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第1章 始まりと魔法世界への準備

第1話 その日は突然やって来た

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 俺は寝ていた。
 夜だから当然だと言いたいが、遡る事3日前。

 リモートだから出勤時間も必要ないし○○日までには、間に合うよねっと。
 プロマネからの軽い感じで書かれた、ふざけた重要メールを受け取った。

 担当サブシステムのソースと変更概要。
 メールには、サーバのアドレスとユーザーネームにパスワード…… それを乱数パスワードを使った圧縮ファイルの添付でもなく、メールに書いて送ってきた。 
 ……あいつ、セキュリティって言う言葉知っているのか?

 それから3日…… コンパイルに少し時間がかかり焦ったが、何とかアップした。
 よし寝よう、それが数時間前の出来事。

 寝ていると、体をゆすられているのに気が付いた。
 今は、建物が盛大に揺れているようだ。
 地震か? 
 やかましい。俺は今、眠いんだ……。
 起きたら、相手をしてやる。


 そんなことを思っていると、揺れは収まったようだが、今度は救急車かパトカーが走り回ってサイレンがやかましい。
 俺は布団をかぶる。

 ようやく静かになり、惰眠をむさぼる……。



 ふと目を覚ますと2時か…… 当然午後だよな……。
 むくっと、起き上がり、固まった体を伸ばしながら冷蔵庫に向かう。
 常備してあるスポーツドリンクを、一気に半分ほど飲み、スマホを取り出す。

 あん? キャリアが消えている。
 また障害か?
 キャリアを変えるぞ。そうぼやきながら、再びベッドに向かう。
 寝転がりながら、日課のWEBニュースをいくつかはしごをする。


 地震は場所により震度5~6の規模で、日本だけではなく世界各地で起こった。
 日本では大した被害は出なかったが、古い建築物の残るヨーロッパや、普段、地震の起こらないニューヨークをはじめとする、その他の国での被害は目を覆うような物であったらしい。

 さらに、追い打ちをかける現象が発生していた。
 はぁ? 地震だけじゃなかったのか?
 なんだ? モンスターが出現。
 警官・自衛隊役に立たず壊滅。 ……何だ、コレ? 今は秋だけど4月1日か?
 それとも、地震便乗のフェイクニュースか?

 ベッドから起き上がり窓へと向かう。
 カーテンをそっと少し開けて、外を覗く。
 ……ベランダが邪魔で、外が見えねぇ。

 ちっ、舌打ちをしながら静かにベランダへと出る。
 姿勢を低くして、ベランダの壁にある隙間から外の様子をうかがう。
 町のいたる所が燃えていた ……まじか。



 さらに見回すと、向こうの大通りを避難かな? ぞろぞろ移動している人たちがいた。
 向こうって何かあったか? マップで検索すると学校か…… ああ壁があるからか。

 モンスターは大丈夫なのかね? あれだけ大勢がプラプラ歩いていて、大丈夫なら問題無いんだろう。
 さて、これから俺はどうするか?
 モンスターを倒すとレベルアップとかするのかな? 原理は思いつかないけれど。

 部屋に戻り、考える。

 電気が来ているいまのうちに水の確保だ。丁度いいことに、先週ゴミに出し損ねたペットボトルがある。


 引っ張り出して洗う。
 そしてほんとうは良くないが、熱めのお湯をペットボトルの口まできっちり詰めて蓋を固く締める。

 それが終わると、風呂もきっちり洗って、目一杯熱めのお湯を、溢れるまで張ってラップで蓋をした。こんなものは気休めで、すぐダメになるだろうが、電気が来ているならまだ入れ替えはできるはずだ。
 このマンションは屋上に貯水タンクを持っているのが幸いか。

 一通りの作業をした後。
 ネットが生きているうちに、サバイバルに役に立ちそうな情報を、プリンターで打ち出していく。 
 もっと平時に、役に立つ本を買っておけば良かった。
 そうか。通販はだめでも、本屋ならありそうだな。

 慌てて、俺は大きめのザックを背負い、覚えのある本屋へと向かう。
 だが、シャッターが下りている。
 裏は…… ちっ、鍵が締まっている。

 そうなると、後は、大型のショッピングセンターか…… 本屋が減ったせいで、こういう時に不便だぜ。

 ショッピングセンターに到着すると、あれ? 通常通り営業しているのか。みんなすごい勢いで、山のような品物を積んだカートを押して、駐車場を走っている。
 カートの中で揺れている物を見て、冷凍物とか電気が止まったら…… などといらぬ心配をするが、ああまあ、その時はその時か。手軽に食えるものは正義だよな。
 
 店に近づいて行くと、みんなが殺気だっている。
こわっ。これは先に2階へと移動して、本屋と100均かな。おおっ。こっちも1階よりはましだがいつもより人は多い。
 本屋へ行き。必要そうな本をカゴへ入れて、レジに持って行く。あとは、100均と途中で思い出してアウトドアショップへ向かう。
 後必要なのは、園芸屋さんかな?


 その頃、月表面……。
「どうだ、惑星改造の進み具合は……」

「現地人は、体力的には竜人の10歳程度となっています。魔法の使用は皆無。もともと魔素がないので魔法も存在していなかったと思われます」
「ただその分、妙な道具を使用して空も飛んでいるようです」

「ほう、魔導士レベルか?」
「いえ、音の早さも超えています」
「賢者レベルか……」
「それは少し、面倒な事になりそうだな……」

「まあ、我々が住めるように魔素を拡散するためだ。ダンジョンを多数製作しておけ。それと、星の周りのごみを片付けておけ。侵入するときにぶつかると、速度が速度だ。シャレにもならん」

「魔法もないのに、何だこの星は。訳の分からないスピードで走る乗り物や飛行する物。星の外にまで何かを撃ちだしている。まあせっかく見つけた居住可能な星だ…… 魔素が無かったのが致命的だが、それは時間をかければ何とでもなる」


 この星の惑星開発責任者に任命されたコバルトは、惑星改造が開始され始めた青い星を、縦に割れた虹彩を持つ双眸で静かに見下ろす。
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