僕は弟を救うため、無自覚最強の幼馴染み達と旅に出た。奇跡の実を求めて。そして……

久遠 れんり

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第7章 王国は議会共和制的な何かへ

第62話 色々と根回し??

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 そして、その演出後。

 城内へ戻り、貴族議会員の選出と調査を兵に依頼する。
 貴族の票を集めて貰うときに、領民や周辺貴族からの評価も書き出して貰う。

 そう、貴族議会員の選出。表向きは貴族の積極的な王国運営への参加だが、決定権がある以上、利権も大きくなる。

 この調査は、腐った奴らの排除も兼ねている。

 そうしてその間に、戦争準備も始める。

 教会は、苦情と共に使者を送ってくるだけなので、別に良い。
 だが問題は、正式には属国とはなっていないが、事実上の宗主国だったアウストルギガ帝国が黙っているわけはない。

「うぬぬ。連絡やこちらに窺いもせず、新王即位だと? そんなもの認めぬ」
 きっと、こうなるだろう。

 国としては、ゴタゴタが収まれば、周囲国に宣言をしてパーティーでも開き、周囲国の王達を招く。そう周辺に、国として正式に認めて貰う必要がある。

 当然だが、アウストルギガ帝国にも案内を出す。
 何も知らなかったようにしらっと。

 そうなれば、当然おこる反応は判っているし、あらかじめ対応はしないといけない。

「戦争が終わらないと、落ち着かないな」
「ええ。国賓に危害が及ぶなんていう事になったら」
「巻き込ませて、全面戦争と言うつもりだったんじゃ無いのか?」
 リーポスにしては鋭い。

「実際は、巻き込むんじゃ無く。お披露目ね」
 そう言って、フィアがウィンクをする。

 そう、せっかく各国を招くなら、この国フェルナンダ=トルエバ王国改めセイクリッド国のお披露目と周知を兼ねている。
 政治の形式は、立憲君主制として面倒は議会へ押しつけ、間違った方向へ行ったときだけ聖王が導き、何もしないつもりだった。だが知らない間に国の守護についても、聖王の仕事として書き加えられた。

 現在、アウストルギガ帝国との国境は、中央の山脈から流れ出している川が国境となっている。

 幅五十メートルほどの川で、中央山脈の北側にあるフェルナンダ山地の東側を通り海へと流れ込んでいる。
 高さ十メートル程度川底が低く、少し渓谷のようになっており、国境としては便利だし自然の塹壕として使える。

 国内の農地を復興させるため、精霊達にお願いする。

 するとだ、彼らがまたやったのだよ。
 秘密の開拓村と同じ。

 俺の力が多く残るあの森。
 あそこを中心に地の力が吹き上げる。

 ベルナールおじさんは逃げ帰り、あそこに籠もっているが大丈夫だったのか?
 今あそこには、正式に道が繋がっている。
 旧領主の屋敷は燃えているため、あの城をイルムヒルデ公爵家の館として指定した。
 存在が知れたとき、他の領主から騒動があったがまあ良い。
 
 そしてこの地でも、俺の扱える力が増すことになった。
 エネルギーのバランス的に、他の大陸は、大丈夫だろうかと心配になる。

「アレクサンデル王国とか、アウストルギガ帝国経由じゃ無いと、この国へ来られないわね」
「正式にあれを使い、村自体をこちらの出先として認めさせよう」

 そうトンネルを完全復旧させ、魔導灯を設置する。
 馬鹿な奴らが湧かないように、兵が警備をする様にして、三箇所ほど休憩所を作る。

 村の対岸に道を作り、アレクサンデル王国の街道へと繋げる。
 むろん村へも道は付け、セイクリッド国の兵を常駐させる。

 事後承諾だが、アレクサンデル王国のエルヴェツィオ=アレクサンデル王宛に親書を出す。挨拶がてら、織物などを付けて。

 王と宰相ドナルド=サットンは速やかに現場を確認するため兵を送るが、俺は村周辺に施したシールドを忘れていた。
 
 セイクリッド国の兵はこちらから出るため、精霊達が許可を与えて通っていたが、外から来る者は、許可が無いと通れない。
 だが、街道からでも、新たに立派な道が出来ているのは確認出来た。

 その事は、王へと伝えられる。

 そんな、兵がピリピリして囲んでいるところへ、村から荷馬車が出てくる。
 そう、スキームの町にある、旅の止まり木亭への鶏肉の配達。
 いまは、我が国の兵が護衛として付いている。
 そう、おおっぴらに。

 彼らには、最新型の鎧と、魔導具によるシールドを装備させている。
 まあ国力を見せるデモンストレーションでもある。だが目立つ……

「貴殿ら何者だ?」
 見た目がごついと言うだけで決められた人事。
 セイクリッド国アレクサンデル王国方面守備隊隊長。ジルヴェスター=レッサーが馬上から問いかける。凶悪な戦斧せんぷを携えている。

「何者だと? ここはアレクサンデル王国。貴殿達は他国の者のようだが、そちらこそ何をしておる」
 アレクサンデル王国王国軍第三騎兵隊隊長、オスカー=プラウズが負けじと吠える。

「ああーん? おうそうだ」
 そう言われて、思い出したように、ギルド証であるタグが見せられる。
「護衛依頼中だ」
「なっ」
 彼の手には、銀級のタグ。

 そうして、彼らはタグをぴらぴらさせながら通り抜けるが、また何かを思い出す。
「この中に入りたいなら、聖王様の承認か精霊の許可が必要なようだ」
「聖王だと? それは何者だ?」
 そう言った瞬間には、首元に戦斧が突きつけられていた。

「我が国の守護神。聖王だ。不敬は許さん」
 その言葉と同時に、周囲の世界がザワつき始める。
 木々は揺れ、風が吹き始める。見えない何かが、暴れ回っているような気配がする。

「聖王様と女王イミティス様は、共に精霊王を父に持つお方。気を付けるが良い。うぬらには見えぬだろうが、この地と我が国。両側に世界樹と呼ばれる聖樹が育っておる聖域となっておる。只人ただびとには管理できぬ」
 そう言って、ジルヴェスター=レッサーは立ち去る。

「やっべー。話が付いていないから、見つかるなって言われていたのに。やっぱり裏から行けば良かった」

 何とか、威圧と口上で乗り切り、焦ったジルヴェスターだが、焦ったのは相手も同じ。
 王の下へと連絡が行く。
『セイクリッド国の聖王様と女王イミティス様は、共に精霊王を父に持つ。人間にあらず。ならびに、トンネルと呼ばれる洞の周囲、聖域とのこと。人が入るには精霊の許可が必要』

 それを見て、勝手に領地を切り取られた王だが絶句する。
「宰相どうすればいい?」
「どうしましょう……」
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