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第5章 聖魔法を極めよう

第32話 再出発

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 節約をして、食べさせて。一年が経った。
 体も随分大きくなったが、食べるのを止めると、やっぱり症状が出る。

「一つを、節約しながら食べると、何とか一年持つ。奇跡の実はそんなに簡単にできるものじゃないらしいし、光の上位魔法を覚えられないかなあ」
「教会が完全秘匿をしているし、そもそもそんなに簡単に使えるモノじゃないんだ。私だって使えない」
 母さんも、腕を組み眉間に皺を寄せる。

「大きな町。メルカトアよりは、エベラルドトゥリーの方が良いかなあ?」
「うん? どうした」
「魔法を覚えてみるよ。上位の光魔法」
 そう言うと、母さんは難しい顔をする。

「教会は素直に教えてくれないだろうし、難しいわよ」
「うーん。でもまあ、行って見るよ」
「そうかい。まあ無理をしない事だ。逆にお前が光魔法を使える事が分かれば、教会に捕まるからね。気をつけな。奴ら、しつこいからね」
「はーい」

 父さんと、フィラデルにも説明をする。
「まあ、頑張れ。教会と戦うなら言え。奴らは何とかしないといけないと思っていたところだ」
 何があったのか知らないが、父さんが燃えていた。

「また、どこかに行くの?」
「うん。今回は、なんとなく道筋が見えているから、そんなに長くはかからないさ」
 そう。その時、僕はそう思っていた。

 そして翌日。
 リーポスとフィアが待っていた。
「エベラルドトゥリーに行くんだろ。母さんに、お使いを頼まれたし一緒に行くぞ」
 リーポスがそう言うと、フィアは、言い訳をする。

「アミル達は行けないし、私が付いていく。アシュアスが強くても、やっぱり危険だし」

 そう、アミルとクノープは、今一緒に暮らしていて、お腹には子供がいるらしい。
 だから不参加。

 人数は減ったが、前と同じ道。
 僕たちは、気楽に出発をした。


「なんだか、久しぶり」
 たどり着いたのは、ヘルキニアの町。
 ギルドにはよらず、裏へ回る。
 そう、安楽亭。

「すみません。宿泊出来ますか?」
「うん? ああ、大丈夫…… まあ、あんた達。元気そうだね。少し大きくなった。三人だけかい?」
「そう。クノープ達は結婚をして、今回不参加なんだ」
「まあ、それはおめでたいね。あんた達はしないのかい?」
「へっ。俺達?」
「そう。お嬢さん達は、まんざらでもなさそうだよ」

 そう言われて、二人を見ると。赤くなってもじもじしている。
「えーあー。まあ、まだですね」
 そうは言ったが、でかいベッドのある部屋へ通された。

 まあ、寝るのは問題ない。
 今まで幾度も、一緒に寝たし。

 そう思っていたが、いざ寝ようとして、両側から張り付かれると、何かが覚醒をする。

 今まで、そんなに気にしていなかったのに。二人とも女の子だったんだなぁ。
 そんな事を考える。

 まあ、寝たけどね。
 だけど、人を超越し、エルフのようなメンタルのアシュアスとは違い、すでに目覚めている女の子二人。
 心中は穏やかではない。

 この旅の間に決める。
 謎の闘志を燃やしていた。

「おはよう」
 元気なアシュアス。
 対して、二人は眠そうだ。
 アシュアスは首をひねる。
 自分より先に、寝たはずなのに。

「おはよう。おや、眠れなかったのかい」
 そう言って、女将さんはにまにましている。

「ええ、まあ」
 若干、リーポスの髪色がくすんでいる。

 もそもそと、食事をしていると、女将さんが言ってくる。
「あんた達、少し狩ってきてくれないか?」
「うん? 何が要るんです?」
「肉全般。兎でも鹿でも何でも。最近少なくてね」
「まあ良いか。少し狩ってこようか」
 そうして食事の後、ギルドに顔を出す。

「特に目だった依頼はないね」
 だけど、その中に、町の南側の森。
 異変の原因調査という依頼があった。

「森には入るし、受けてみるか」
 ティナさんが、目ざとく僕らを見つける。

「お久しぶりです。マスターを呼びましょうか?」
「いえ、特に用事はないんで」
 アシュアスの言った言葉を、本人が階段上で聞き、涙をこぼす。

 ギルドに来た瞬間から、クレッグは把握していた。
 奴らが戻って来た。
 そう思い、いそいそと出てきたのに、聞こえた言葉……
 そうだあいつらは、彼らの子供。そういう奴らだ。

「良いんだ別に。俺も用事があるわけじゃなし……」
 そう、一人でぶつぶつ言いいながら部屋へ戻る。

「しかし、アシュアスの力。何だありゃ。まるで周りの魔力を、味方に付けたような力」


 そう、未だに世界樹から、力の供給が続いていた。
 完全に人のそれとは違う。

 そして彼らは、南側の森を燃やし尽くす。


 しばらく前、主ともいえるモンスターが、その森で寿命を迎えた。
 それは、かなり巨大なフォレストボア。
 通常より大きく、高濃度の魔力を持っていた。

 そこは、洞の中。

 そして、そこには住民がいた。
 ブラックコックローチ。
 その体は堅く、非常に貪欲。

 そいつらは高濃度の魔力を含んだ肉をくらい、増殖をした。
 そして、洞から這い出し、広がり始めた。

 植物も、動物も、モンスターも目につくものは襲い、食らっていく。
 それは、森の奥から、徐々に町へと近寄ってきていた。
 人の知らぬ間に……
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