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第3章 エルレラ大陸

第23話 おばさん。もとい、お姉さまの敵

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「さー食べな」
 さっき焼かれていたのは、イカという生き物らしい。
 魚を発酵させた、魚醤を用いて香ばしく焼いたもの。

「美味ーい」
 だが……

 イカ焼き、イカ刺し、小麦を錬ったものにイカが入ったもの。
 イカの中にマメを入れて煮込んだもの。
 イカと男爵芋の煮込み。
 イカ団子。
 
「美味しい。そう、非常に。でも…… 他の物は?」
 聞いてはいけない雰囲気だが、あえて聞く。

「無い。イカは目の前で、幾らでも獲れるのさ。他の物は買わなきゃイカない…… それには、金が要るんだぁ」
 そう言って天を仰ぐ。
 おばさん……

 子供を育てた、立派な胸がぶるんと揺れる。

「周りは空き家みたいですが、どうして此処に?」
「ふっ。ここは主人が建てた家なんだ。お金がなくてね。適当にだが……」
 そう言って、また胸を張り、ぶるんとさせる。

「無駄に丈夫なのさ」

 そう強度計算や、材料費などを考えない素人建築。
 すると、無駄に丈夫なものが造られる。

 まあそれとは別に、年に数回、シーサーペントという魔物が浅瀬にやって来るらしい。
 餌にしている魚が産卵とかで、浅瀬に来るため追いかけてくるようだ。

「じゃあ、旦那さんはモンスターと戦って?」
「あの人は、シーサーペントに追われて、陸によってくる魚をかすめ取ろうとして…… 間違って食われちまったのさ」
 そう言って、遠くを見つめるおばさん。

 うーんと言う雰囲気だが。
「そりゃ。悲しい事故ですね」
 一応そう答える。

「いい人だったが、少しだけ考えがなくてね」

「どうして帰らないんですか?」
「ああ、エベラルドトゥリーには海が無いんだ」
「あっええ。そうですが。トヨース漁港やツイージ漁港もあるでしょう?」
「バカだね。住むところはどうすんだい? この子だっているのに」
「ああ。そりゃそうか」
 それに向こうには獣人がいない。

 ――なぜだろう?

「向こうでは、獣人がいませんでしたよね?」
「住み辛いからね。しっぽも耳も隠しているのさ。完全体の獣人は、向こうの大陸など興味が無いしね」
「へーそうなんですね」

 で翌日、イカ以外を捕まえる。
 雷魔法で簡単に獲れたな。
 目の前には、大量の魚やイカが浮いている。
 よく分からない生き物も、浮いているがまあ良いだろう。

 そう思ったら、潜って貝を獲っている獣人だったようだ。
 毛が張り付いて、一瞬モンスターかと思ったんだよ。そっと波止場に寝かしておく。

 さっさと、魚を持って帰ると、いきなり海に向けて魚が投げ込まれる。
「このあたりは、毒があるから食ったら死ぬよ」
 ちょっと丸かったり、尖っていたり色々な魚がいる。

 そして、料理をしてもらったら、ゲロマズだった。
 イカは美味しかったのに、魚は泥臭かったり、何だろ生臭い?

 じっと見ていると、腹を処理していない。
 鱗は剥がしているが、内臓は駄目な気がする。

 こそっと、川魚と同じように料理をしてみる。
 単なる塩焼き。

 だが独特の臭みがある。

 うーん。

 試しに、皆で手分けをして、色んな店で魚料理を食べてみる。
 臭みは強かったり弱かったり。
 その中で、一軒すごく美味しいところがあった。
 なんと生の切り身まで、メニューにあった。

「これ、すごいですねえ」
「ああっ? あんた人種なのに分かるのかい?」
「ええ、独特の臭みがしませんね」
「そうだろ。おれは独自のルートで仕入れていてな。おっとここまでだ」

 そう言って厨房に戻った店主だが、俺の鼻は捉えていた、手から匂った酒や柑橘系の匂い。そして、魚からもその匂いと塩み。

 後は店を見張り、仕入れの特殊なことを探れば良い。

 そう思っていたら、夕方の仕込み分なのか木の箱が運ばれてくる。
 蓋を開けたときに見えた氷。

 そうか。氷で冷やすのか。
 俺達は魔法が使えるが、女将さん達は出来るのか?
 まあ、あの猟師を頼れば良いのか。

 新しい波止場の脇にある漁師用の船着き場。
 そこで、小さな船を洗っていた。
 その船縁には、大量の疑似餌が並んでいた。

 そして洗い終わると、町とは逆の陸に上がり、一軒の掘っ立て小屋のような家に入って行く。奥さんらしき人と、小さな子供も迎えに出てくる。
「あそこが家だな」

 仕入れ先は見つけた、後は冷やした魚と、塩や酒、柑橘類。
 その組み合わせで、大丈夫か試してみよう。

 捕ってすぐに冷やすと全然違った。
 その後酒をまぶしたり、水で洗ったり、塩を振ったり、塩水で洗ったり、さっと茹でてみたり、色々試す。

 だが、面倒だが、魚によって身が違いそれぞれ持ち味が違う。
 良いと思えるものを、メモをして女将さんに教える。

 そうして、魔法が使えないというので、あの漁師のところへ連れて行く。

 するとまあ、いきなり殴り始める。
「なんだいあんた達」
 獣人側の奥さんが止めに入る。
 女将さんに殴られて、親にもぶたれたことが無いという感じで、驚いている猟師さん。

 むろん。
「あんた、何をやってんだい?」
 まあそこからは、良くある話。
 
 旦那さんは、シーサーペントに食われた。

 だがまずかったのか、吐き出され、海を漂い、打ち上げられた。
 そして、今の奥さんが見つけて、介抱したら復活したが、記憶が無い。

 世話になった御礼に、奥さんのお父さんが使っていた、船や道具を使い。魚を獲って売り始める。
 だが沖で獲って戻ってくると、傷むことが多く、凍らせることを思いついた。
 でまあ、なる様になっちゃったと。
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