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第4章 少しずつ変わって行く世界
第13話 美月の苦悩と謎の女子会
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普段からかなりいい加減で、突発的な思い込みで行動をする美月。
だが、彼女はこの所ずっと悩んでいた。
美月は彼女なりに正義があり、それに従い行動をしている。
その行動が、他人に理解されるかどうかは不明だが……。
そんな彼女は、ワインを片手に、フレイヤを捕まえて愚痴っている。
先日、アメリカで見たトカゲは知っている……。人間界では地獄と呼ばれる黒縄の山に住んでいたドラゴンの一族の者。
火炎魔人となり、恥をさらした頃からふと見る記憶。あれは私の前世の記憶。
前世の昔から、私は一司が好きだった。
共に生活をしていたが、ある時争いになった。
我が娘、舎脂(シャチー)を嫁がせようとしたのに…… 儀礼を無視して、わが手から娘をさらっていった一司。
いや、帝釈天。
正義の名のもと、その行いが許せずに我が軍団を引き連れて戦いとなった。
それなのに、今私は…… 記憶がなかったとはいえ、娘の夫を奪ってしまった。
正義を考えると、 ……外れたのは私。でも、舎脂はまだ現れていなかったし、多少は強引だったけれど、一司も受け入れてくれたし。仕方がなかったのよ。
……好きなんだもの。こちらの一夫一婦の考えに固執されると、困ったことになるから、玲己を嗾けてみたけれど手を出さないし、真魚のことは完全に子ども扱い。困ったわ。
〈……どうしたらいいと思う〉
〈にゃ。そんなことを私に聞くにゃ。一司の記憶が戻ったら、聞いてみればいいにゃ〉
〈どうやったら、記憶が戻るんだろう。理を3つも持っているのに、戻る気配もないみたいよ〉
〈誰かに封じられるような者ではないから、転生時の事故か自ら封印じゃないか。それか何かを起こして、よっぽどの上位の者が手を下したかにゃ〉
〈そんな話は、無かったでしょう。彼は、上位神の信用も厚かったし〉
〈じゃあ事故じゃないのかにゃ〉
〈じゃあどうすれば、記憶が戻るのよ〉
〈……そんなに、慌てなくてもいいじゃない。だんだん腹が立ってきたわ〉
〈フレイヤ、口調がセクメトに戻っているわよ。死になさいビシとか言って。懐かしい〉
〈やめてくれるかしら。そんな事をしたおかげで、すごく怖がられてずいぶん長い事一人ぼっちだったの。今の方が楽しくて。
もう…… 一人はうんざりなのよ〉
〈そういえば、そろそろ人化できるでしょう。付き合いなさいよ〉
〈魔石でいいわよ。フェンはどう?〉
〈あの子、小さかったけど。ずいぶん前か。フェンどこなの? こっちへいらっしゃい〉
〈……フレイヤぁ〉
そう言いながら、フェンが足取り重くやって来る。
〈人化しなさいよ〉
素直に人化するフェン。姿は14~15歳になっていた。
〈まだちょっと幼いけれど、年なんて2年もすれば成人でしょ〉
〈犬じゃない。一緒にしないで〉
そう言いながらも氷でグラスを作る。
どぼどぼと、注がれるワイン。
〈あなたも、どうすればいいのか考えなさいよ〉
フェンはちょっと考えた後、恐る恐る答える。
〈上位の者に、相談をしてみたらどうですか?〉
〈向こうに行かなきゃいけないじゃない。どうやって行くのよ? 空間を超えるには転移ポートを使わないといけないわよ。あっ、まだ昔のがあるかしら?〉
〈場所はいくつかある。使えるかどうかは不明だけどね〉
フレイヤが、魔石をからからと口の中で転がしながら、つぶやく。
フェンが、目ざとく見つけ、つまみ代わりに魔石を口に放り込む。
〈あっ、この馬鹿犬。私の魔石を取ったわね。一度死んでみるかい〉
フレイヤのセリフを聞いた後、フェンの髪の毛が立ち上がる。
〈やめてくださいよ、まだ防げないんですから〉
〈魔石位良いじゃない。ほら、これあげるから喧嘩をしない〉
そして、こんもりと魔石を出した後、またぐびぐびとワインを飲み始める美月。
「はー、どうしよう。一司ったら変な所で真面目なんだから。少しくらい周りに手を出せばいいじゃない。二股三股くらい、男の甲斐性とか言って開き直ってくれないかしら?」
そう言って美月は愚痴る。
〈アスラ声に出てる〉
フレイヤにそう言われて、慌てて口を押える。
〈真魚は駄目だが、玲己なら一司の背中をちょっと押せば行けるんじゃないのか、奴も、今は人間としての性に引きずられておるようだからな〉
〈そうかしら? 背中を押してみようかしら? 少しもやもやするけれどそれしかないか…… 浮気させるように頑張ろう〉
それにしても、
「はぁー」
〈一司に説明しても、駄目かしら?〉
〈記憶が無ければ、何言っているんだこいつと、思われるだけじゃないかしらね〉
〈そうよねぇ〉
そう言いながら、フレイヤの口にワインのボトルを突き刺す。
「ぐっ。うごぉ」
「あら、空いちゃったわ」
亜空間収納から、新しいボトルを取り出す。そして、どぼどぼと自分のグラスへワインを注ぐ。ついでに、フェンのグラスへも。
