僕は弟を救うため、無自覚最強の幼馴染み達と旅に出た。奇跡の実を求めて。そして……

久遠 れんり

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第7章 王国は議会共和制的な何かへ

第71話 王と聖王、現れた精霊王

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 そして驚きは、迎賓館でも続く。

 びしっとした、執事達に迎えられて、宰相が差し出された書類に記入していく。
 政治に疎いアシュアス達が、困った末に考えたもの。

 客のランク付け。
 主賓は、まあ皇帝だろう。
 それは流石に分かるが、お付きや、護衛達。
 その人名と、優先度を書いて貰う。

 それを元に、部屋などを割り振っていく。

 貴賓室には、素晴らしい眺望。そして、護衛や従者の控え室が一緒になっている。
 家族が来ても対応ができるように、ルーム内で個室に分かれている。最上階は、セキュリティーにも気を使い、四エリアに区切られ、物理的には繋がっていない。
 温泉がつき、トイレは水洗。
 冷蔵庫と、ワインセラー。

 伝声管を見て思いつき、開発された魔導具。
 手を当てながら念じれば、対になった魔導具を持った者と念話が通じる。
 一対の魔聖石を使い、創ってみた。
 これにより、この部屋専任の担当者に連絡ができる。

 そして、建物内に階段はあるが、各階行きの転移ポイントが設置されており、それを使って各階が行き来できる。

 そう、その進み方は、帝国などを凌駕する。

「こんな事が、許されるのか? 宰相。帝国は、この世で最も偉大で先進では無かったのか? 世にはびこる蛮族を、統治することで恩恵を与えよと、父上は言っておった。だが、見ろ。調度品。設備。魔導具。何を見ても、我が国の方が遅れているでは無いか……」
 そう言ったまま、皇帝は頭を抱える。


 皇帝は、迎賓館の外観を見たときから言葉を失っていた。

 彫刻が施された建物。
 石だと思うが継ぎ目はなく、窓には水晶板が埋め込まれて、室内に日の光が差し込む。皇帝が水晶板だと思ったが、実は樹脂で作られている。樹の精霊が張り切って作った。
 そして、建物に入れば適温で魔導具により明るい。
 カウンターなどの調度品も重厚で美しく、働く者達の教育も行き届いている。

「お部屋は、五階となっております。こちらへどうぞ」
 荷物は預けて、人間だけが移動していく。
 壁の一角に階数が書かれた小部屋があった。
 エリアブルー。五階と書かれた札がついた小部屋。そこに、案内が入ると、姿が消えてしまう。

「どうぞ。各階への、転移ポートになってございます。お進みください」
 促されて、怖々入ると、目の前が壁から廊下に変わる。
 先ほど消えた者が、こちらへどうぞと促してくる。
「ポート内に人や物があると、魔導具の動作が止まりますので、こちらへお越しください」
「ああ、判った」
 移動をすると、順に宰相達がやってきた。

 名前が呼ばれて、案内が始まる。

 五階は、四ブロックに分かれており、現在ここのエリアを使用するのは我らだけだそうだ。
 部屋の入り口で、各自に青いクリスタルが渡される。
「これが鍵となり、なくすと部屋のドアが開かなくなります。そして、先ほどのポートも、今からはこれをお持ちで無いと使用できなくなりますので、お帰りになるまではお体から離さずにお持ちください。施設利用終了時に回収させていただきますが、紛失されると設備一式交換となりますので、金貨千枚を請求させていただきます。ご承知願います」
「千枚?」
「ええ、ここは、貴賓用の迎賓館。一つでも無くなれば、安全のためにすべてのクリスタルと鍵を交換します。その対価として必要な経費とご理解ください。それではどうぞ、中の設備を説明いたします」

 そこからは、見たことも聞いたこともない物の説明を受ける。
 そして、緊急時用の転移石収納庫。
 火事などの場合は、これを壊し、各自が中にある転移石を持ち手の中で壊すと、避難場所とやらに逃げることができるようだ。

 飲み物や、軽食が常時用意されており、頼めば、手の込んだ料理も頼めるらしいが…… 
「この念話の魔導具で、いつでもこの部屋の担当者に連絡が付くようだ。これは、砦と王城に配置すれば、連絡がいつでも取れるという事ではないか?」
「そうでございますな。それと、転移ポート。あれも危険ですな」
「そうか距離が関係なく、いつでも援軍が送れると。それも敵兵に周りを囲まれていても関係ない」
「そうですな、兵糧も問題にはならず、何時までも籠城が行えます」

 皇帝は笑うしかなかった。
 乾いた笑いが、部屋にこだまする。


 一日おいて、会談の日。
 重厚な扉が開かれ、三十人が座れそうな円卓が置かれた部屋に案内される。

「どうぞ、おくつろぎください」
 そう言って、皇帝たちは入り口から向かい、左手側に案内される。

 その会場。
 奥に一段高い場所があり、そこに立派な椅子がいくつか並んでいる。
 自然木。丸太を一本くりぬき、作った様な見事な椅子。
 背もたれ部分の柱は、蔓草が絡み合うように見えるが、あれも彫刻だろう。
 それにあの大きさ、樹齢は一体何年であろうか?

 そこに、人影が浮かび上がる。
 セイクリッド国側の人間がすっと立ち上がり、正面を向くと頭を下げる。

「よい。楽にしなさい」
 部屋の中に、静かだが、よく通る声が響く。

 そして、女王の背後にまた二人。
 先ほど、女王には礼を取った者達が、なぜだか驚きを持って迎える。

 だが、その答えは、すぐに分かった。
 現れた瞬間から、部屋の空気が変わる。
 目の前にいるのは、生き物として、逆らえない何か。
 きっとドラゴンとかにでも出会い、相対せば我らはこうなるだろう。

「ああ、すまないね」
 彼がそう言うと、空気が少し弛緩する。

「私は、世界を統べる者。精霊王と呼ばれている。そして、この二人は、我が子。人よ。讃えよ。讃えれば、その恩恵を受けることができるだろう。だが、害するならすべての力を引き上げる。心せよ」

 好き勝手を言って、精霊王は姿を消した。二人がただの人では無いことの証明と、人に対する警告だろう。

「先ほど、精霊王から紹介があったが、セイクリッド国、聖王アシュアスだ」
 まだ若いが…… 
 妙な迫力と、この圧。
 彼が上位であることが分かる、精霊王がいなくなっても、場に立ちこめる存在感。
 だが、清浄な空気と妙なエネルギーを感じる。

 そして現れた、精霊達。

「さあ、アウストルギガ帝国皇帝、イヴァン=スチェパーノ殿。話し合いの場は整った。発言をするがいい」
 静かに、アシュアスは皇帝に対して促す。

 悩むことはない。会談前にすべては決まっていた。
「我が国と、同盟を結んでいただきたい。お願いします」
 そう言って、皇帝は頭を垂れる。

 だが……
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