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第6章 フェルナンダ=トルエバ王国へ
第58話 お茶会会議
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ふと目を覚ますと、アシュアス達は、優雅にお茶会をしていた。
あそこにいるのは、サーシャお姉様。いつから瞳の色が変わって……
だけど、起き上がると、僕は大人で、場所も家の中庭では無かった。
見た事のない場所……
俺が起きた事に気が付きレイラがやって来る。
「あなた。アシュアスさまが、多分あなたにあうだろうと。服をくださって」
意識が覚醒し、思い出す。
「ああ。ありがとう」
見回せば、家と言うより城が出来ていた。
そして、皆がさっぱりとしている。
「本当に風呂まで造ったのか?」
そう聞いた事で、言いたい事が分かったようだ。
「ええでも、これはお風呂じゃ無くて、皆を浄化してくれて。ものすごくさっぱりしました」
「はっ? 浄化?」
「ええ。とても便利だそうよ。呪術の天敵だけど……」
少し、レイラの顔に影が落ちる。
「お風呂は、薪が必要ないように、よく分からないけれど、源泉掛け流しだそうよ」
源泉掛け流しは判らないが、薪が必要ないのはありがたい。
「薪が? それはありがたい」
「あなたのお部屋は、二階の奥にあるから。行きましょ」
そう言って手を引かれる。
屋敷の中央に、観音開きの大きな尖頭アーチのドアがある。
それをくぐると、少し天井の高いホールがある。左右で分かれているのは、右側が、客室。正面の奥が食堂。左が、会議室や執務室だそうだ。食堂の脇に階段があり、上階へ上がれる。
「これはすごいな。僕は一体、何年寝ていたんだ?」
「嫌ですわ、数刻。時間で二時間くらいでしょうか?」
そう言って笑う、レイラのドレスもすごく薄く。シルクのような艶がある。
「そのドレスは?」
「これも頂き物。木綿や羊毛と違ってすごく軽くて、ナイフも刺さらないんですって。もちろん矢も。素材は怖くて聞けなかったわ……」
そう言って、嬉しそうなのに、声が小さくなり顔が曇っていく。
「そっ、そうか。良かったな」
「本当に。精霊の力ってすごいのね。すべてが初めて。あっそうそう、アシュアスさまが練習をさせてくれっていうので、歯も治していただいたの。治療の上級魔法を練習中だそうよ。教会では存在していなくて、自分で創っていらっしゃるみたい。ははっ……」
「そうか、親族として迎えられて、ありがたいな……」
「本当に……」
敵となった時の恐ろしさが、二人とも想像できなかった。
いきなり、木が生えるし、成長をする。
そうかと思えば、移動していったり、根ごと抜けて倒れる。
地面が波打ち、真っ直ぐに整地され、芝生がいきなり生えそろう。
「そういえば、脱出用の地下通路や、地下には牢獄もあるんですって」
「本当の城だったか」
「そうね、さっきまで住んでたお家もあるけれど、どうしましょう? 一応おいといて貰ったのだけど」
聞かれて悩む。
レイラとベアトリス。この二十年の生活が、あそこにはあった。
「思い出もある。残して貰おう」
「そうね。補強はしてくださったみたいよ」
「そうか。ありがたい。後で行って見よう」
そっと、レイラが腕を組んでくる。
自分たちの寝室は十畳ほどもあり、床には毛足の長い絨毯が敷かれ、石造り特有の床からの寒さを感じない。大きなベッドが据えられ、真っ白なシーツが掛けられ、羽毛がつめられた掛け布団まである。
当然中身はないが、クローゼットやチェスト。
大きな姿見まで、備え付けられていた。
重厚なテーブルと椅子。
ここにも、執務机が置かれていた。
窓は、艶がなく向こうが見えないが、水晶がはめ込まれているようだ。
曇りガラスを知らないベルナールであった。
すべてが違う。
調度品などを見ても、イルムヒルデ公爵家よりも良いものが揃っている。
「これはすごいな」
「あっという間に造られたの」
少し遠い目になる、レイラ。
「かなり願望が入ったお願いだったのだが、叶えられた様だな」
「ええ。何十年も経つからどうなるか判らないけれど、うちで働いていた人たちが戻ってきても大丈夫ね」
ベルナールはレイラをそっと抱きしめる。
「家の復興をしなければならないな。この家に見合うように」
「そうね。それについても、彼らが何かをしようとしているみたい」
先ほどのお茶会。
庭の隅に植えられた御茶の木。
新芽を摘んで、蒸して揉み、乾燥。幾度か繰り返し、最後に炒る。
これで、グリーンティが出来る。
炒らずに、発酵をさせると紅茶が出来る。
さっきは、紅茶を飲んでいた。
どちらの茶葉も、十キロくらい作ったようだ。
まあそんなお茶会。
優雅な笑顔を浮かべての話だったが、内容は……
「呪いがレイラさんの仕業というのは判った。どう手間を掛けずに王を倒すかだよね」
「元々コロコロと王が代わるなら、民からの信用はないでしょうし、今の状況を利用して、民を先導して責任を取らせましょう」
フィアもノリノリのようだ。
「ただ倒すのは、駄目なのか?」
リーポスらしい意見だが、それは良くない。
「ただ武力で倒すと、逆に反感を買うときがある。もっともらしい理屈が無いと駄目だ。さっきフィアの言った今の現状が、王の責任だと追及するのが良いと思う。噂をある程度流して、そこに、姉さんが現れ、扇動をする。今が別の国からの傀儡となっているのも、民を苦しめる原因だと、触れ回るのも良いだろう」
