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第7章 王国は議会共和制的な何かへ
第64話 王国の変化
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アウストルギガ帝国だが、フェルナンダ=トルエバ王国には商人も入り込み、帝国の威光をかさに、強引な商売をやっていた。
特に瘴気により汚染されていたときには、穀物すべてに高値が付けられてウハウハ状態だった。
「前回とは、いきなり空気が変わったな」
「ええ。何か国全体が明るくなった」
アウストルギガ帝国のデモン商会。
商隊を引き連れるのは、ボーリーとエチーゴ。
国境のティアー川に架かる橋を越え、旧フェルナンダ=トルエバ王国へと渡ってきた。
デモン商会は元々武器商人だったが、穀物や織物まで販売する物を広げ、大きな店を営業している。
その利益のほとんどは、旧フェルナンダ=トルエバ王国で高く売り、安く仕入れる構図で荒稼ぎをしていた。
「本国の貴族様や、武官と懇意でね。お前さんのせいで、国が滅ぶが良いかね」
そう、それが決まり文句。
特に、瘴気により国内で作物が育たず、穀物生産が止まったときにはひどかった。
そんな彼らだが、いつもの様に橋を渡るが、いきなり止められる。
いつの間にか、立派な関所が建てられ、出入国の管理と商品に対して確認と税の徴収が行われていた。
「なんだ貴様ら、我らはアウストルギガ帝国のデモン商会の者だぞ」
ボーリーが叫ぶと、担当の兵は、なにか帳面を捲る。
「本当に、デモン商会なのか?」
そう聞かれて、腹立たしいが、帝国の商業ギルドが発行している、札を見せる。
「ふむ。本当の様だな。よし、お前達は通れん。帰れ」
「「はっ?」」
軽くそう言われて、はいそうですかと帰るわけにはいけない。
背後の荷台には、くず鉄になった防具や剣を、見栄えだけ修繕した物や、小麦に雑穀や石が混ざった三等の穀物を一等の袋に詰め直した物などが満載している。
帝国に帰ってしまえば、偽装の手間分赤字になってしまう。
「まて、俺達はアウストルギガ帝国の商隊だぞ。それで良いのか?」
「それは先ほど確認した。幾度も言わなくて良い。ジャマだから早く引き返せ」
「なんだと」
エチーゴがそう言ったとき、背中にチクリと槍が刺さる。
槍を突き当てている兵。その目は真剣で、冗談では無さそうだ。
そして、商人として、特に武器商人として長年生業をして来た者として、兵達の装備が目にとまる。
光り輝く槍先には、何か魔法が発動している。
そして、真新しい防具。
フルプレートアーマーでは無く、軽装の革と金属を使ったものだが、どう見ても一級品。
そうしている中、護衛をしていた冒険者が、いい加減じれたらしく手を出してしまう。
「何をうだうだやってんだ。王国の分際で。帝国に逆らうんじゃねえよぉ」
剣を抜いてしまう。
だが、王国兵は棒立ち。
練度が低く、反応が出来ないのか、全く対応する気配がない。
だが、振り出した剣は、兵の手前で止まってしまう。
「手を出したな」
ギロッと睨む。
周りの冒険者達にも、いま何が起こったのか判らない。
「攻撃を受けた、反撃開始」
「おう、ありがてえ」
らしくない返事。
それに、この前までとは、顔つきが違う。
王国内の町で、言い争いになることは当然幾度もあった。だが、憲兵などが来ても、帝国の者だと判れば腰が引け、言い訳をして逃げていた。
それなのに、帝国の者だと判ってもこの態度。
何かがおかしい。
「捕らえるのも面倒だ。川に流せ」
「はい」
見ればこちら側の冒険者達が、全然かなわない。
技量の差ではない。
ただ近寄り、殴りつける。
そして、川へ放り込まれる冒険者達。
王国へ行くのだから、銀級で無くても良いと。安い青銅ランク辺りのならず者だが、そこそこ腕っ節は強い。
それなのに、相手にもなっていない。
攻撃が、届かない。
圧倒的装備の差だ。
「面白いな。一方的な攻撃。王のおかげだ」
「そうだな。女王様になってどうなるかと思ったが、これは良い」
戦闘中に語られる軽口。
「女王だと?」
そう思った瞬間、エチーゴ達も川へ放り込まれる。
橋から水面までは十メートルほどあり、中央山脈からの水は非常に冷たい。
そして流れは、かなり激しい。
他の川とはちがい、真っ直ぐ割れ目のように続いているティアー川。
一気に流されていった。
そんな騒動は、当然デモン商会だけでは無い。
過去、王国内で悪さをしていた商会は、入国禁止リストに名前が並んでいた。
彼らは、もれなく川を流れていく。
大陸の裂け目とも言われるこの川は、一度落ちるとなかなか這い上がれない。
だがまあ、幾人かの商人や冒険者は這い上がり、帝都に戻る。
「何? 王国が変だと?」
それは皇帝の耳に入ることになる。
そして調査に向かった部隊。
橋の対岸に、関所があることを確認する。
今までは、帝国側にしか無かった。
そして、そこに詰める兵達は、変化に対して報告もせず。ぐうたらしていた。
「できたのは、最近でさぁ。なあ皆」
「へい。朝見たら、いきなりできていました」
そんな話をしていると、対岸で騒動が起き、またぽいぽいと商人達が流れていく。
「なんだあれは?」
「最近多いよなあ」
「そうそう。こっちの商人達。ほとんどが川に放り込まれています」
見慣れちまったという感じでのんきに言っているが、調査隊の隊長は呆れる。
「どうして報告をしない?」
