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第四章 脅威は広がっていた

第53話 アマンダは憑かれた

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「失踪時は、ミニスカートタイプの忍者装束です。色はピンク色」
「ピンク? 忍者?」
 一応警察には、正式に届けを出す。

 警察には、Nシステムがある。
 無論風でも追うが、便利なものは使う。

 アマンダは、同人誌を扱う書店に行く途中だった。
 最近は、スマホでも見られるが、紙の方が良いと妙なこだわりを持っていた。

 修行はしたが、まだ数年。
 とっさの時には術が発動できないし、浄化は特殊。
 風の関係者でも、発動できる者とできないものが居る。

 
 アマンダは通知を見て、ウキウキで買い物に出かけた。
 お気に入りのサークル。それの新作。
 美人お姉様が、年下を食べ尽くす物……
 願望がダダ漏れで、周囲の気配察知までおろそかだった。

 横に止まった、窓まで真っ黒なワンボックス。
 出てきた、手にはスタンガンが握られていた。
 言わずと知れた、感染者達。

 浄化の風が吹き、数が激減したため、妻を餌にして感染させた。
 定期的に浄化されているから、使い捨てである。

 気がつけば、後ろ手に縛られ転がされていた。
 アマンダは思う。
 縛り方が成っていない。
 伝統緊縛術が、使われていない。
 亀の甲羅が……
 
 悔しかった。
 こんなにふざけていたのは、逃げられると思っていたから。
 伊吹をして丹田に力をためる。

 気合いを入れて、風を……
 あれ? 集中ができない。
 寝ている間に、薬を射たれていた。

 そう興奮と感覚が鋭くなる物。

「やれやれ、あの風はめんどうだね。おっ目が覚めたのか?」
 その男は、なんと言うか普通でさえ無さそうな男。
 それも中年。
 アマンダのゾーンからは外れている。

「何者?」
「うーんくせ者さ。コスプレ好きなの? お嬢ちゃん」
「好きだが、それがしは帰らせて貰う。帰さないと、大変な目に遭うぞ。秘密結社の忍びであるからな」
「ほう秘密結社? その秘密を知りたいのだよ。散々じゃまをしてくれたからな」
「忍びたるもの、口など割らん」
 きっと睨み付ける。

「まあきっと、そうも言っていられなくなるさ」
 下を脱がされ始めたとき、意味を理解をした。
 暴れるが、力が入らない。

 その薬は、優秀だったらしく、敏感な所を少し触れられただけで、目の前に火花が飛ぶ。
「ぐっ」
 舌を噛もうとしたが、心までは忍びになりきれていなかったようだ。

「あっ、ああああっ」
 何かが入ってくる。
 その感覚と、快感。

 頭がおかしくなる。

 そして、何か別の何かが入ってきて、頭の中にモヤがかかる。
 自分の中に、何かが入ってきた。
 すると嫌いなはずの相手が、愛おしくて好きでたまらなくなる。

「ああああっ。もっとぉ」
 あっさりと陥落。


 その夜、屋敷に忍び込もうとする二人。
 アマンダと鬼谷 祐一。
 シチュエーションとしては、迷子になっていたアマンダを保護して連れてきたとなっていた。
 だがそんな、甘い設定は許されない。

 門から中に入ると、二人の周りに風が巻き、アマンダは浄化される。
「ちっ、もうか」
 だが逃げることはせず、屋敷に向かって走りはじめる。
 手には、どこから入手をしたのか、銃が握られていた。
 トカレフ TT-33、戦争したりゴタゴタしているから、流れてきたようだ。

 気がついて、出てきた者に躊躇なく発射される。

 幾ら風が強力でも、流石に7.62ミリの弾は強力で流しきれない。
 飄重達が撃たれてしまう。

 流石に近所で銃撃の音が聞こえて、他の家も集まってくる。

「ちっ流石にまずい」
 男は、周囲に配置させた車から、手下を呼ぶ。
 無論感染者だ。

 ただその手には、銃が握られている。

 見た感じ、普通の主婦や学生が、バンバンと躊躇なく撃ってくる。

 警察も集まってくるが、どう見ても普通の市民。
 ただ、手には銃が握られていて撃たれる。
 警官といえど、銃撃戦などはしたことが無い。

 防戦をしながら、応援を呼ぶ。

「颯司、浄化をしろ。この一帯だ」
「はい」
 闇の中、キラキラした光を纏った風が周囲を吹き抜ける。

 だが、上手く浄化されず、周囲の警官までが黒い霧に感染をしていく。

 力比べ。
 浄化と感染のせめぎ合いが始める。

 その時、誰かが撃った弾が、颯司の肩に当たる。
「どわっ」
 肩を引っ張られる感じがして倒れ込む。
 焼き付く様な痛み。

 治癒の風を使うが、痛みで上手く集中できない。

「颯司」
 倒れていたアマンダが、その光景を見て叫ぶ。

 あわてて、立ち上がり背中を撃たれる。
「んぎゃ」
 突き飛ばされた感じで、パタンと倒れてしまう。
「ふぐうっ」
 地面で顔を打ちつける。

 鼻血をたらしながら、颯司の元に這っていく。
 それは、アクション物の、ヒロインのように。
 そう実際、捕まり脱出中のシチュエーション、アマンダが燃え上がらないはずはない。
 ショックな出来事はあったが、抱いて貰えばそれでをOKなのよぉ……

「颯司、大丈夫?」
 雫は、撃たれている颯司に駆け寄る。
「ぐえっ」

 途中で、じゃまなピンク色のカエルを踏んだようだ。

「颯司、撃たれたのか」
 庭に、セラミック並みの堅さを持った壁が生える。
 そう、ちょっとだけかっこよくなった、陸斗が登場。

 颯司に駆け寄る途中、ピンクのモモを発見。
 しゃがみ込んでなでてみる。
「あんっ」
 まだ薬か暗示か、それとも開発されたのか、色っぽい声が出る。
 むぎゅむぎゅしながら、周囲の敵をマッピングをして、銃を握っている手を容赦なく土の弾が撃ち抜く。

 雫は、颯司の傷を治しながら、浄化の霧を周囲に広げる。

 朱莉はおやつを食べていたらしく、バームクーヘンを一層ずつ捲りながら食べつつ走ってくる。
 その所為で到着が遅れた。
「じゃまね、此の霧」
 
 朱莉は炎で霧を払ってしまう。
「馬鹿何やっているの……」
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