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第4章 少しずつ変わって行く世界
第38話 日本での些細な一幕 その2
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ダンジョン3階。
一司が指定した辺りにいた奴らは、陽気にバーベキューをしていた。
「あいつらじゃない。5階の方だな」
「全く。ダンジョンでバーベキューなんて、危機感がないのよ」
霞が叫ぶ。
「おい霞、それ俺らが言っちゃあ、だめだろ」
一翔が霞に諭すが、
「なによ、私たちは良いのよ。もう」
霞はなぜか、ぷりぷりとご機嫌斜めだ。
今まで気にならなかった些細なことも、人間一度気になりだすと、色々なことが目につき気になる。
その場を後にして5階へと向かう。
走っている本人たちは、駆け足程度でたらたらと流しているスピードだが、普通の人間が全力で走る速度を優に超え、ダンジョンを疾走する。3階から4階へ移動し、さらに5階を目指す。
それを、たまたま通りがかり。目撃した駆除従事者達。
「おい、あれなんだ?」
「ばか、目を合わすな。あれは神崎さんの所の若い奴らだ」
「あれが? 高校生じゃないのか。 制服を着ているぞ?」
「ばか、目が合って向こうの機嫌が悪いと、なぜかこっちが逮捕されるんだ。見えないふりをしろ。それにあいつら、人間じゃ無いからな。気をつけろ!!」
「人間じゃない? 一体何が?」
「気にするな。急いでいるということは、要救助者でも出たんだろう。あいつら、今日は居ないようだが…… 特に親玉の白い髪をしたのが神崎で、猫と犬を連れている。あいつは、とんでもなくやばい」
「はい? なんで…… 猫と犬を? ダンジョンで散歩でもさせているのか?」
「それも含めて、その場で遭遇したら見るな。逃げろ。あいつらの周りに行くと、強力な魔物も勝手に消滅するくらいにやばいんだ」
「おう。そうか、わかったよ。そんなに、よだれまで垂らして目を血走らせて大丈夫か? お前がそこまで言うなら、相当なんだろうな」
実はこの男。以前の、ダンジョンカツアゲ事件で捕まった。
事情聴取後。よせばいいのに仕返しに行って、松沼母にボコられる。
そして病院から退院後、執行猶予となる。
懲りずに一司たちに仕返しをしようと考え、のこのことダンジョンへついて行く。
そしてそこで巻き起こされる、ばかばかしい殲滅シーンを見て、心に傷を負った悲しい男である。その異常な状況を見た後、泣きながらダンジョンから出て家へと帰り、布団から3日ほど出られなかったとか。
「あー対象が、あいつらと言うだけで面倒臭い」
と走りながら、一翔がぼやく。
「一司さん。ゲートをくれないかな」
「ゲートはなあ。よっぽどじゃないと、くれないと思うぞ。美月さんも持っていないし」
芳雄がつぶやいた瞬間。再び皆が反応する。
「「「いや、あの人に持たせちゃ、ダメだろ」」」
理由は分かるが、皆の声が揃った。思わず笑いが皆から出る。
そんな、のんきな話をしながら、5階に到着。
「そう言えば、1直線に来られたけれど、誰かダンジョンにアクセスできたの?」
霞がそう問いかけるが、
「いや、なんとなく空気の流れ? いや、魔素の流れの濃い方に来ているだけ」
霞以外が、納得する。
「なんだか、釈然としない」
「まあ、もう少しすれば、分かるようになるんじゃないか?」
一翔があたふたと、フォローをする。
「どこだ? 思ったより時間が掛かったから、移動をしたのか? 面倒くさい奴らだ」
「声が聞こえた。たぶんこっち」
みゆきが、歩き始める。
少しすると、声と言うより罵り合い? ダンジョンで騒ぐとモンスターが来るぞ。
