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第5章 聖魔法を極めよう
第41話 ギルドの洗礼
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平和になっていたスキームの町。
一人を除いて、皆が元気に出発をする。
危険だった峠道にも、反応をする人影はない。
「あの一回で、終わったようだな」
「そうね」
前回の行列を思い出す。
捕まえたは良いが、アングラでは受け入れてもらえず。ビザッティまで引きずっていく羽目になってしまった。
泣くわ叫くわ、もう散々。
改めて、アングラの町を散策する。
基本的に、スキームの町と同じで、峠越え前の宿場という造り。
目新しいものも、特に無いようなので出発をする。
十人ほど引き連れて。
彼らは盗賊の残党。
あれから、こそこそと日雇いの人足をしていた。
頭がいなくなり、自分たちで何とかしようとしたが上手くいかず。
あげく、真面目に働いていた。
それで満足をしていれば良いが、一度覚えた贅沢の記憶は抜けない。
「おい。あいつら、あの時のガキどもだ」
「他に大人を連れていないようだし、女も三人。――やるしかねえな」
実行犯ではなかった彼らは、知らなかった…… そう、目を付けた子供達が猫ではなく虎であることを。
峠前に町が出来ただけで、アングラを過ぎれば、ビザッティまで森の中を街道は続く。
「おい、もう良いだろう」
そう。盗賊達が、カサコソと歩いて追いつける。
普段の、アシュアス達の移動速度ならそれはあり得ない。
我慢が出来なくなった盗賊達。少し森側から回り込み、一番後ろにいるリーポスを羽交い締めにしようとした。
すると、もう少しという所で、いきなりパタッと倒れる。
「あっ。おい。どうした」
つい止まって助け起こす。
すると仲間達も、森から出た所で、止まってしまう。
倒れた男。その鳩尾が妙にヘコんでいた。
「何だこりゃ?」
「そりゃ、剣の鞘で突かれただけだよ」
そう言われて、顔を上げる。
目が合うと、にかっと笑うリーポス。
「あっ。まあいい。どちらにしろ同じだ。やるぞ皆……」
声をかけたが、周りでは皆がパタパタと倒れていく。
昔アシュアスを驚かせた、気配遮断。
なにか、積もった鬱憤を晴らすようなティナの攻撃。
それは容赦がなく、怪我させるような攻撃ではないが苛烈といえるもの。
そう、それはまるで、バラ鞭を持ったお姉様のよう。
攻撃を受けるたびに、盗賊達の心から何かが失われていく。
そして、残るのは従順な僕。
多少目付きが変になり、ティナに何かを懇願をするようになったが、おとなしく縛られていく。どうやらただの攻撃ではなく、精神波が乗った洗脳攻撃のようだ。
結局盗賊を連れて、ビザッティへと到着をする。
「すみません。盗賊です」
衛兵の詰め所に、そう言って顔を出したら驚かれた。
「何だ大胆な奴だな。ここを何処だと…… ああ、捕まえたのか。盗賊が来たのかと勘違いをしてしまった。これは、しっけい」
挨拶の仕方を間違えたようだ。
盗賊を引き渡し、ギルドへの書状をもらう。
これで賞金を頂ける。
ギルドに来たついでに、簡単な仕事でも受けようか。そう思ったが、初めてのイベントを体験する。
よく聞く奴だ。
俺達の初めては、逆にリーポスが先輩に絡んだので、珍しい奴らと言われた。
普通は見慣れない奴らが来れば、先輩風を吹かした幾人かが、ウザ絡みをすると聞いている。
そう、初めてイベントが起こった。
「かわいいお嬢ちゃん達を連れて、冒険ごっこか?」
見るからに怪しい。
見た目は、完全に盗賊のようなチーム。
「不潔な奴ら。臭いわよ」
珍しく、フィアが反応をする。
「あんだとぉ。おおう。お嬢ちゃんは良い匂いだぜ。発情期の雌の匂いがするぜ」
顔を突き出し、クンクンと匂いを嗅ぐ盗賊。じゃない先輩冒険者。
「なっ」
なぜか、貴様なぜ分かったみたいな顔を、フィアだけではなく三人ともがする。
多少顔まで赤くなり、ちらっとこちらを見る。
思い出される昨夜の会話。
「ああ、そうか」
つい口に出してしまった。
すると、三人とも顔が赤くなる。
そして、立っていた奴らはパタパタと倒れ、三人が詰め寄ってくる。
「その。誰でも良いわけじゃ無いから。お相手をしてくれると、きっと落ち着くから」
発情期説、完全肯定。
フィアの言葉に、リーポスとティナさんまで、頷いている。
『女の子のお願いは黙って聞くのが良い男。ただし誠実に。それが出来ない男は灰になるが良いわ』
母さんはそう言って、父さんを睨んでいた。
黒い炎を纏いながら。
何かあったのだろうか?
