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第二章 異物混入

第15話 異変

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 その晩、なぜか小遣い稼ぎに颯司が来なかった。
 昼間は、学校がなんだかザワついていたし。
 雫達はねていて、震動と音に気が付かなかった。

 その晩、またもトイレ前で、颯司はアマンダと向かい合う。
 颯司は急激に解放された能力のせいで、体調が最悪だった。
 頭痛に吐き気、体は全身筋肉痛のような状態。

 親たちはニヤニヤしながら喜んでいるし、よく分からない。

 体調の悪さから、アマンダにポスンと埋まる。
「おう、どうしました。主」
 これはいけないとばかりに、アマンダは颯司を部屋へと連れて行く。

「開けます」
 ドアを開け、中へ入ると、日本の中学生の部屋。

 机と、本棚。
 そこに飾られた、雫達との仲の良さそうな写真の数々。

 ただ、手にぶら下げているモノは、見たことのないのない生き物たち、その他にも、今よりも幼い彼らが、喜んで登っているのは、体高だけで三メートル近い牛のようなモノ……
 どう見ても、顔が人間のように見える。

 アマンダは知らなかったが、くだんと呼ばれる妖怪。
 厄災や天変地異、流行病などが起きると言われている。
 一般的に、コイツが生まれた時には予言を残し、すぐに死ぬとか言われているが、そうでない物も現れ、この時は逆に厄災を及ぼした。

 まだ幼かった彼らに、親たちが勉強のために見せたもの。

 その数々の怪しい写真に、アマンダは引き込まれていく。
 颯司はベッドへ寝かされていたが、ふと気が付く。
 部屋の中に、人の気配。そして丸い何かがこちらを向いている。

 風を使おうとするが、上手く行かない。
 少し体を起こし、集中をするが、やはり言うことを聞かない。
「ああそうか、これはまた夢か」
 口の中だけでそんな事をつぶやき、はっきり見えだした記憶に残るアマンダのお尻。
 丁度暗く、アマンダは写真を見るために前屈みで見ていた。

 そのため、颯司からは、足の生えたお尻が浮いているように見えた。
 最近急に女性に対して興味がでて、こんな夢まで見始めたのかと。
 手を伸ばし触ってみる。
 それは柔らかで、暖かい。

 アマンダは驚いたが、ペタペタと触る触り方に、嫌らしさを感じず振り返る。
 急に振り返ったことで、上半身が生え驚いた颯司だが、胸に手を伸ばす。
 その行為を、アマンダは体調の悪かった颯司が、きっと母親を求めていると考えた。

 少しためらったが、ベッドの中に入り込み抱きかかえながら颯司の頭をそっとなでる。

 颯司はそっと胸に顔を埋める。

 翌朝、颯司はすっきりした頭で悩む。

 横で嬉しそうな顔で眠るアマンダ。
 彼女は、甘えてくる颯司がなんとなく嬉しかった。
 母性というのだろうか?
 いい加減、アジア人は童顔で幼く見える。
 恋愛などからは外れた存在。

 だが相手の颯司は複雑。

 まあ、アマンダを横目で見ながら、着替えて下へ降りる。
 朝は落ち着いたのか、両親もにやけ顔がなくなっていた。

「行って参ります」
 そう家はどうこうなかった。

 だが、雫達が落ち合ったすぐ後、彼女達の鼻が動き怪訝そうな顔になる。

 颯司から、濃厚な女の匂いがする。
 雫と朱莉は顔を見合わせる。
「「アイツだ」」
 無論すぐに責めたりはしない。
 だが少し濃厚すぎる匂いに、疑念を持つ。
 

 でもまさか……
 風祭の両親が、そんな事など許さないだろうと言う思いがある。

 そう、基本的に結界と、警戒の風が家の中を吹いている。
 風祭家は少し特殊なのだ。

 そんな家でまさか?
 まあ、目覚めたと言っても、まだ中一男子そんなにいきなりエロい方に走らない。
 高校生とは違うのだよ。

 その日も、風祭が起きていると、教室は騒然となったが。


 その晩はきちんと颯司はやって来た。
 だが、今朝の一件で、雫と朱莉は授業中の眠りが浅く調子が悪い。

 青坊主が現れて、人を襲うということで警戒をしていた。
 ぼやっとしていた朱莉は、トイレに行きたくなり、公園のトイレへ向かった。時間が時間ですでに真っ暗。
 仕方が無く、鬼火を灯しながら用を足していた。
 まだ設備が古く、くみ取り型。

 伝承にもあるが、青坊主はトイレから出てきて脅かすことがある。
 声にならない声を上げ、朱莉は個室から出ると、火の固まりを個室にぶち込む。

「どうしたの? 大丈夫……」
 近くにいた、雫がやって来た。
 そう大体、二人はペアで近い距離で行動している。

 だが颯司が、力を増し練習がてら遊んでいた風纏装かぜまそうのおかげで、あっという間に来た。
 トイレの炎は、雫が消し、焦げ後を手慣れた感じで洗浄をする。

 朱莉は、汚したズボンと下着を警戒心が薄く、洗って乾かしていた。
 そこに、すでに颯司が来てしまった。
 今まで幾度も見られたことがある。
 だけど、朱莉も成長をしていた。
 幼いときとは違う。

 どうしようもない、気持ちが、そう今までとは違う気持ちが湧いてくる。
「ごめん。ちょっと今見ないで」
 なぜだろうドキドキが収まらない。
 恥ずかしい。顔が赤くなる。

 颯司は背中を向け、周囲を警戒してくれている。
 その背中が、いつもと違う。

 朱莉の胸の中で、パキッと音がする。
「あんた、パンツも穿かずに何してんの? ぼちぼち陸斗が来るわよ」
 片付けの終わった雫が出てくると、朱莉の状態を見て忠告をする。

「それはやだ」
 そそくさと、下着とズボンを穿く。
 その向こうで、後ろを向く颯司に気がつく。
 雫も、少し変わった颯司に気がつく。
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