あそこにいるのは、サーシャお姉様。いつから瞳の色が変わって……
だけど、起き上がると、僕は大人で、場所も家の中庭では無かった。
見た事のない場所……
俺が起きた事に気が付きレイラがやって来る。
「あなた。アシュアスさまが、多分あなたにあうだろうと。服をくださって」
意識が覚醒し、思い出す。
「ああ。ありがとう」
見回せば、家と言うより城が出来ていた。
そして、皆がさっぱりとしている。
「本当に風呂まで造ったのか?」
そう聞いた事で、言いたい事が分かったようだ。
「ええでも、これはお風呂じゃ無くて、皆を浄化してくれて。ものすごくさっぱりしました」
「はっ? 浄化?」
「ええ。とても便利だそうよ。呪術の天敵だけど……」
少し、レイラの顔に影が落ちる。
「お風呂は、薪が必要ないように、よく分からないけれど、源泉掛け流しだそうよ」
源泉掛け流しは判らないが、薪が必要ないのはありがたい。
「薪が? それはありがたい」
「あなたのお部屋は、二階の奥にあるから。行きましょ」
そう言って手を引かれる。
屋敷の中央に、観音開きの大きな尖頭アーチのドアがある。
それをくぐると、少し天井の高いホールがある。左右で分かれているのは、右側が、客室。正面の奥が食堂。左が、会議室や執務室だそうだ。食堂の脇に階段があり、上階へ上がれる。
「これはすごいな。僕は一体、何年寝ていたんだ?」
「嫌ですわ、数刻。時間で二時間くらいでしょうか?」
そう言って笑う、レイラのドレスもすごく薄く。シルクのような艶がある。
「そのドレスは?」
「これも頂き物。木綿や羊毛と違ってすごく軽くて、ナイフも刺さらないんですって。もちろん矢も。素材は怖くて聞けなかったわ……」
そう言って、嬉しそうなのに、声が小さくなり顔が曇っていく。
「そっ、そうか。良かったな」
「本当に。精霊の力ってすごいのね。すべてが初めて。あっそうそう、アシュアスさまが練習をさせてくれっていうので、歯も治していただいたの。治療の上級魔法を練習中だそうよ。教会では存在していなくて、自分で創っていらっしゃるみたい。ははっ……」
「そうか、親族として迎えられて、ありがたいな……」
「本当に……」
敵となった時の恐ろしさが、二人とも想像できなかった。
いきなり、木が生えるし、成長をする。
そうかと思えば、移動していったり、根ごと抜けて倒れる。
地面が波打ち、真っ直ぐに整地され、芝生がいきなり生えそろう。
「そういえば、脱出用の地下通路や、地下には牢獄もあるんですって」
「本当の城だったか」
「そうね、さっきまで住んでたお家もあるけれど、どうしましょう? 一応おいといて貰ったのだけど」
聞かれて悩む。
レイラとベアトリス。この二十年の生活が、あそこにはあった。
「思い出もある。残して貰おう」
「そうね。補強はしてくださったみたいよ」
「そうか。ありがたい。後で行って見よう」
そっと、レイラが腕を組んでくる。
自分たちの寝室は十畳ほどもあり、床には毛足の長い絨毯が敷かれ、石造り特有の床からの寒さを感じない。大きなベッドが据えられ、真っ白なシーツが掛けられ、羽毛がつめられた掛け布団まである。
当然中身はないが、クローゼットやチェスト。
大きな姿見まで、備え付けられていた。
重厚なテーブルと椅子。
ここにも、執務机が置かれていた。
窓は、艶がなく向こうが見えないが、水晶がはめ込まれているようだ。
曇りガラスを知らないベルナールであった。
すべてが違う。
調度品などを見ても、イルムヒルデ公爵家よりも良いものが揃っている。
「これはすごいな」
「あっという間に造られたの」
少し遠い目になる、レイラ。
「かなり願望が入ったお願いだったのだが、叶えられた様だな」
「ええ。何十年も経つからどうなるか判らないけれど、うちで働いていた人たちが戻ってきても大丈夫ね」
ベルナールはレイラをそっと抱きしめる。
「家の復興をしなければならないな。この家に見合うように」
「そうね。それについても、彼らが何かをしようとしているみたい」
先ほどのお茶会。
庭の隅に植えられた御茶の木。
新芽を摘んで、蒸して揉み、乾燥。幾度か繰り返し、最後に炒る。
これで、グリーンティが出来る。
炒らずに、発酵をさせると紅茶が出来る。
さっきは、紅茶を飲んでいた。
どちらの茶葉も、十キロくらい作ったようだ。
まあそんなお茶会。
優雅な笑顔を浮かべての話だったが、内容は……
「呪いがレイラさんの仕業というのは判った。どう手間を掛けずに王を倒すかだよね」
「元々コロコロと王が代わるなら、民からの信用はないでしょうし、今の状況を利用して、民を先導して責任を取らせましょう」
フィアもノリノリのようだ。
「ただ倒すのは、駄目なのか?」
リーポスらしい意見だが、それは良くない。
「ただ武力で倒すと、逆に反感を買うときがある。もっともらしい理屈が無いと駄目だ。さっきフィアの言った今の現状が、王の責任だと追及するのが良いと思う。噂をある程度流して、そこに、姉さんが現れ、扇動をする。今が別の国からの傀儡となっているのも、民を苦しめる原因だと、触れ回るのも良いだろう」
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