「わしらは、向こうから軍でも来れば、報告をしろと聞いています。後は通行料を取るくらい。それ以外は、仕事じゃありませんし」
そう言って、兵達はのほほんとした姿を見せる。
「ええい。役立たずめ」
特に瘴気により汚染されていたときには、穀物すべてに高値が付けられてウハウハ状態だった。
「前回とは、いきなり空気が変わったな」
「ええ。何か国全体が明るくなった」
アウストルギガ帝国のデモン商会。
商隊を引き連れるのは、ボーリーとエチーゴ。
国境のティアー川に架かる橋を越え、旧フェルナンダ=トルエバ王国へと渡ってきた。
デモン商会は元々武器商人だったが、穀物や織物まで販売する物を広げ、大きな店を営業している。
その利益のほとんどは、旧フェルナンダ=トルエバ王国で高く売り、安く仕入れる構図で荒稼ぎをしていた。
「本国の貴族様や、武官と懇意でね。お前さんのせいで、国が滅ぶが良いかね」
そう、それが決まり文句。
特に、瘴気により国内で作物が育たず、穀物生産が止まったときにはひどかった。
そんな彼らだが、いつもの様に橋を渡るが、いきなり止められる。
いつの間にか、立派な関所が建てられ、出入国の管理と商品に対して確認と税の徴収が行われていた。
「なんだ貴様ら、我らはアウストルギガ帝国のデモン商会の者だぞ」
ボーリーが叫ぶと、担当の兵は、なにか帳面を捲る。
「本当に、デモン商会なのか?」
そう聞かれて、腹立たしいが、帝国の商業ギルドが発行している、札を見せる。
「ふむ。本当の様だな。よし、お前達は通れん。帰れ」
「「はっ?」」
軽くそう言われて、はいそうですかと帰るわけにはいけない。
背後の荷台には、くず鉄になった防具や剣を、見栄えだけ修繕した物や、小麦に雑穀や石が混ざった三等の穀物を一等の袋に詰め直した物などが満載している。
帝国に帰ってしまえば、偽装の手間分赤字になってしまう。
「まて、俺達はアウストルギガ帝国の商隊だぞ。それで良いのか?」
「それは先ほど確認した。幾度も言わなくて良い。ジャマだから早く引き返せ」
「なんだと」
エチーゴがそう言ったとき、背中にチクリと槍が刺さる。
槍を突き当てている兵。その目は真剣で、冗談では無さそうだ。
そして、商人として、特に武器商人として長年生業をして来た者として、兵達の装備が目にとまる。
光り輝く槍先には、何か魔法が発動している。
そして、真新しい防具。
フルプレートアーマーでは無く、軽装の革と金属を使ったものだが、どう見ても一級品。
そうしている中、護衛をしていた冒険者が、いい加減じれたらしく手を出してしまう。
「何をうだうだやってんだ。王国の分際で。帝国に逆らうんじゃねえよぉ」
剣を抜いてしまう。
だが、王国兵は棒立ち。
練度が低く、反応が出来ないのか、全く対応する気配がない。
だが、振り出した剣は、兵の手前で止まってしまう。
「手を出したな」
ギロッと睨む。
周りの冒険者達にも、いま何が起こったのか判らない。
「攻撃を受けた、反撃開始」
「おう、ありがてえ」
らしくない返事。
それに、この前までとは、顔つきが違う。
王国内の町で、言い争いになることは当然幾度もあった。だが、憲兵などが来ても、帝国の者だと判れば腰が引け、言い訳をして逃げていた。
それなのに、帝国の者だと判ってもこの態度。
何かがおかしい。
「捕らえるのも面倒だ。川に流せ」
「はい」
見ればこちら側の冒険者達が、全然かなわない。
技量の差ではない。
ただ近寄り、殴りつける。
そして、川へ放り込まれる冒険者達。
王国へ行くのだから、銀級で無くても良いと。安い青銅ランク辺りのならず者だが、そこそこ腕っ節は強い。
それなのに、相手にもなっていない。
攻撃が、届かない。
圧倒的装備の差だ。
「面白いな。一方的な攻撃。王のおかげだ」
「そうだな。女王様になってどうなるかと思ったが、これは良い」
戦闘中に語られる軽口。
「女王だと?」
そう思った瞬間、エチーゴ達も川へ放り込まれる。
橋から水面までは十メートルほどあり、中央山脈からの水は非常に冷たい。
そして流れは、かなり激しい。
他の川とはちがい、真っ直ぐ割れ目のように続いているティアー川。
一気に流されていった。
そんな騒動は、当然デモン商会だけでは無い。
過去、王国内で悪さをしていた商会は、入国禁止リストに名前が並んでいた。
彼らは、もれなく川を流れていく。
大陸の裂け目とも言われるこの川は、一度落ちるとなかなか這い上がれない。
だがまあ、幾人かの商人や冒険者は這い上がり、帝都に戻る。
「何? 王国が変だと?」
それは皇帝の耳に入ることになる。
そして調査に向かった部隊。
橋の対岸に、関所があることを確認する。
今までは、帝国側にしか無かった。
そして、そこに詰める兵達は、変化に対して報告もせず。ぐうたらしていた。
「できたのは、最近でさぁ。なあ皆」
「へい。朝見たら、いきなりできていました」
そんな話をしていると、対岸で騒動が起き、またぽいぽいと商人達が流れていく。
「なんだあれは?」
「最近多いよなあ」
「そうそう。こっちの商人達。ほとんどが川に放り込まれています」
見慣れちまったという感じでのんきに言っているが、調査隊の隊長は呆れる。
「どうして報告をしない?」
「わしらは、向こうから軍でも来れば、報告をしろと聞いています。後は通行料を取るくらい。それ以外は、仕事じゃありませんし」
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