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第5章 聖魔法を極めよう
第46話 思い色々
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とりあえず、エレオノールお姉様の、料理を頂きながら話し込む。
「その手紙には、母の悲願として記されておりましたが、私一人では、当然どうすることもできません。それに……」
「それに?」
「一つの王国を倒し、イルムヒルデ公爵家を復活と言っても、私にとって、育った家は孤児院ですし」
まあ、そりゃそうだ。
「何か家に繋がるモノは、無いのでしょうか?」
「たぶん…… 残されていたのは、手紙のみのようです」
「孤児院だったら教会よねぇ。話を聞きに行って見る?」
フィアに言われて、伝手の一つかと納得をする。
「そうだな、話が聞けるならそれも」
そんな話をしていて、ティナさんがうつむき、何も言わないのに気が付く。
この数日は、かなり打ち解けて、色々話をしていたのに。
「ティナさんは、どう思います?」
「へっ? 何も知りません。私は…… 本当に」
「えーと。何を?」
そう聞いても俯くだけ。
「でもそうね。ずっと一人だと思っていたけれど…… 弟」
そう言って、じっと見つめてくる。
「そうですね。知ったのは数日前で、実感はありませんが。村に弟がいますから、あってほしいし、うちの両親にも話を聞かないといけませんね」
「弟さん?」
「ええ、いま少し具合が悪く、それを何とかする為に旅をしているんです」
「そうですか。具合って、どんな?」
「えーと、自家性魔力中毒症で」
そう言うと、知っているのだろう。
表情がいきなり崩れた。
意外と表情が出る。
「そうですか、それは大変ですね。さて、弟という事なら、今晩から一緒に寝ましょうか?」
「「「はっ?」」」
皆の顔が驚く。
「いえ孤児院では、みんなそうでしたよ。姉弟と言えば家族。一緒に抱き合って眠るもの」
「イミティスさん。それは小さな頃だけで、この年なら別々に……」
フィアがそう言うと、イミティスさんは悲しそうな顔になる。
「私は孤児院育ち。家族というモノを知りません。せっかく出会ったのですから、ぬくもりを知りたいというのは、おかしな事でしょうか?」
「ぐっ。いえ、おかしくはないと思いますが……」
「じゃあ、皆で寝よう」
リーポスが、そう口にするが、皆考える。
隣は二つ。
一つを埋められると、残りは一つ。
それでは意味が無い。
だがフィアは、思い出す。
私たちと違い、イミティスさんは本当に姉弟。言っているように本当の家族。それをじゃまするのは駄目だと。
「そうね。初めて会った姉弟。情報のすりあわせとか、お互いに話すことはあるし、今日のところは、私たち別の部屋で寝ましょう」
リーポスは渋々納得。ティナは無反応。
「ティナさんも良い?」
「んっ。はい」
その晩、一応生い立ちから、イミティスさんに説明をする。
その中で語られる、メンバーとの楽しそうな思い出。非常識な訓練……
だがその話を聞き、イミティスは自分には思い出が無いことが分かる。
貴族とわかり、妙な行動を始めた事で、皆は近寄ってこなくなった。
「私って変でしょうか?」
「えっ?」
「アシュアスと違い、私には思い出といえる物が、ほとんどありません。この国では貴族ではありませんが、貴族であらねばと行動をしてきました。その為か友人といえる者もいません」
そう聞かれても困る。
「貴族と言っても、イミティスさん」
「ねえさん」
「そう、姉さんのような動き方をする人は居ませんから、皆が怖がっているのでは? 普通に動いてみれば、周囲も随分変わるのでは?」
「ですが、貴族たるもの、いつも姿勢を崩さず。凜とした感じで行動するものだと」
「それは心構えとか、内面の話で、かくかく動くのとは違うのでは?」
そう言うと、考え込んでしまった。
そして、寝息が聞こえる……
「ねえさん?」
返事がない…… ただの屍のように、微動だにせずに眠っている。
イミティス様に打ち明け、王国を倒す行動をするべきか?
