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第二章 異物混入

第16話 朱莉の変化

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 一応、朱莉を守りつつ、青坊主を探る。
 その風に反応がある。

 背中を向けたままで、雫が来たことを確認し、次の瞬間音もなく颯司が消えた。

 途中にいた、野良の鎌鼬も狩り、ついでに青坊主を狩る。
 その直後に、陸斗が現れる。
 そう来ていたのは知っていた。
 だからあわてて狩った。

 スマホへと通知が行く。

 力を何とか制御出来始めた颯司、あの時にできた精霊化ができないのは不思議だが、前の五割増しなら楽勝で制御ができる。


「狩っちゃったみたいよ。帰ろう」
「うん」
 そう答える、朱莉の様子が少しおかしいことに、雫は気が付かなかった。

 朱莉は朱莉で、暴走を始めた颯司への思いが、胸の中でどんどん大きくなっていく。
 ただの幼馴染み。
 もう力使いの家系で、兄妹のように仲良くあそんだし、修行もした。
 そのおかげで、滝行のときなど、みんな裸で修行をした。
 体が変化をはじめ、陸斗にみられるのは嫌になり、颯司にみられると少し恥ずかしくなった。

 でも今日。私の心が奇妙な反応をした。
 恥ずかしい気持ちと、もっとみてほしい。
 そんな、相反する気持ちがわき上がり、それは甘酸っぱく……

 心臓が、激しく鼓動をする。

 帰る途中……
「あれっ。炎が、制御出来ない」
 手足から、炎が不意に噴き出す。
 あわてて雫が、周りを囲む。

 家の方へと帰ってきて、もう住宅地が近い。

 いつもの訓練場は、住宅地から五キロは離れているが、公園からなのでもう随分帰ってきている。
 やばい。

 雫は火祭家へと急ぐ。

「おじさん、おばさん」
 任務で出ていないことを祈りながら飛び込む。
 門を入った所にあるかがり火が、侵入者を家人に知らせる。

「うん? 誰かと思えば思えば、水祭の雫ちゃん。元気?」
「元気です。だけど朱莉が大変なんです」
 出てきたのは、火祭 極武ひまつり きわむ朱莉の兄であり三個上。
 高校生。

「ああ、あれか」
 気配を探ったのか、状況が判ったようだ。
「雫ちゃん。もういいよ。こっちで何とかする。ひょっとすると明日は休むからよろしくね」
 怪訝そうな顔をする雫に教えてくれる。

「体ができあがったら、封印が外れるのさ。俺より一年も早い。妹ながら朱莉はエッチなようだ」
 そう言って笑う。

「封印……」
 そう言って佇む雫。

「聞かされていないのか、その内分かるよ」
 そう言って手を振られる。
「警察に捕まらないようにね」
「はい」

 少し考えながら、雫は家へと帰る。
 無論、水による迷彩は発動中。
 普通の人なら、姿が見えない。

「封印って、なんだろ」
 その晩、それが気になり、雫は寝られなかった。


 極武は、水に囲まれている朱莉を連れ、家へと帰る。
 家の裏手にある、修行場へと連れて行く。
 浮島のような四角い石板の上。

 そう、みんなが通った特訓場。
 他の能力とは違い、炎は周囲に与える影響が大きい。
 ここなら、幾ら燃えても安全。

 水を払うと、すでに服は焼けてすっぽんぽん。
「制御出来るまで、母屋へは入るなよ」
 そう言い残して、極武は帰って行く。

 ひんやりとした特訓場。
 能力が発現をしたとき、ここで暮らした。
 でもあの時は、お母さんが付いていてくれた。
 今は一人。
 暗く、水の音だけがする。
 冷たい石は、体温を奪うが今はそれが気持ちいい。

 ぺたんと座り込み、こうなったときを考える。
 トイレで気を抜いていたら、青坊主が出てきた。
 それで驚いて、ズボンを汚した。
 片付けを雫に任せて、洗っていたら、颯司が来て……
 みられたよね。

 私、色々怪我とかしたけれど、体、おかしくないよね。
 恥ずかしいよりも、どう見られたかのか、その方が気になり始める。
 雫より、少しお尻がおっきいし。
 足だって太いし……

 あそこの毛だって、薄いし。
 見た瞬間の驚いた顔。
 あれはどういう顔だろう。

 そんなことを考えると、心臓はドキドキして、また炎が制御ができなくなる。
 中途半端に壊れた封印が一番危険。
 制御ができないからだ。

 うー。気になり自分の体を確認し始める。
 成長途中の未熟な体。
 変化は途中。
 まだウエストなどは、幼児体型。
 颯司のことばかりが気になる。

 身近で気になる男性。
「どうしてだろう、触れて貰いたい?」
 ドキドキが加速をする。

「颯司…… そうか、私颯司のことが好きなんだ」
 答えを思いつき、それを認めた事で、心が変化をする。
 割れかけた封印はその時はじける。

 秘めた力が、炎となり、特訓場を埋め尽くす。

 その炎は、赤から白へ、青みを増しその温度は上昇をする。

 御影の石板が赤熱し表面が溶け始める。

 タイル状の石の端は水に触れているが、沸騰し蒸発を始める。
 その蒸気は湿気となり、熱を奪うだが、それよりも供給が多い。

 その時、朱莉は颯司に触れられたら、どんな感じなんだろうと、それに夢中になっていた。

 朱莉の発する超高温は、周囲の流れから液体を奪ってしまった。

 翌朝は、特訓場の石板が溶けて蒸発し、流れ込んだ水の風呂に浸かっていた。
 丁度、発する高熱が冷やされて、気持ちがいいくらいだった。
 だが、体は動かず、学校は休んだ。

 今、颯司に会えば、私はきっと周りを燃やしちゃう。
 無論炎は制御ができる状態だが、制御する心が制御できなくなっていた。
 早熟な恋心。
 アマンダの出現により早まってしまった、心の連鎖。
 それが、思いもよらない危機を、解決をする事になる。
 
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