上 下
10 / 167
第1章 始まりと魔法世界への準備

第10話 個人ダンジョンと試行

しおりを挟む
 ダンジョンをどこに作るか、作らないのか? それが問題だ。

 簡単そうだけど、大問題だな? 

 個人で土地でもあれば簡単なんだが……。
 考えをまとめながら風呂から出てくると、かわいいフレイヤに並んで、かわいくない猫もどきが悶えていた……。

 カチューシャの耳と尻尾……。
 結局付けたのか。フレイヤに魔石をあげてなでる。
 ごろごろと鳴き甘えてくる……。
 うーんかわいいやつめ。

 おなかをなでなですると、ぺろぺろと人の手をなめてくる、頭をガシガシとしながら耳の付け根をすりすりする、プルプルと頭を振り頭をすり寄せてくる。

 うーん心が落ち着く、やっぱりこういう時間は必要だな。

 冷蔵庫から、ビールを出してグラスに注ぐ、テーブルの上に結構でかい有名通販会社の箱がある。なんだよこれ、邪魔だな。
 中の明細を見ると……なんだ? 神崎美月ってだれだ。

 ぶつぶつ言いながら明細を見ると、さっきの耳付きカチューシャや尻尾。そのほかにもとても人に言えないような、道具やおもちゃが購入されていた……。

 あれだけこわいとかなんだと言って、結局自分でそれ用の趣味の物を買っているんじゃないか。偽名まで使って俺の部屋宛で……。 
 間違って近所に配達されたら表を歩けなくなるぞ……。

 よし分かった、見なかったことにして、そっと蓋を閉じクローゼットに押し込んだ。

 左手でフレイヤを撫でながら、ゆったりとビールを飲む。
 スマホで地図を眺め、なるべく目立たず人の来ない場所…… でも、それだと逆に目立つのか。それに平らな地面に作ると、あのボスモンスターのように水没は嫌だしな…… 山の法面が一番いいが…… うん? ダンジョンは入り口だけで、中は別空間だよな。じゃなければ、地下数十階なんて地下鉄や下水道に突きあたるはずだし……。

 このマンションは、賃貸だから壁はまずい…… 空間に直接、こんな感じか? ダンジョンマスターの能力を読み取りながら試行錯誤をする。ああ空間でも、やっぱり創れるが、地球の自転もあるし無駄な魔素を消費すると……。

 何かいい物がないかと部屋を見回し、目の端に入ったじたばたしているのは無視してベランダに向かう。そこにある、ベランダに出るドアが目についた。ふと思いつく。ドアノブを回せば外に出られるし、そのまま突っ込めばダンジョンで良いかな。

 早速、ダンジョンを作製する座標を、ドア表面にして擬装用の魔法をかける。 中に入り、広さを8畳程度にして、壁が土なのはいやだからガラス質の白。全面白だと落ち着かんな。物を入れれば大丈夫か? 天井は光るようにして、スイッチは能力で可能と、床暖房は…… できるな。

 これ結構快適だな。ワンルームに引っ越して、ダンジョンで拡張するのもありだな。

 室温もいじれるし冷蔵庫ももういらんな。こっちにユニットバスじゃない、でっかいふろ場も作って、ダンジョン温泉の出来上がり。 水の排水は…… 謎空間へ捨てられるじゃん。あいつ何でおぼれていたんだ? うん? ああ、この水は元が魔素なのか。同じように飲めるし使えるけど、物質の根源が違う。普通の水を魔素に変換できないことは無いが、そのための魔素が余計に必要で効率が悪いと……。

 なるほどねぇ。さらにダンジョン内に机は作ったが、椅子は焼き物のベンチの様で座り心地が悪い。持ち込みだな。
 それと空間が違うためか、無線LANが使えない。
 無線ルーターこの部屋まで持ってくれば大丈夫かな? コンセントも欲しいし明日ちょっと買い物に行って…… もういい加減に魔石の買取もしてもらわないと、いっぺんに行くと目立つし税務署も怖いな。

 それと、ラノベのダンジョンのボス部屋ようには、扉がきれいに作れない。木のようなものを俺がきれいに想像できないのが悪いとは思うが、蝶番もなんとなくイメージが甘いようで、きれいに開け閉めができない。
 ホームセンターにでも行って、みてくるか買ってきた方が早いかもしれない。
 後日、ある程度隙間がないと開かないことを発見。 扉は円軌道で動く、ぴったり合わせるとドアの角とドア枠が干渉するため開かない。なんということでしょう。今度DIYの本を買おう。

 そうだ、
「クリエイト」
 プロセスプレートが目の前に現れた、よし使えるな。
 当初の目的を忘れるところだった。

 よしよし、その時。少し俺は浮かれていて、大事なことを忘れていた、ダンジョンを作り始めてゆうに3時間以上……。

 ダンジョンから出て、すぐに異変に気がついた……。 ああ電波が通じないからな……。
 蒼い顔をして、家の中をゾンビ状態で徘徊している美月を発見。
 さすがに悪いと思った俺は、創ったダンジョンに入場許可を出した。入口で空間が違うため、越える許可が設定できる。

 ただまあ、こうなるよね。
「ねえ 一司くん、普通の人ってこんな物は作れないよね」
「ああまあそうだな……」

「説明はしてもらえるのかな?」
「お前に説明すると、ぽろっと言いふらしそうだからいやだ」
 ちょっとにらむ。

 びくっとして、覚えがあるのか目が泳ぎ出す美月。
「そりゃ少しはそんな所はあるけど、大事なことは漏らさないよ~」
「いや、その全力のバタフライみたいに、盛大に泳いでいる眼は全然信用できない」
「どんな目よ」
「そんな目だ」

 よよよ、と泣き崩れるふりをするが、
「はぁ~ 信用がないなぁ~」チラッ
「悲しいなぁ~」チラッ
 とまあ、信用できない。

「自分の欲求だけで知りたがっているようだが、これが知られると命の危険があるって分かっているか?」
「まさかぁ」

 お気楽そうな返事に、脅しをかける。
「俺の力を使わせるために、お前を誘拐するなんて当然考えられるだろう」
「そんなにすごい力なの?」
 怪訝そうに、聞いてくる。

「あの部屋を見たはずのお前が想像? とか理解できないような力だ。そんなにすごい物なの。だから詳細は教えない。知らなければしゃべれないだろう」
「そりゃそうだけど…… けち」
 と言ってふくれっ面をする。

「基本的なところで、自分が抜けているのを自覚しろ」
「ひどっ、一司くん嫌い」

 俺は、にへっと笑い、腕を横に上げる。
「そうか、玄関はあっちだ……」
「いや…… 一司くん大好き…… あっこんな時間、何か食べたいものある?」
 あたふたと、ごまかしながら動き出すが、いい加減服を着て尻尾外せよ。広がって戻らなくなるぞ。

「いやほんと。下手すると世界中のダンジョン創ったのが、俺だなんて勘違い認定されるような力だからな……」
 台所に向かっていく美月に、俺はぼそっとつぶやいた……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

スローライフとは何なのか? のんびり建国記

久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。 ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。 だけどまあ、そんな事は夢の夢。 現実は、そんな考えを許してくれなかった。 三日と置かず、騒動は降ってくる。 基本は、いちゃこらファンタジーの予定。 そんな感じで、進みます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...