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第2章 魔法の使える世界

第25話 新生活ふたたび

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「おう、おはよう」
「あれ社長どうしたんですか?」
「バカは二日酔いで死んでいる」
 必然的に、俺が朝飯を作る。

「朝飯簡単な物でいいな。ご飯とみそ汁。千切りキャベツに目玉焼き。厚切りベーコンと玉ねぎの炒めたのにコーン乗せ。それと、もやしがあったので、おひたしにした」

「いや十分です。この味噌汁……。 豆腐にジャガイモ。玉ねぎに小口切りのネギ。人参とワカメ。具沢山ですね」
 芳雄がみそ汁の椀を、覗きながら報告をして来る。
「いや最初なあ。みそ汁だけで、おかずをすまそうとしたんだ。それで色々ぶち込んだ。みそ味のプチ鍋だと思って。まあ食える物しか入れていない、食え」
 そう言いながら、豚肉を加えれば、豚汁もどきになったのか? そう思い、豚小間を湯煎し始める。えーと大根は無いのか? 残念。

「おはようございます」
「おう、おはよう。真魚も壮二も食え。そう言えば、すまんな。中等部の転入も芳雄に合わせると、いきなりテストだって?」

「大丈夫です。どうせ前の学校も来週からでしたし」
「そうか? まあ中学校なんか、どこも内容は一緒だろう。それと中学生って小遣いいくら位なんだ? 調べると一位は3000円らしいけど」
「えっ? 今までもらったことがないので。わかりません」

「そうか、じゃあ2人とも月3000円にしておこう。学校や私物で必要な物があるときは、そのつど渡す。それで、とりあえず行ってみよう」
 3千円ずつ、2人に渡す。
「「ありがとうございます」」
 2人が、金を直接ポケットに入れる。
「先に財布が要るな。どこかで買え」
 もう3千円ずつ渡す。
「「ありがとうございます」」

 すると、芳雄がそっと手を上げ、
「社長、高校生は5千円くらいです」
 などと言ってくる。
「馬鹿野郎、お前は仕事しているじゃないか。前回調子に乗って、臨時給与を出して、俺は怒られたんだ、給料日まで待て」
 そうだよ、先生にぶちぶちと怒られたんだよ。
 ことあるごとに、嫌味を言われるし。
「ちぇ」
 うん?
「うーん?なんだぁ?」
 そう言って、芳雄をにらむ。
「何でもないです」

 

 結局、美月が起きてきたのは、10時過ぎだった。
「……おはよう」
「おう、なんか食うか?」
「うーん、お味噌汁ほしい」
「おう」

 そう答えて、に味噌汁を入れて渡す。
「あの…… お味噌汁」
「うん。みそ汁だ」

「筑前煮でもないのね」
 箸でかき混ぜながら、美月がぼやく。
「ああそうか、何かに似ていると思ったが。すでに豚肉が入っているが、鶏肉とこんにゃくを足そうか?」
「……いえ、いいわ」

 グダグダしている美月に、トイレや風呂、台所のカタログを見せる。
「どれがいい?」

「え~、いまぁ、見ないとダメ?」
「見ないとダメ。メインで使うのはお前じゃないのか? 使わないなら勝手に決めるが?」
「……う~ん。きめる。でもちょっと待って」

「かなしいなあ。僕は君のためにこうして家を構え、内装や設備を君の希望に沿わせようと……。 それなのに君は、僕のことを信じず。勝手に酒を食らって二日酔いなんて……。 そうは思わないかね、美月さん」
 俺はよよよという感じで、科を作り(しなをつくり)涙をふく真似をする。

 すると、美月は眉間にしわを寄せて、
「……あ~。すっごくうれしいけれど、すっごくうっとしい」
 などと宣う。

「うっとうしい? きみ、そりゃあまた、ずいぶんな暴言だねぇ。ぼかぁ悲しいよ」
「う~、微妙に大〇洋が入ってきているのが、余計にくるわ」
 こめかみを、ぐりぐりと押しながら美月がぼやく。
「なんだぃ。なにか気になるのかぃ?」

