25 / 80
第3章 エルレラ大陸
第25話 解決そして霊峰へ
しおりを挟む
「きっちり記憶を失った、アーベルさんに説明をいたしますと、このお二人。今のあなたの奥さんクリステさんとその娘エリカちゃんです。私はたまたま宿泊をしている冒険者アシュアスと、うちのチーム」
「リーポスだ」
「フィアです」
「アミルです」
「クノープだ」
一応手を上げながら名前を言う。
「以上がメンバーです。あなたは、三年前」
「四年だ」
女将さんから突っ込まれる。
「―― 四年前、シーサーペントに食われた。ところがどっこい死ぬことなく、クリステさんに助けられた。そして、お子さんであるエリカちゃんが生まれた。そして、たまたま生きているところを見つけて、話し合いに行った後、またシーサーペントに食われ、クリステさんとの生活を忘れ元の生活を思いだした。今ここです。理解しましたね」
本人はそう言われても、首をひねっているが話を進める。
「そして、何事も無かったかの様に、元のポジションに収まりましたが、そうはいけません。この四年の生活があります。まだエリカちゃんは小さいですし、漁をして魚をおろしているお店もいます。冷却系の魔法は使えますか?」
「俺が魔法? そんなもの…… 出来るじゃねえか。何でだ」
「特訓をしたそうです。滝に打たれ、座縁を組み…… まあ魔法の修行としては、大きな間違いですが、なぜか使えるようになったそうです。ラッキーですね。さてと、今現状、あなたは死んだものと思い。辛いお気持ちを克服し、新しい生活を始めた、女将さん。マリベルさんと娘さんであるルネさんにとって、その決意と苦労をすべて無駄にする存在があなたであり、あなたを必要としている、クリステさんとエリカちゃんを忘れている極悪人があなたです」
そう言って、びしぃと指をさす。
本人は、目を白黒。
「だが、そうだとしても、俺は思い出せねえ」
そう言うと、クリステさんの頬に涙が伝う。
きっと心情では仕方ないと思いつつも、ひどい人だと思っているだろう。
そう思っていたら、リーポスも思ったようだ。
「ひどい人よね。良いわ。クノープ殺っておしまい」
そう言って、クノープをけしかける。
「ええ、何で俺? でも殺っちゃうと、それはそれでクリステさんが困るだろう。子育てと、合間の干物作り以外、何も出来ないんだろ」
矛先が変わり、図星なのか、はうっと言う感じで、クリステさんが胸を押さえる。
「すみません。マリベルさんは苦労して、ルネちゃんを育てたのに。その間私は、この人におんぶ抱っこで……」
「そうですね」
本人が言っているから、肯定をしておこう。
「はうっ」
何かクリティカルな、ものが入ったようだ。
伝っていた涙が、土砂降りになった。
「そこで、周りから見ている者としては、アーベルさんは漁師をして、女将さんはイカ料理とクリステさんはイカも干物を作る。そうやってここで暮らせば、一件落着ですね。後は本人達の心情次第」
「私はかまわないよ」
「いよ、おかみさん太っ腹」
何処で覚えたのか、クノープが変なかけ声をする。
「太っ腹?」
「ああ、習ったところによると、剛気だとかそういう意味だそうですよ。見た目じゃなく」
「そうかい。それなら良いが、この人が死んだと思って、少し緩んじまったかもねえ」
少ししんみりしていると、そっと手が上がる。
「私も出来ればここに置いていただけると、そのお家も立派ですし。本当に生活能力が無くて。イカの干物も美味しいですよ。私得意です」
何とか話が収まったようだ。
大人達がそんなことを話していると、すでにルネちゃんとエリカちゃんは仲良くなったようだ。
「そうだ。精霊の住む森のことを、知りませんか?」
「精霊? 霊峰があってそこには精霊が住んでいるって聞いたけどね」
「遠いんですか?」
「まあ、街道沿いに行って、途中から山に向けていく道が出る。霊峰の下には立派な教会が建っているからすぐ分かるよ。霊峰の名前はクーマノコードというんだ」