『この世界、甲斐性があれば何人でも結婚できるが、見てわかるだろう。一人でも大変なんだ。よく考えろ』
今回帰った後、父さんにしみじみ言われた。
父さんには、フィアとリーポスの気持ちが分かっていたのか? まあ二人とも。毎日来ていたけれど。
「ありがとう。いまは旅の途中だし。落ち着いてからね」
そう言うと、納得したのか、しないのか。
ただ、リーポスとティナさんは不穏な笑みを浮かべていた。
寝るときには注意しよう。
そう、ここはギルド内。
「おおう。見慣れない奴らだな。チャラチャラと若い奴が女の子と一緒にチームか。すぐ死ぬな」
「お嬢ちゃん達。殺すにはもったいねえなあ。教育しとくかぁ。気は進まねえがなぁ」
そう言って立ち上がった、チーム『先端につどう者達』ハンターの頂点を目指すとか言いたいチーム名らしい。一応銀級。
でまあ、声をかけに行ったが、ついでで意識を狩られた。
本人達は、傍目を気にせずラブラブモード。
そして、アシュアスは『旅の途中だし』からの……
「あっ。良い依頼があった」
依頼に逃げた。
その姿は、チョウチョを追いかける、幼子のようであったと。多数の目撃者は語る。
母さんがどこかで『誠実とは』と言って、怪しい笑顔を浮かべている姿が見える。
一人を除いて、皆が元気に出発をする。
危険だった峠道にも、反応をする人影はない。
「あの一回で、終わったようだな」
「そうね」
前回の行列を思い出す。
捕まえたは良いが、アングラでは受け入れてもらえず。ビザッティまで引きずっていく羽目になってしまった。
泣くわ叫くわ、もう散々。
改めて、アングラの町を散策する。
基本的に、スキームの町と同じで、峠越え前の宿場という造り。
目新しいものも、特に無いようなので出発をする。
十人ほど引き連れて。
彼らは盗賊の残党。
あれから、こそこそと日雇いの人足をしていた。
頭がいなくなり、自分たちで何とかしようとしたが上手くいかず。
あげく、真面目に働いていた。
それで満足をしていれば良いが、一度覚えた贅沢の記憶は抜けない。
「おい。あいつら、あの時のガキどもだ」
「他に大人を連れていないようだし、女も三人。――やるしかねえな」
実行犯ではなかった彼らは、知らなかった…… そう、目を付けた子供達が猫ではなく虎であることを。
峠前に町が出来ただけで、アングラを過ぎれば、ビザッティまで森の中を街道は続く。
「おい、もう良いだろう」
そう。盗賊達が、カサコソと歩いて追いつける。
普段の、アシュアス達の移動速度ならそれはあり得ない。
我慢が出来なくなった盗賊達。少し森側から回り込み、一番後ろにいるリーポスを羽交い締めにしようとした。
すると、もう少しという所で、いきなりパタッと倒れる。
「あっ。おい。どうした」
つい止まって助け起こす。
すると仲間達も、森から出た所で、止まってしまう。
倒れた男。その鳩尾が妙にヘコんでいた。
「何だこりゃ?」
「そりゃ、剣の鞘で突かれただけだよ」
そう言われて、顔を上げる。
目が合うと、にかっと笑うリーポス。
「あっ。まあいい。どちらにしろ同じだ。やるぞ皆……」
声をかけたが、周りでは皆がパタパタと倒れていく。
昔アシュアスを驚かせた、気配遮断。
なにか、積もった鬱憤を晴らすようなティナの攻撃。
それは容赦がなく、怪我させるような攻撃ではないが苛烈といえるもの。
そう、それはまるで、バラ鞭を持ったお姉様のよう。
攻撃を受けるたびに、盗賊達の心から何かが失われていく。