「今二日酔いでね。体調がね……  よくないの」
「そうかあ。そりゃーあ、大変だ……。 なんで、浄化魔法を使わずに、人に文句を訴えているのか知らないけれど、それじゃあごゆっくり」
 それだけ言うと、俺はダイニングを出ていく。
 残された美月は、こめかみぐりぐりをしながら理解したようだ。
「浄化魔法……? あっ」
 浄化魔法で、毒物も浄化できる。
 当然アルコールも、二日酔いの原因物質であるアセトアルデヒドもだ。


 俺はちょっとむきになっていた。浄化魔法をガンガンに効かせながら、トイレをいじっているとトイレの床や壁に謎の結晶体? が作られていた。なんじゃこりゃ? 見た感じはガラス質だが白い。部屋全部にホーローを引いた感じになっていた。

 ダンジョンでフェンリルとじゃれていたが、引っぺがしてトイレの壁をフレイヤ先生に見せる。すると聖魔法の魔結晶がコーティングされていたらしい。まだ、この周辺の魔素濃度では作れないはずなので、一帯の魔素が多分消滅したんじゃないかと言われた。思ったより俺は気が立っていたらしい? 何に? 

 ちなみに、フレイヤさんの体は魔素で構成されているため、この結晶はよくないもののようだ。触れると体が崩れるらしい。トイレを見せた瞬間。〈何を作っているのあなたはぁ〉「ふぎゃぁぁ」と言って、全身の毛が立ち上がって、まん丸になった状態で、すごい勢いで後ずさった。当然俺は、モフモフして楽しんだ。



 月にて
 なんだ、魔素濃度の警報が鳴っている。順調に20%近くまで上昇していたものが一気に3%ほど下がっている。

 大規模な魔法戦争でもしなければ、こんな消耗の仕方はしないはずだ。それともこの前まで全く魔法が使えなかった奴らが、いきなり何か召喚か創造でもしたのか? でもそれは魔王か神の御業となってしまう。

 そんな馬鹿な……。 もしかして身体更新したばかりで、管理者を巻き込んだ? 誰かが転送された? ……いやいや。そんな冗談みたいなこと、あるわけがない。計測器からのシグナルを、魔素ゲージが受信ミスでもした方がまだ信じられる。

 ……きっと、そうに違いない。

 計画は順調だ、ミスなどあってたまるものか。
 そう言ってコバルト君は、この事実を見なかったことにした。



 あの後、風呂というか浴室も、魔結晶でコーティングをした。
 聖魔法の魔結晶コーティングは汚れが付かず、掃除の必要がない。非常に便利な建材? と言うことが分かった。

 あの後も、美月が顔を出さないために、俺が勝手に決めた。
 共用のダイニングとリビングは、みんなで集まって決めよう。

 トイレは狭かったから、少し壁を作り直した。その為少し手間がかかり、トイレと風呂場、洗面台と洗濯機の排水パンの設置とかを終わらせて、床を張るともう夕方になってしまった。

 途中で一度、子供たちが帰ってきた。
 だが、俺が作業中の為、帰宅の挨拶だけしてダンジョン側に帰ったようだ。

 道具や建材を収納して、ちょっと疲れたので、ダンジョン側に戻る。
 すると、みんなから「お疲れ様」と声がかかる。
 おもわず、ジーンときて、こういうのもいいなと感慨深く想う。

 ふと、テーブルを見ると、向こうで俺が道具を使っていたせいで、こちら側で夕飯を用意したのだろうが、何かを意図するような、とても滋養強壮に富んだ夕食のおかずが並んでいた。

 それを見ていると、美月がすすすと寄ってきて、
「うふ。一司お疲れ様。お風呂入ってくる? それともご飯が先?」
 などと、満面の笑みで聞いて来る。

「ああ…… 風呂に行ってくる」
「わかったわ。うふ。ごゆっくり。ふふっ」

 ……なんだ。ふふっってなんだ? どこかで警告音が鳴っている気がする。
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