僕は弟を救うため、無自覚最強の幼馴染み達と旅に出た。奇跡の実を求めて。そして……

久遠 れんり

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第4章 イマーゴ大陸

第30話 やばい何か

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 シカーダラーバは、シカーダの幼生だった。
 地上に出ると、一気にさなぎになり、変態をしていく。
 そのさなぎの時は、比較的柔らかく、攻撃が通る。

 だが、その数が問題だ。

 その間に、世界樹の様子が変わってくる。
 光がまし、気のせいかエルフ達が少し元気になった。
 こいつらが、原因だったようだ。

 数に押されて、一つまた一つと、成虫になっていく。

 すると今度は、上空で世界樹に取り付き、樹液を吸い始める。
「ああ。霊木様が」
 エルフの一人がぼやいたとき、絞り込まれたブレスが次々にシカーダを焼いていく。
 いい加減ドラゴンも、鬱陶しくなってきたようだ。

 体長一メートルくらいの昆虫型。

 成虫だと、エルフ達の矢が刺さらない。
 弱いところ。
 羽の付け根などを狙っているようだが、なかなか刺さらない。
「くそう。風が巻くし、スピードが速い」
 そんな、弱気な声まで聞こえてくる。

「自分たちが守ると決めた木だろう、気合いを入れろ」
 叫んだのは、驚くことに巫女カロル=ヴィルジニー=エロディ=シュラール。
 自身も矢を放ちながら……
 なんか、雰囲気が違う。

 どうも、エルフ達。世界樹から力を貰っているような気がする。

 とりあえず、上の方にいる奴はドラゴンと俺達が潰していく。
 今だに出てくる、シカーダラーバとさなぎは、エルフ達でも倒せる。

「いやもう、俺だけで百は倒したぞ」

「世界樹は、根も広い。弱るまで奴らが増えていたのなら、数は分からん」
 ドラゴンから、そんなありがたい話が聞こえてくる。

 気になって、もう一度取り付いている奴らを探査する。
 おおっ。本当に多い。
 根自体がこの島を構築している。それに取り付き、びっしりといるようだ。

 うーん。
 エネルギーの流れ。
 コイツに乗せて、一気に魔法を展開をする。
 そうすれば、幹に取り付いる奴も一気に倒せるかも。

 気を錬り、準備をしていくと、世界樹から反応がくる。

 そうエルフのように、体へ力が流れ込んでくる。
 体へ、青白い光となって見える、この星のエネルギー。
 それが、一気に流れ込んでくる。

「おおお。いっけえぇぇ」
 すると、島が揺れた。
 そんなに小さい島ではない。多分直径では、五十キロを超えているだろう。

 すると、体から煙を吹き出しながら、木の幹に居た奴らが落ちて来始める。
「うまくいったようだな」
 あれだけの大魔法なのに、体が動く。
 魔力も、枯渇をしていない。
 それどころか、まだドンドン追加で入ってくる。

 その時、エルフ達は奇蹟を見ていた。
 世界樹との繋がりが多いものが、巫女となる。

 それがアシュアスには、体の大きさでダイレクトにエネルギーがチャージされている。エルフ達でも、親指の太さくらいの管が繋がっている感じ。
 そして巫女でも、拳ほどは無い。

 それが、あのヒト族は、体からあふれるほどのエネルギーを受けている。
 それで平気なのもおかしいが、今、空から降ってきている成虫は、彼が何かを行ったのだろう。
 さらに、世界樹の輝きが増している。

 這い出す幼虫も、今は居なくなって、地表に出ているシカーダラーバと、さなぎはあとわずか。

 あの震動。
 あそこで何かが変わった。

 煙を上げているモンスター。
「これは内側から燃やされている? もしや、魔法を放ったのか……」
 さすが長老。ナニをしたのか、理解が出来たようだ。

「だが考えるのは良いが、実際出来るのか? そんな事が……」

 だが考えても、答えは出ない。実際、平気で彼は走り回り、ガンガン魔法を使っている。

 やがて彼らも、終わりがやって来る。

 地上には、おびただしい数のシカーダと、シカーダラーバ。

 いま、最後の一匹が、エルフ達により、めった刺しになっている。
 かなりテンションが上がっていたようだ。
 最後の一匹が倒れると、糸が切れたように、エルフ達も座り込む。

 さなぎたちの白濁した体液をかぶり、絵面が非常にやばいものとなっている。

 だが、やり終えたという結果と、光を取り戻した世界樹。
 全員が、満足し笑顔を浮かべていた。


 だが、そこからが、本当の試練。
 疲れ切った体を引きずり、穴を掘り、死体を放り込んでは燃やしていく。
 結構、傷むのが早い。

 夜通しの作業。
 皆がおかしなテンションになっていく。
 そう思ったら、飲んでやがった。
 そう思ったが違う。

 そんな雰囲気だが、飲んでいる奴はいない。
 そうか、シカーダたちの体液が、発酵をして、何かが出来ている。

 皆がそれに酔ってきている。
 エルフ達は、本来長命であるため、種族保存の本能が薄い。
 なのに、この妙なものはやばい。

 森の暗闇で、変なことをしてやがる。

 世界樹の青く、美しい光。
 まるで、海の底にいるような気分になる。
 そう雰囲気は、最高だ。

「おい、早く片付けて燃やさないと、やばいことになりそうだ」
「えっ。あっ。うん」
 うちのメンバー達は、酔ってはいないが、見とれている。

 幾度か、道中の宿で感じた雰囲気。
 目をつぶり、蓋をしたモノが、そこら中で行われている。

 若いとはいえ、興味はある。
「なんだか、気持ちが良さそうね」
 真面目なはずの、フィアまでそんな事を言い出す始末。
 リーポスは、片付けをほっぽって見に行っているし。

「あれ? アミルとクノープは何処へ行った?」
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