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第ニ章 異世界側開拓

第45話 そして……

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 そこからも、悠翔は奴らしい暴論を展開して、山勢さん達を丸め込んでいく。
「あのゴブリン達の制御? そんな物どうやってするんです。教えてくださいます? 制御など、できるはずが無いじゃありませんか」

「だが、君は魔王だろう」
「それは女の子に、受け狙いで言っただけです。元勇者より魔王の方がかっこいいでしょう。つい、ノリで言ってみただけです。それが駄目と言われる行為としても、千年も一人で生きると、色々と世間とズレるのは、仕方が無いと思いません? それに自分が魔王と名乗って何かいけない法律がありました? 自分が悪魔だと公言している人も居ますよね。最近は歌ってなくて、コメンテーターしている人ですけれど」
 そう言われて、返答に困って居るようだ。

 俺も、周りで囲んでいた隊員も、完全に座り込んでいる。
 魔法を封じた悠翔は、見た目五十代の単なるおっさんだしな。

「まあ、それならそれでいいが、女の子を監禁をしたのは?」
「いや、ゴブリンに酔った女の子を救出したのは良かったけど、裸の女の子でしょ。うろうろされて外に出られても困るし、空いている部屋がここしかなくて」

「奥村沙羅さんを、駅から攫ったよね?」
「彼女はこちらで、倒れていたのを保護しただけです。そのまま帰しても良かったのですが、保護ついでに、酔っている裸の女の子の世話をお願いしたのは覚えています。いや彼女も、かなりパニックを起こしていましたから、記憶の混濁とかあったのじゃないですかぁ」
 そう言って、はなほじ状態。
 調査室の資料にも、奥村さんの調書はあるが、彼女は精神的に状態が良くなく入院中。

「これ、まとまります?」
 思わず、聞いてみる。
「あーいや。とりあえず。久瀬さんだったね。この世界と地球を繋ぐのをやめてくれるかね」
「良いですよ」
 あっさりそう言って、ニコニコ顔。

 三人。山勢さん、斎賀さん、八瀬さんが集まり相談し始めた。
「こちらに拉致され、千年経って元の日本に帰ってきた。歳に齟齬はあっても戸籍上は本人なんだろ?」
「そうだよ」
「なら不法入国でも何でも無い。他国ではどうかは知らないが、今の法に空間魔法を使って、異世界に繋いではならないなどと言うものは無い」
「それに、そもそも彼が、こちらから繋いだのであれば、行使だってこちら側での問題であり、日本の法に、空間を繋いできてはいけないなどは、明文化はされていないだろう」
「そりゃ当然ないだろう。大多数は不能犯扱い。まさか実際出来ると考えるのは、俺たちだって実際確認をしたのは、世界で現象がおこり始めてからだしな」
「モンスターについては? つなげればこちらに来るという予測と、どうなるかを予測。それに対し罪を問えるか?」
「彼が、飼っているわけじゃ無く、自然に居るもの。檻のドアを開いたと言うより、橋を架けたら猿が来た感じか?」
「あーそうなのかな? とりあえず参考人で来て貰うか」
「そうだな」

 最初のテンションとは違い、随分混乱しているな。

「すまない。我々と彼を日本に戻してくれ」
「あの、会議室で良いですか?」
「そうだな」
 空間を繋ぐ。

 向こう側は、調査室の作戦本部。
 悠翔もニコニコしながら、ついていった。

「奴のことだから、まともな罪に問えないのは理解しているし、やばそうならこちらに逃げるつもりだろうが。悠翔、力を封じられていることを忘れているな」
 見送りながら、つい口をついて出てしまった言葉。

 結局、国はすべてを隠蔽した。

 そして、俺たちは何とか大学を出た後、ビジネスを始めた。
 異世界体験ツアー。そして、国とは新素材や星にある資源の輸出。

 金属や、貴金属はつくしが錬成。
 会社自体は異世界側で、日本と輸出入で契約。
 国税まで巻き込み騒動を起こしたが、日本側にあるオフィスは異世界エイリアステラの大使館扱いで、話が落ち着いた。
 利害を考えた結果、俺たちの言い分が通った感じ。

 建前上、国としての体裁を整え、条約を日本だけと締結。身分証はつくしの創った物で偽造は不可能。
 気がつけば、俺がエイリアステラ王で、悠翔が国営企業の社長に落ち着いた。

 安田や工藤達もこちら側に来て、国民になった。

 接続ゲートを日本との協議で某人工島に設置。輸出入のゲートと観光用ゲート。
 観光は、冒険者コースと、自然満喫の宿泊施設。
 そして、闇のゴブリン満喫コース。以外と、人気がある。
 
 そして、それから千年以上。
 俺たちは、なぜか年も取らず。相変わらず馬鹿なことを言い合いながら、幸せに暮らしている。
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