「あんたたちが、大丈夫って言うから来たのに。何よこれ。モンスターから逃げ回って、訳も分からないうちにこんな所まで来て、今どこにいるのか、分からないですって。どうするのよ」
「ああ、あれだな。自分たちで迷ったと、宣伝しているからな」
「そうだろうな。一翔、見知った顔が居るぞ」
「やっぱり、あの3人。まだつるんでいるのか。それで女の子を巻き込んで、うん? あれ? あの女の子も見たことあるな」
「斎藤さんと、林さんだな。同じクラスにいた子たちだ」
芳雄が、ため息をつきながら、答える。
一翔は思い出せなかったが、芳雄が言うなら居たんだろう。
「嫌だが、仕事だ。声をかけるか…… おおい。そこの5人。昨日から行方不明の高校生で間違いないか?」
一翔は声をかけてみる。
それを聞き、笑顔でこちらに振り向くが、
「えっなに? 救助? ……高校生じゃん」
さっき叫んでいた、斎藤さんがこっちに気が付くが、芳雄達の姿を見てため息をつく。
「高校生でも、役所からの救助要請で派遣された。特別指定外来種対策会社のスタッフだ。ほぼ素人が、なんで5階まで入って来ているんだ。自殺行為だぞ」
「すいません…… ってあれ? おまえ、貧乏人の少林じゃないか。それにそっちは冬月じゃねえか。学校をやめて、モンスター退治をやっていんのかよ。お前らには、ぴったりだ」
芳雄の脇を、ふっと何かが通り過ぎる。
「昨日から、迷っていた割には元気ね」
そんなセリフと共に「ごん」という音がして、うだうだ言っていた山田が、2mほど吹っ飛ぶ。
「ねえ、芳雄。こいつら殴っていい」
と、みゆきが聞いてくるが、今のは何だ? 殴ったよな。ずいぶん力加減はしているが…… 。
「みゆき。すでに殴ったよな」
呆れて、芳雄がそう言うと、
「えっ、あら本当? 歳かしら? 記憶がないわ」
と言って、けらけらと笑っている。
でも、目が笑っていないから怖いよ。
驚いていたようだが、殴られたはずの山田は、ケガもしていない。殴ると同時に癒しもかけたのか。究極の拷問だな。
ほかの連中は、みゆきの動きすら見えなかったようだ。
一司が指定した辺りにいた奴らは、陽気にバーベキューをしていた。
「あいつらじゃない。5階の方だな」
「全く。ダンジョンでバーベキューなんて、危機感がないのよ」
霞が叫ぶ。
「おい霞、それ俺らが言っちゃあ、だめだろ」
一翔が霞に諭すが、
「なによ、私たちは良いのよ。もう」
霞はなぜか、ぷりぷりとご機嫌斜めだ。
今まで気にならなかった些細なことも、人間一度気になりだすと、色々なことが目につき気になる。
その場を後にして5階へと向かう。
走っている本人たちは、駆け足程度でたらたらと流しているスピードだが、普通の人間が全力で走る速度を優に超え、ダンジョンを疾走する。3階から4階へ移動し、さらに5階を目指す。
それを、たまたま通りがかり。目撃した駆除従事者達。
「おい、あれなんだ?」
「ばか、目を合わすな。あれは神崎さんの所の若い奴らだ」
「あれが? 高校生じゃないのか。 制服を着ているぞ?」
「ばか、目が合って向こうの機嫌が悪いと、なぜかこっちが逮捕されるんだ。見えないふりをしろ。それにあいつら、人間じゃ無いからな。気をつけろ!!」
「人間じゃない? 一体何が?」
「気にするな。急いでいるということは、要救助者でも出たんだろう。あいつら、今日は居ないようだが…… 特に親玉の白い髪をしたのが神崎で、猫と犬を連れている。あいつは、とんでもなくやばい」
「はい? なんで…… 猫と犬を? ダンジョンで散歩でもさせているのか?」
「それも含めて、その場で遭遇したら見るな。逃げろ。あいつらの周りに行くと、強力な魔物も勝手に消滅するくらいにやばいんだ」
「おう。そうか、わかったよ。そんなに、よだれまで垂らして目を血走らせて大丈夫か? お前がそこまで言うなら、相当なんだろうな」