母に言えば、すぐに動き始めるだろう。
―― はっ。そうね。イミティス様はアシュアスの姉。
なら共に行動し、イルムヒルデ公爵家を復興するのに手伝ってもらえば。トバイアス家は、従者の家系。
公爵家の方と、婚姻もおかしくはない。
―― これだわ。
悩んでいたが、ティナの気持ちも固まったようだ。
自分のお腹に、足を乗せてくるリーボスを少し蹴り出し、眠りに入る。
そしてその横では、フィアが呪文を唱えていた。
「あの二人は姉弟。何もない。何も起こらない」
呪文と言うより自己暗示。
そんな時でも夜は明ける。
「イミティス様。お話があります」
びしっとティナが、ご挨拶。
「話が家名はトバイアス。家はイルムヒルデ公爵家の従者でございます。母は、サーシャを逃すため、ヘルキニアの町で別れました。未だ存命のため、母に会っては頂けませんでしょうか?」
当然、皆が驚く。
「じゃあ、目的ってイミティスさんを探していたの?」
「その様です。事が事ですので、情報を精査をしていて、お声がけが遅れました。申し訳ありませんでした」
「じゃあ、あなたのお母様は、私の母を知っていると」
「はい」
「あたしは、おば…… お姉さんに物は渡したし、帰っても良いよ」
「フェンリル達が元気か、気になってけれど、まあいいか」
そうして、ヘルキニアの町へ帰ることになった。
「その手紙には、母の悲願として記されておりましたが、私一人では、当然どうすることもできません。それに……」
「それに?」
「一つの王国を倒し、イルムヒルデ公爵家を復活と言っても、私にとって、育った家は孤児院ですし」
まあ、そりゃそうだ。
「何か家に繋がるモノは、無いのでしょうか?」
「たぶん…… 残されていたのは、手紙のみのようです」
「孤児院だったら教会よねぇ。話を聞きに行って見る?」
フィアに言われて、伝手の一つかと納得をする。
「そうだな、話が聞けるならそれも」
そんな話をしていて、ティナさんがうつむき、何も言わないのに気が付く。
この数日は、かなり打ち解けて、色々話をしていたのに。
「ティナさんは、どう思います?」
「へっ? 何も知りません。私は…… 本当に」
「えーと。何を?」
そう聞いても俯くだけ。
「でもそうね。ずっと一人だと思っていたけれど…… 弟」
そう言って、じっと見つめてくる。
「そうですね。知ったのは数日前で、実感はありませんが。村に弟がいますから、あってほしいし、うちの両親にも話を聞かないといけませんね」
「弟さん?」
「ええ、いま少し具合が悪く、それを何とかする為に旅をしているんです」
「そうですか。具合って、どんな?」
「えーと、自家性魔力中毒症で」
そう言うと、知っているのだろう。
表情がいきなり崩れた。
意外と表情が出る。
「そうですか、それは大変ですね。さて、弟という事なら、今晩から一緒に寝ましょうか?」
「「「はっ?」」」
皆の顔が驚く。
「いえ孤児院では、みんなそうでしたよ。姉弟と言えば家族。一緒に抱き合って眠るもの」
「イミティスさん。それは小さな頃だけで、この年なら別々に……」
フィアがそう言うと、イミティスさんは悲しそうな顔になる。
「私は孤児院育ち。家族というモノを知りません。せっかく出会ったのですから、ぬくもりを知りたいというのは、おかしな事でしょうか?」
「ぐっ。いえ、おかしくはないと思いますが……」
「じゃあ、皆で寝よう」
リーポスが、そう口にするが、皆考える。
隣は二つ。
一つを埋められると、残りは一つ。
それでは意味が無い。
だがフィアは、思い出す。
私たちと違い、イミティスさんは本当に姉弟。言っているように本当の家族。それをじゃまするのは駄目だと。
「そうね。初めて会った姉弟。情報のすりあわせとか、お互いに話すことはあるし、今日のところは、私たち別の部屋で寝ましょう」
リーポスは渋々納得。ティナは無反応。
「ティナさんも良い?」
「んっ。はい」
その晩、一応生い立ちから、イミティスさんに説明をする。
その中で語られる、メンバーとの楽しそうな思い出。非常識な訓練……
だがその話を聞き、イミティスは自分には思い出が無いことが分かる。
貴族とわかり、妙な行動を始めた事で、皆は近寄ってこなくなった。
「私って変でしょうか?」
「えっ?」
「アシュアスと違い、私には思い出といえる物が、ほとんどありません。この国では貴族ではありませんが、貴族であらねばと行動をしてきました。その為か友人といえる者もいません」
そう聞かれても困る。
「貴族と言っても、イミティスさん」
「ねえさん」
「そう、姉さんのような動き方をする人は居ませんから、皆が怖がっているのでは? 普通に動いてみれば、周囲も随分変わるのでは?」
「ですが、貴族たるもの、いつも姿勢を崩さず。凜とした感じで行動するものだと」
「それは心構えとか、内面の話で、かくかく動くのとは違うのでは?」
そう言うと、考え込んでしまった。
そして、寝息が聞こえる……
「ねえさん?」
返事がない…… ただの屍のように、微動だにせずに眠っている。
イミティス様に打ち明け、王国を倒す行動をするべきか?
母に言えば、すぐに動き始めるだろう。
―― はっ。そうね。イミティス様はアシュアスの姉。
なら共に行動し、イルムヒルデ公爵家を復興するのに手伝ってもらえば。トバイアス家は、従者の家系。
公爵家の方と、婚姻もおかしくはない。
―― これだわ。
悩んでいたが、ティナの気持ちも固まったようだ。
自分のお腹に、足を乗せてくるリーボスを少し蹴り出し、眠りに入る。
そしてその横では、フィアが呪文を唱えていた。
「あの二人は姉弟。何もない。何も起こらない」
呪文と言うより自己暗示。
そんな時でも夜は明ける。
「イミティス様。お話があります」
びしっとティナが、ご挨拶。
「話が家名はトバイアス。家はイルムヒルデ公爵家の従者でございます。母は、サーシャを逃すため、ヘルキニアの町で別れました。未だ存命のため、母に会っては頂けませんでしょうか?」
当然、皆が驚く。
「じゃあ、目的ってイミティスさんを探していたの?」
「その様です。事が事ですので、情報を精査をしていて、お声がけが遅れました。申し訳ありませんでした」
「じゃあ、あなたのお母様は、私の母を知っていると」
「はい」
「あたしは、おば…… お姉さんに物は渡したし、帰っても良いよ」
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