本国に土地を編入した旨と、これから領地を治める貴族を決めるから、承認をするようにとのことでございます」
「はっ? 帝国? 落とした…… どうやって?」
それを聞いて、王座から半分ズリコケながら聞いてくる。
「さあ? わたくしのような、浅慮な者には思いも及びません」
宰相も、考えが浅いと言われ続けて、とうとう本人も理解した様だ。
そして、帝国側では吟遊詩人とは別に、公布人という者が街角に立つ。
国民の識字率が低いためだ。
「帝国の皇帝は悪行からモンスターとなり暴れまわった。これに帝国では対応できず、助けを求める。ネメシス王国へと。依頼を受けたネメシス王国は強く、あっという間に魔人となった皇帝を封じ、国を救った。そして悪政のためボロボロだった我が国を救済するために、自国へと組み込んだ」
公布人は聞いている民の反応を見ながら続ける。
「ネメシス王国の決まりにより、税は半減。日照りなどの災害時は、その救済を貴族が行う事になった。貴族で力が及ばないときには、国が救済を行う」
「「「おおおっ」」」
耳障りのいい言葉に、民から反応があった。
「そのために、住民帳を作り、住まいを登録をする。何かあって援助をするときに困るからだ」
決して、税を確実に取るためだとはいわない。
そう、まるでどこかの国のようだ。
「冒険者などの人間はどうするんだ?」
「冒険者や行商人などでも定住出来る拠点がある者は、その領へ税金を払う代わりに、怪我を負ったときなどは生活の保障をもらえる。そして、現役で移動しまくる冒険者は、領を出るときに、ギルドに連絡すればギルド間で取りまとめをしてくれる。どうだ面倒は、移動時に書類を出す手間だけだ」
保障のための、保険料が税金とは別に引かれるが、そこはまあ良いか。
「それと病気や怪我のときのために、健康保険制度も始まる。何かあったときにその札を持っていれば、治療費を払わなくてよくなる。その代わり、月々幾ばくかの金は要るがな」
そんな感じで、各町や村に現れて説明をしていく。
そう日本で行われていた、社会保障制度をこそこそと組み込んでいく。
ただ年金は、老後貯蓄制度と名称を決め、収入から貯蓄分を非課税とした。
国として将来的な、物価や貨幣価値が予測できないからだ。
そうして静かに、どさくさに紛れて内政を整えていく。
二,帝国貴族も同様。すべての権利をネメシス王国へ移譲する。
調印書には、その二行。
事実上の無条件降伏。
これにより、帝国は事実的に滅んだ。
調印は、今現在皇帝もおらず、妃も魔人に殺されたため、子どもと思ったが、残念ながら子どもが居なかった。宰相では足りないから、各方面の行政官達も連名をする。
一応帝国の印は押されている。
その手前で、こんな話し合いがあった。
「おい皇帝がいない。ニクラスお前皇帝になれ」
「わずか一日だけの皇帝なんか、いやだよ」
「我が儘な奴だな。履歴書に前職皇帝ってかけるんだぞ」
「履歴書って何だ?」
「仕事を貰うときに、書いていく書類だ」
「ひどいな。俺首なのか?」
「それは困るな……」
「ならいい」
そんな茶番。
まあそんな事はあったが、無事に帝国は無くなった。
ひどくあっさりと事が終わったが、その道のりは長かった。
そして、暫定的だがフレーベ侯爵を侯爵のまま、元々の自領を含めて治めるように命令書を出す。帝都が丁度中間くらいだなと言うことで、北側すべても自治を投げる。
聞いた本人は、一瞬だけ喜んだがふと考える……
国の半分。
一体どうやって治めるのかと……
彼は途方に暮れる事になる。
今までの区分で代官を置き、何とかするしかないと考えていると、貴族の心得みたいな文書が渡される。
農奴を含め、奴隷は禁止。
代官などによる罪は、連座制として、上部貴族がその責を負う。
住民台帳を作り、きっちりと把握すること。
農地の広さを計測をして、収量の概算を計算して、税の収量をあらかじめ計算すること。
天候不順などは、係数を用いて推測し、隠蔽などの調査を行うこと。
等々……
意外と細かに決められていた。
問題は、地方税が最大二割。国税二割。
今までは、税が九割といいながら、結局農民からはすべて取り上げ、農民は雑穀や野菜で飢えをしのいでいた。
そして読めば、飢饉などの災害時は、領主が負担をして民を救済。
不足分は、国に必要分を請求すること。
その時、虚偽があればその罪を問う。
暫定法だと聞いたが、かなり細かに書かれていて、厳しい。
「これでは、貴族がまるで民の庇護者ではないか」
そんな言葉が、侯爵から出る。
これは、メーヴィス王国時代に失墜した貴族の威厳を取り戻す意味もあり、骨子はネメシス王国側でも実施されている。
そして、貴族に必要以上の力を持たせないためという意味もある。
「参勤交代させようかなぁ」
などと、ぼやいた事もあるくらいだ。
「王様、報告があります」
「何だ?」
王であるウェズリーは、いつもの様に手を伸ばす。
だが、それを無視して、言葉が続く。
「オネスティ様が、帝国を落としました。本国に土地を編入した旨と、これから領地を治める貴族を決めるから、承認をするようにとのことでございます」
「はっ? 帝国? 落とした…… どうやって?」
それを聞いて、王座から半分ズリコケながら聞いてくる。
「さあ? わたくしのような、浅慮な者には思いも及びません」
宰相も、考えが浅いと言われ続けて、とうとう本人も理解した様だ。
そして、帝国側では吟遊詩人とは別に、公布人という者が街角に立つ。
国民の識字率が低いためだ。
「帝国の皇帝は悪行からモンスターとなり暴れまわった。これに帝国では対応できず、助けを求める。ネメシス王国へと。依頼を受けたネメシス王国は強く、あっという間に魔人となった皇帝を封じ、国を救った。そして悪政のためボロボロだった我が国を救済するために、自国へと組み込んだ」
公布人は聞いている民の反応を見ながら続ける。
「ネメシス王国の決まりにより、税は半減。日照りなどの災害時は、その救済を貴族が行う事になった。貴族で力が及ばないときには、国が救済を行う」
「「「おおおっ」」」
耳障りのいい言葉に、民から反応があった。
「そのために、住民帳を作り、住まいを登録をする。何かあって援助をするときに困るからだ」
決して、税を確実に取るためだとはいわない。
そう、まるでどこかの国のようだ。
「冒険者などの人間はどうするんだ?」
「冒険者や行商人などでも定住出来る拠点がある者は、その領へ税金を払う代わりに、怪我を負ったときなどは生活の保障をもらえる。そして、現役で移動しまくる冒険者は、領を出るときに、ギルドに連絡すればギルド間で取りまとめをしてくれる。どうだ面倒は、移動時に書類を出す手間だけだ」
保障のための、保険料が税金とは別に引かれるが、そこはまあ良いか。
「それと病気や怪我のときのために、健康保険制度も始まる。何かあったときにその札を持っていれば、治療費を払わなくてよくなる。その代わり、月々幾ばくかの金は要るがな」
そんな感じで、各町や村に現れて説明をしていく。
そう日本で行われていた、社会保障制度をこそこそと組み込んでいく。
ただ年金は、老後貯蓄制度と名称を決め、収入から貯蓄分を非課税とした。
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