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第5章 聖魔法を極めよう

第49話 暗殺者?

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 アシュアスは、膝から上がベッドにのった状態。
 フィアがアシュアスの頭を抱えているから、お腹の上に丁度彼女が乗っている。

 非常に辛い。
 ガバッと抱きしめ、くるりと体を入れ替える。
 だが、頭を離してくれない。

 おもむろに、両手を彼女の腋に沿わせて、一気にくすぐる。
「ぶひゃ。ちょっとアシュアス。やめて、それ駄目」
 だが、今はフィアがベッド側。
 逃げられない。
 太ももの上に、アシュアスが座る状態で、逃げられず。

 脇腹から、腋まで位置を変えつつ、くすぐられる。
「だめ。息。できない」
 頭は離され、彼女も少し涙声になったので、流石にやめる。

 フィアの横へ、ごろりと寝転がる。
 そのとき、フィアは焦っていた。
 くすぐられて、苦しかったのに…… 女の子の部分が、大変なことになっていた。

 再び、アシュアスの上に乗り、脇腹から直接服の中に手を入れる。
 お返しとばかりに、ゆっくりと、くすぐり始める。

 だが、以外と反応が薄い。
 意識の切り離しという技。
 訓練のたまものである。
「もうっ」
 それに気が付き、フィアの攻撃が変わる。

 キスが始まり、それは止まってくれない。
 もういい加減、気持ちは分かっているし、受け入れる事にした。

 だが、じゃれているなら良いが、それ以上は許さんとばかりに、リーポス達が雪崩れ込んでくる。落ち込んでいるアシュアスのことは、通り過ぎる一瞬で、一目見て理解した。
 フィアが追いかけたので、面倒ごとは任せていたようである。

 くすぐり合いなどは、子供の頃からのものだし、そんなに気にしない。
 だが、はむっ、とか、んちゅ。というのは頂けない。

 ―― するなら混ぜろ。
 とまあ、入ってきた。

「もうなによ。せっかく……」
 フィアが文句を言いかけた、その時。全員の雰囲気が変わる。

 まだ時間は早いというのに、宿の周りに、妙な殺気を持った連中が集まりだした。
 彼らは、『光の導き手』と言う集団。

 元は教会の教えを広める集団であったが、時代と共に変質。
 時には、力尽くで…… 教えを理解できないものは、世から消えて貰う事もある。

「対象は、教会の者でもないのに、奇蹟を使うようです」
「なに? それは危険。そんなまがい物の力が振るわれれば、人々の導きがゆがめられ、世界がおかしくなってしまう。教えは教会のみが正しいのだ」
 元は白かったフードは薄汚れている。彼らは、大司教の旅に同道していたようだ。

 年齢も性別もバラバラ。ただ白い服の集団であり…… 今は殺気を纏っている。

 そして彼らは、躊躇無く宿へ入ってくる。
 少し高い宿で、メルカトアさん達も泊まっている。
 なぜか、依頼主より、アシュアス達の方がいい部屋に泊まっているのだが、仕方が無いだろう。人数が多いのだから。

 彼らは、食堂の方を見回すが、聞いた風体の者達はいないようだ。

「念のために、全員処置を行いますか?」
「いや待て。おかみ、この宿に奇跡の探索者。または、アシュアスとかいう小僧が泊まってはいないか?」
 普段なら、さあねとでも言うのだが、男が纏っているやばさに、つい宿帳を見る。
 そこに見つける、アシュアスという文字。

「三百三十七号室に宿泊中です」
 この宿、木造の三階建て。三階は大きめの部屋が二つ。
 後は、物置や従業員の部屋が、いくつかあるばかり。
 どういう理屈で、部屋番号が振られているのか判らない。

「判った」
 そう言って食堂の端にある階段から、上階へ上がる。
 階段から、繋がる廊下。
 ぱっと見、上へと繋がる階段はない。
 そのまま奥へ向かい、突き当たりまで行くが階段が無い。

「うん? なんだ。さっき三百三十七号室と言ったから、三階だと思ったが、違うのか? 聞いてこい」
「はっ」

 一人の男が走っていく。
「三百三十七号室というのは、三階か?」
「そうだよ」
 女将さんは答える。
「判った」
 男は走る。

「三階だそうです」
「なに? 階段は何処だ? ええい探せ」
 女将さんに気けばいいのに、なぜか聞かずに探し始める。

 三階には従業員用の部屋もあるため、隠すように階段の入り口にドアがあった。
 そして、階段下のスペースは共用のトイレが並ぶ。

「此処かしら?」
 導き手、色仕掛けのジェニファーは、ドアを適当に開ける。
 その中で座っている大男と目が合う。
「すまんな。使用中だ」
 目にしみる匂いと、その大男にぶら下がる何かを間近で見てしまう。
「ひっ」
 あわててドアを閉める。

 普段は誘い込むと殺してしまうため、まじまじと見たことがなかった。
「あんな物が……」
 お年頃のようだ。

 そして、一階からの階段。
 上がってきた所に繋がる廊下を、トイレ前で曲がらずに、突き当たったドアが階段だったようだ。

「ここにあったぞ」
 導き手、暗器のジミーが見つけたようだ。
 見つけたのが嬉しくて、大声を出す。

 ドヤドヤと、皆が集まってくる。
「こんな所に隠してあるとは。おかげでオッサンの逸物を見る羽目になってしまった」
 かれはどうあっても、鍵をかけなかったようだ。

「行くぞ」


「なんか、大騒ぎしながら上がってくるよ」
「おかしな連中だなあ……」
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