「へー。行って見よう」
それから数日して、干物を旅の保存食として貰った。
各自が小分けして持っているが、油紙を通しても結構匂う気がする。
街道の途中から、匂いにひかれて、狼系のモンスターや獣人がやって来る。
「よー。兄ちゃんいい匂いさせているな。売ってくれよ」
そう言われるのだ。
店の場所を教えて別れる。
そんな事を幾度かして、参拝街道と言う道を、山に向けて進んでいく。
なぜか、周りには、フードをかぶった人たちが増えて来始める。
どうやらその装束が、参拝の決まりらしく、それを着ていないと止められることがある様だ。
ペラペラなのに金貨一枚。
だが、霊峰に近くなると、もっと値上がりをするようだ。
原材料の都合で、縫製をしているところが近く、まだ安いのだそうだ。
軽くて強く、蒸れないらしい。
エルーカフィラムという、虫の出す糸を紡いだ物だそうだ。
そして、それのおかげか、問題なく教会に入り、奥の院へと向かう。
そこには、蛾の群れが飛んでいた。
エルーカフィラムの成虫。
鱗粉を吸い込むと毒なので、この装束が必要だったようだ。
そうして、一応拝んで。
さらに奥へと進む。
ある程度行くと、森の植生が変わって、エルーカフィラムもいなくなった。
そして声が聞こえる。
「なんだ、同種のものから、加護を貰っておるのか」
うん山だから。フェンリルが出たよ。
よだれを垂らして。
「リーポスだ」
「フィアです」
「アミルです」
「クノープだ」
一応手を上げながら名前を言う。
「以上がメンバーです。あなたは、三年前」
「四年だ」
女将さんから突っ込まれる。
「―― 四年前、シーサーペントに食われた。ところがどっこい死ぬことなく、クリステさんに助けられた。そして、お子さんであるエリカちゃんが生まれた。そして、たまたま生きているところを見つけて、話し合いに行った後、またシーサーペントに食われ、クリステさんとの生活を忘れ元の生活を思いだした。今ここです。理解しましたね」
本人はそう言われても、首をひねっているが話を進める。
「そして、何事も無かったかの様に、元のポジションに収まりましたが、そうはいけません。この四年の生活があります。まだエリカちゃんは小さいですし、漁をして魚をおろしているお店もいます。冷却系の魔法は使えますか?」
「俺が魔法? そんなもの…… 出来るじゃねえか。何でだ」
「特訓をしたそうです。滝に打たれ、座縁を組み…… まあ魔法の修行としては、大きな間違いですが、なぜか使えるようになったそうです。ラッキーですね。さてと、今現状、あなたは死んだものと思い。辛いお気持ちを克服し、新しい生活を始めた、女将さん。マリベルさんと娘さんであるルネさんにとって、その決意と苦労をすべて無駄にする存在があなたであり、あなたを必要としている、クリステさんとエリカちゃんを忘れている極悪人があなたです」
そう言って、びしぃと指をさす。
本人は、目を白黒。
「だが、そうだとしても、俺は思い出せねえ」
そう言うと、クリステさんの頬に涙が伝う。
きっと心情では仕方ないと思いつつも、ひどい人だと思っているだろう。
そう思っていたら、リーポスも思ったようだ。
「ひどい人よね。良いわ。クノープ殺っておしまい」
そう言って、クノープをけしかける。
「ええ、何で俺? でも殺っちゃうと、それはそれでクリステさんが困るだろう。子育てと、合間の干物作り以外、何も出来ないんだろ」
矛先が変わり、図星なのか、はうっと言う感じで、クリステさんが胸を押さえる。
「すみません。マリベルさんは苦労して、ルネちゃんを育てたのに。その間私は、この人におんぶ抱っこで……」
「そうですね」
本人が言っているから、肯定をしておこう。
「はうっ」
何かクリティカルな、ものが入ったようだ。
伝っていた涙が、土砂降りになった。
「そこで、周りから見ている者としては、アーベルさんは漁師をして、女将さんはイカ料理とクリステさんはイカも干物を作る。そうやってここで暮らせば、一件落着ですね。後は本人達の心情次第」