人化した二人は、丸裸で服を着ていない。
こうしてそんなシュールな光景で、深夜に謎の宴会。
いや怪しい女子会は、開催された。
当然、一司をはじめ、知るものは誰も居ない。
だが、彼女はこの所ずっと悩んでいた。
美月は彼女なりに正義があり、それに従い行動をしている。
その行動が、他人に理解されるかどうかは不明だが……。
そんな彼女は、ワインを片手に、フレイヤを捕まえて愚痴っている。
先日、アメリカで見たトカゲは知っている……。人間界では地獄と呼ばれる黒縄の山に住んでいたドラゴンの一族の者。
火炎魔人となり、恥をさらした頃からふと見る記憶。あれは私の前世の記憶。
前世の昔から、私は一司が好きだった。
共に生活をしていたが、ある時争いになった。
我が娘、舎脂(シャチー)を嫁がせようとしたのに…… 儀礼を無視して、わが手から娘をさらっていった一司。
いや、帝釈天。
正義の名のもと、その行いが許せずに我が軍団を引き連れて戦いとなった。
それなのに、今私は…… 記憶がなかったとはいえ、娘の夫を奪ってしまった。
正義を考えると、 ……外れたのは私。でも、舎脂はまだ現れていなかったし、多少は強引だったけれど、一司も受け入れてくれたし。仕方がなかったのよ。
……好きなんだもの。こちらの一夫一婦の考えに固執されると、困ったことになるから、玲己を嗾けてみたけれど手を出さないし、真魚のことは完全に子ども扱い。困ったわ。
〈……どうしたらいいと思う〉
〈にゃ。そんなことを私に聞くにゃ。一司の記憶が戻ったら、聞いてみればいいにゃ〉
〈どうやったら、記憶が戻るんだろう。理を3つも持っているのに、戻る気配もないみたいよ〉
〈誰かに封じられるような者ではないから、転生時の事故か自ら封印じゃないか。それか何かを起こして、よっぽどの上位の者が手を下したかにゃ〉
〈そんな話は、無かったでしょう。彼は、上位神の信用も厚かったし〉
〈じゃあ事故じゃないのかにゃ〉
〈じゃあどうすれば、記憶が戻るのよ〉
〈……そんなに、慌てなくてもいいじゃない。だんだん腹が立ってきたわ〉
〈フレイヤ、口調がセクメトに戻っているわよ。死になさいビシとか言って。懐かしい〉
〈やめてくれるかしら。そんな事をしたおかげで、すごく怖がられてずいぶん長い事一人ぼっちだったの。今の方が楽しくて。
もう…… 一人はうんざりなのよ〉
〈そういえば、そろそろ人化できるでしょう。付き合いなさいよ〉
〈魔石でいいわよ。フェンはどう?〉
〈あの子、小さかったけど。ずいぶん前か。フェンどこなの? こっちへいらっしゃい〉
〈……フレイヤぁ〉
そう言いながら、フェンが足取り重くやって来る。
〈人化しなさいよ〉
素直に人化するフェン。姿は14~15歳になっていた。
〈まだちょっと幼いけれど、年なんて2年もすれば成人でしょ〉
〈犬じゃない。一緒にしないで〉
そう言いながらも氷でグラスを作る。
どぼどぼと、注がれるワイン。
〈あなたも、どうすればいいのか考えなさいよ〉
フェンはちょっと考えた後、恐る恐る答える。
〈上位の者に、相談をしてみたらどうですか?〉
〈向こうに行かなきゃいけないじゃない。どうやって行くのよ? 空間を超えるには転移ポートを使わないといけないわよ。あっ、まだ昔のがあるかしら?〉
〈場所はいくつかある。使えるかどうかは不明だけどね〉
フレイヤが、魔石をからからと口の中で転がしながら、つぶやく。
フェンが、目ざとく見つけ、つまみ代わりに魔石を口に放り込む。
〈あっ、この馬鹿犬。私の魔石を取ったわね。一度死んでみるかい〉
フレイヤのセリフを聞いた後、フェンの髪の毛が立ち上がる。
〈やめてくださいよ、まだ防げないんですから〉
〈魔石位良いじゃない。ほら、これあげるから喧嘩をしない〉
そして、こんもりと魔石を出した後、またぐびぐびとワインを飲み始める美月。
「はー、どうしよう。一司ったら変な所で真面目なんだから。少しくらい周りに手を出せばいいじゃない。二股三股くらい、男の甲斐性とか言って開き直ってくれないかしら?」
そう言って美月は愚痴る。
〈アスラ声に出てる〉
フレイヤにそう言われて、慌てて口を押える。
〈真魚は駄目だが、玲己なら一司の背中をちょっと押せば行けるんじゃないのか、奴も、今は人間としての性に引きずられておるようだからな〉
〈そうかしら? 背中を押してみようかしら? 少しもやもやするけれどそれしかないか…… 浮気させるように頑張ろう〉
それにしても、
「はぁー」
〈一司に説明しても、駄目かしら?〉
〈記憶が無ければ、何言っているんだこいつと、思われるだけじゃないかしらね〉
〈そうよねぇ〉
そう言いながら、フレイヤの口にワインのボトルを突き刺す。
「ぐっ。うごぉ」
「あら、空いちゃったわ」
亜空間収納から、新しいボトルを取り出す。そして、どぼどぼと自分のグラスへワインを注ぐ。ついでに、フェンのグラスへも。
人化した二人は、丸裸で服を着ていない。
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