そして、残るのは従順な僕。
多少目付きが変になり、ティナに何かを懇願をするようになったが、おとなしく縛られていく。どうやらただの攻撃ではなく、精神波が乗った洗脳攻撃のようだ。
結局盗賊を連れて、ビザッティへと到着をする。
「すみません。盗賊です」
衛兵の詰め所に、そう言って顔を出したら驚かれた。
「何だ大胆な奴だな。ここを何処だと…… ああ、捕まえたのか。盗賊が来たのかと勘違いをしてしまった。これは、しっけい」
挨拶の仕方を間違えたようだ。
盗賊を引き渡し、ギルドへの書状をもらう。
これで賞金を頂ける。
ギルドに来たついでに、簡単な仕事でも受けようか。そう思ったが、初めてのイベントを体験する。
よく聞く奴だ。
俺達の初めては、逆にリーポスが先輩に絡んだので、珍しい奴らと言われた。
普通は見慣れない奴らが来れば、先輩風を吹かした幾人かが、ウザ絡みをすると聞いている。
そう、初めてイベントが起こった。
「かわいいお嬢ちゃん達を連れて、冒険ごっこか?」
見るからに怪しい。
見た目は、完全に盗賊のようなチーム。
「不潔な奴ら。臭いわよ」
珍しく、フィアが反応をする。
「あんだとぉ。おおう。お嬢ちゃんは良い匂いだぜ。発情期の雌の匂いがするぜ」
顔を突き出し、クンクンと匂いを嗅ぐ盗賊。じゃない先輩冒険者。
「なっ」
なぜか、貴様なぜ分かったみたいな顔を、フィアだけではなく三人ともがする。
多少顔まで赤くなり、ちらっとこちらを見る。
思い出される昨夜の会話。
「ああ、そうか」
つい口に出してしまった。
すると、三人とも顔が赤くなる。
そして、立っていた奴らはパタパタと倒れ、三人が詰め寄ってくる。
「その。誰でも良いわけじゃ無いから。お相手をしてくれると、きっと落ち着くから」
発情期説、完全肯定。
フィアの言葉に、リーポスとティナさんまで、頷いている。
『女の子のお願いは黙って聞くのが良い男。ただし誠実に。それが出来ない男は灰になるが良いわ』
母さんはそう言って、父さんを睨んでいた。
黒い炎を纏いながら。
何かあったのだろうか?
『この世界、甲斐性があれば何人でも結婚できるが、見てわかるだろう。一人でも大変なんだ。よく考えろ』
今回帰った後、父さんにしみじみ言われた。
父さんには、フィアとリーポスの気持ちが分かっていたのか? まあ二人とも。毎日来ていたけれど。
「ありがとう。いまは旅の途中だし。落ち着いてからね」
そう言うと、納得したのか、しないのか。
ただ、リーポスとティナさんは不穏な笑みを浮かべていた。
寝るときには注意しよう。
そう、ここはギルド内。
「おおう。見慣れない奴らだな。チャラチャラと若い奴が女の子と一緒にチームか。すぐ死ぬな」
「お嬢ちゃん達。殺すにはもったいねえなあ。教育しとくかぁ。気は進まねえがなぁ」
そう言って立ち上がった、チーム『先端につどう者達』ハンターの頂点を目指すとか言いたいチーム名らしい。一応銀級。
でまあ、声をかけに行ったが、ついでで意識を狩られた。
本人達は、傍目を気にせずラブラブモード。
そして、アシュアスは『旅の途中だし』からの……
「あっ。良い依頼があった」
依頼に逃げた。
その姿は、チョウチョを追いかける、幼子のようであったと。多数の目撃者は語る。
母さんがどこかで『誠実とは』と言って、怪しい笑顔を浮かべている姿が見える。
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