実はこの男。以前の、ダンジョンカツアゲ事件で捕まった。
事情聴取後。よせばいいのに仕返しに行って、松沼母にボコられる。
そして病院から退院後、執行猶予となる。
懲りずに一司たちに仕返しをしようと考え、のこのことダンジョンへついて行く。
そしてそこで巻き起こされる、ばかばかしい殲滅シーンを見て、心に傷を負った悲しい男である。その異常な状況を見た後、泣きながらダンジョンから出て家へと帰り、布団から3日ほど出られなかったとか。
「あー対象が、あいつらと言うだけで面倒臭い」
と走りながら、一翔がぼやく。
「一司さん。ゲートをくれないかな」
「ゲートはなあ。よっぽどじゃないと、くれないと思うぞ。美月さんも持っていないし」
芳雄がつぶやいた瞬間。再び皆が反応する。
「「「いや、あの人に持たせちゃ、ダメだろ」」」
理由は分かるが、皆の声が揃った。思わず笑いが皆から出る。
そんな、のんきな話をしながら、5階に到着。
「そう言えば、1直線に来られたけれど、誰かダンジョンにアクセスできたの?」
霞がそう問いかけるが、
「いや、なんとなく空気の流れ? いや、魔素の流れの濃い方に来ているだけ」
霞以外が、納得する。
「なんだか、釈然としない」
「まあ、もう少しすれば、分かるようになるんじゃないか?」
一翔があたふたと、フォローをする。
「どこだ? 思ったより時間が掛かったから、移動をしたのか? 面倒くさい奴らだ」
「声が聞こえた。たぶんこっち」
みゆきが、歩き始める。
少しすると、声と言うより罵り合い? ダンジョンで騒ぐとモンスターが来るぞ。
「あんたたちが、大丈夫って言うから来たのに。何よこれ。モンスターから逃げ回って、訳も分からないうちにこんな所まで来て、今どこにいるのか、分からないですって。どうするのよ」
「ああ、あれだな。自分たちで迷ったと、宣伝しているからな」
「そうだろうな。一翔、見知った顔が居るぞ」
「やっぱり、あの3人。まだつるんでいるのか。それで女の子を巻き込んで、うん? あれ? あの女の子も見たことあるな」
「斎藤さんと、林さんだな。同じクラスにいた子たちだ」
芳雄が、ため息をつきながら、答える。
一翔は思い出せなかったが、芳雄が言うなら居たんだろう。
「嫌だが、仕事だ。声をかけるか…… おおい。そこの5人。昨日から行方不明の高校生で間違いないか?」
一翔は声をかけてみる。
それを聞き、笑顔でこちらに振り向くが、
「えっなに? 救助? ……高校生じゃん」
さっき叫んでいた、斎藤さんがこっちに気が付くが、芳雄達の姿を見てため息をつく。
「高校生でも、役所からの救助要請で派遣された。特別指定外来種対策会社のスタッフだ。ほぼ素人が、なんで5階まで入って来ているんだ。自殺行為だぞ」
「すいません…… ってあれ? おまえ、貧乏人の少林じゃないか。それにそっちは冬月じゃねえか。学校をやめて、モンスター退治をやっていんのかよ。お前らには、ぴったりだ」
芳雄の脇を、ふっと何かが通り過ぎる。
「昨日から、迷っていた割には元気ね」
そんなセリフと共に「ごん」という音がして、うだうだ言っていた山田が、2mほど吹っ飛ぶ。
「ねえ、芳雄。こいつら殴っていい」
と、みゆきが聞いてくるが、今のは何だ? 殴ったよな。ずいぶん力加減はしているが…… 。
「みゆき。すでに殴ったよな」
呆れて、芳雄がそう言うと、
「えっ、あら本当? 歳かしら? 記憶がないわ」
と言って、けらけらと笑っている。
でも、目が笑っていないから怖いよ。
驚いていたようだが、殴られたはずの山田は、ケガもしていない。殴ると同時に癒しもかけたのか。究極の拷問だな。
ほかの連中は、みゆきの動きすら見えなかったようだ。
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