「私はかまわないよ」
「いよ、おかみさん太っ腹」
何処で覚えたのか、クノープが変なかけ声をする。
「太っ腹?」
「ああ、習ったところによると、剛気だとかそういう意味だそうですよ。見た目じゃなく」
「そうかい。それなら良いが、この人が死んだと思って、少し緩んじまったかもねえ」
少ししんみりしていると、そっと手が上がる。
「私も出来ればここに置いていただけると、そのお家も立派ですし。本当に生活能力が無くて。イカの干物も美味しいですよ。私得意です」
何とか話が収まったようだ。
大人達がそんなことを話していると、すでにルネちゃんとエリカちゃんは仲良くなったようだ。
「そうだ。精霊の住む森のことを、知りませんか?」
「精霊? 霊峰があってそこには精霊が住んでいるって聞いたけどね」
「遠いんですか?」
「まあ、街道沿いに行って、途中から山に向けていく道が出る。霊峰の下には立派な教会が建っているからすぐ分かるよ。霊峰の名前はクーマノコードというんだ」
「へー。行って見よう」
それから数日して、干物を旅の保存食として貰った。
各自が小分けして持っているが、油紙を通しても結構匂う気がする。
街道の途中から、匂いにひかれて、狼系のモンスターや獣人がやって来る。
「よー。兄ちゃんいい匂いさせているな。売ってくれよ」
そう言われるのだ。
店の場所を教えて別れる。
そんな事を幾度かして、参拝街道と言う道を、山に向けて進んでいく。
なぜか、周りには、フードをかぶった人たちが増えて来始める。
どうやらその装束が、参拝の決まりらしく、それを着ていないと止められることがある様だ。
ペラペラなのに金貨一枚。
だが、霊峰に近くなると、もっと値上がりをするようだ。
原材料の都合で、縫製をしているところが近く、まだ安いのだそうだ。
軽くて強く、蒸れないらしい。
エルーカフィラムという、虫の出す糸を紡いだ物だそうだ。
そして、それのおかげか、問題なく教会に入り、奥の院へと向かう。
そこには、蛾の群れが飛んでいた。
エルーカフィラムの成虫。
鱗粉を吸い込むと毒なので、この装束が必要だったようだ。
そうして、一応拝んで。
さらに奥へと進む。
ある程度行くと、森の植生が変わって、エルーカフィラムもいなくなった。
そして声が聞こえる。
「なんだ、同種のものから、加護を貰っておるのか」
うん山だから。フェンリルが出たよ。
よだれを垂らして。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。
The Dark eater ~逆追放された勇者は、魔剣の力で闇を喰らいつくす~
紫静馬
ファンタジー
「思い出した。自分はこいつに殺された。追放したこの男に。聖剣も、勇者の名も、何もかも奪われて殺されたんだ……!」
アトール王国公爵家の息子として何不自由なく暮らしていたレッド・H・カーティス。
彼は聖剣に選ばれた伝説の勇者として、古より蘇った魔王討伐の旅に向かうこととなる。
しかし、そのパーティメンバーの中に亜人の少年、アレン・ヴァルドが入った時、彼は全てを思い出した。
自分はこれから彼を差別、迫害し――そして一年後、追放する。
そしてその半年後に、追放した彼に聖剣も何もかも奪われて、殺されるのだと。
未来を変えるべく彼は奔走し、その結果確かに未来は変わった。
全てに裏切られ、もう一度聖剣も勇者の名も何もかも奪われて、破滅するという未来に。
絶望した彼に、世界を救う聖剣と光の鎧ではなく、世界を喰らう魔剣と闇の鎧がもたらされる。
自分を裏切ったあらゆる者への復讐のため、彼は漆黒の剣を手にすることを選んだ。
――今はまだ、誰も知らない。
その戦いが、聖剣とこの歪んだ世界全てを喰らう怪物の、伝説の序章でしかないということを
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる