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第2章 地方都市 エベラルドトゥリー
第17話 高い山には、湧いてくる奴ら
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皆で、バケツを持って、斜面を疾走する。
「どうして、マウンテンカウは、こんな所に住んでいるんだろうねえ。草だって少ないのに」
リーポスがぼやく。
彼女は体型的に、こういうところは苦手。
布を巻いて抑えているが、上下動があると、胸の上面が引っ張られて、痛いのだそうだ。
「敵が少ないんだろう」
牛なのに、山羊のように俊敏。そして、体自体は草原にいるものより少し小さい。
いや、草原にいる奴の方が大きいのか。
一番大きいプレーリジャイアントバッファローは、体高で二メートルを超える。
マウンテンカウは、その半分くらいだ。
そして昨日の所へ来たが、やっかいな奴らが、マウンテンカウを襲っていた。
そう、ワイバーン。
翼の生えたトカゲたちが、三羽ほど飛び交っている。
マウンテンカウ達は、器用に逃げ回っている。
気があうことに、全員が、石を握りしめて投げる。
ワイバーンの頭部が破裂し、谷底へ落ちてしまった。
「しまった。後で拾いに行こう」
俺達が倒したのを判ったのか、皆が一斉にこっちを見る。
ちょっと怖いので、つい手を上げて挨拶をする。
そのおかげか、俺達がとろくさくても、きちんと搾らせてもらえた。
ほくほく顔で、今度は谷へと降りる。
するとだね。
ワイバーンを食べようと、一生懸命マウンテンウルフがかじりついていた。
「皮膚が硬いからなぁ」
また石を掴んで投げる。
乳をこぼさないように慎重に。
都合十匹ほど。
「さて問題です。どうやって持って帰る?」
「私たちが、バケツを持つから、アシュアス達で何とかして」
「うーん。まあそうなるか。荷車を作って持って帰るから、先に乳を帰ってくれて良いよ」
「はーい」
皆を見送ってから、クノープと二人。
少し麓まで、マウンテンウルフ達を担いで運ぶ。
そして戻ると、またかじりついていた。
「なんだ、こいつら?」
また石を投げて、退治する。
運んで戻るとまた……
ちょっと運んで、様子を見てみる。
すると、谷の反対側。森の中から奴らは来ていた。
「巣でもあるのか?」
「ゴブリンじゃあるまいし」
クノープにそう言われるが、森へと入る。
探査を撃つと大きな個体がいる。
「だが、これは?」
「マウンテンウルフじゃないな」
二人で奥へ入ると、狼たちを従え一際大きな個体が居た。
番なのか二匹。
「人間の来るところではない。ここは我らの場所」
一匹は、弱っているようで、もう一匹が前に出てそう言ってくる。
むろん言葉ではなく、頭に直接響く。
そうだ、聞いたことがある。
「森の守護者、オルトロス」
俺がそう言ったら、声が響く。
「たわけ。私が犬に見えるのか、お前達はフェンリルと呼んでおろうが」
叱られた。
「フェンリルって、もっと湿原の方に住んでいるんじゃないのか?」
「情けないことに、やられたのだよ。ドラゴンに遊ばれてな」
降下してきたのを躱して、飛び上がったところで、しっぽの一撃を食らったらしい。
「ちょっと見せてくれ。治せるかもしれない」
「なに? おい、ちょっとまて……」
そう言ったときは、すでに横。
クノープは、守っていたもう一匹を牽制する。
「叩かれたところが、線状に折れているな」
前足の肩から、肋骨。後ろ足の膝まで。
順に治していく。
「うん? おおっ。ふむ。鼻の頭にあった皺が消え、表情が穏やかになる」
いくつかの古傷もあったので、壊れているところを治すために、いきなりナイフ。躊躇無く突き刺す。
「ぎゃおおおーん」
「お前何を?」
クノープが見ていた個体から、周囲に怒りが撒き散らされる。
周囲にいたマウンテンウルフ達が怖がり、一気に逃げて行った。
「ああ、古傷は一度開いて治さないと駄目なんだ」
その間も、ギャンギャンやかましい。
「黙れ」
威圧をすると、目の前の奴も背後の奴も、一廻り大きくなる。
毛が逆立ったようだ。
犬なのに、表情が分かる。そう考えたら聞こえたようだ。
「犬ではないというのに……」
そっと、ぼやきが来た。
治療が済むと、起き上がれるようになった様だ。
「おおっ。ふむ。突っ張っていた、古傷まで治った」
「良かったわね。あなた」
もう一匹はメスだったようだ。
「何か望め。礼だ」
「特には必要ないが…… それじゃあ、精霊種の住む森を知らない?」
「精霊種? ふむ。それは人型かな?」
「そう。多分」
「わしらも、一応精霊種と呼ばれるものだが……」
「精霊種の住まう森に、フォビドゥンフルーツというのがあるらしくて、それを探しているんだ」
「ふむ…… …… どうしようぞ。エクレフ」
「水の精霊様?」
「ああ」
「大丈夫だと思います。人間? では無いようだし……」
フェンリルに、人間じゃない判定をされてしまった。
この時に、アシュアスは重大な失敗をした。
素直に、聞けば良かった。
魔力が多いが為に、起こってしまっている、自家性魔力中毒症。
その治療法を聞けば良かった。
基本魔力が多いフェンリル達にも、そういう個体は多い。
そうすれば彼は、「大きくなり、体が丈夫になるまで、魔力回路を少し閉じれば良い」簡単にそう教えてくれただろう。
閉じないが為に、あふれる魔力で体が壊れ。耐えられるからだが作られない。
だから、死んでしまう。
「まあ、水の精霊様の所に、連れて行ってやる。聞きたいことを尋ねるがいい」
そうして、フィア達が心配をすることも忘れて、二人はついて行ってしまった。
「どうして、マウンテンカウは、こんな所に住んでいるんだろうねえ。草だって少ないのに」
リーポスがぼやく。
彼女は体型的に、こういうところは苦手。
布を巻いて抑えているが、上下動があると、胸の上面が引っ張られて、痛いのだそうだ。
「敵が少ないんだろう」
牛なのに、山羊のように俊敏。そして、体自体は草原にいるものより少し小さい。
いや、草原にいる奴の方が大きいのか。
一番大きいプレーリジャイアントバッファローは、体高で二メートルを超える。
マウンテンカウは、その半分くらいだ。
そして昨日の所へ来たが、やっかいな奴らが、マウンテンカウを襲っていた。
そう、ワイバーン。
翼の生えたトカゲたちが、三羽ほど飛び交っている。
マウンテンカウ達は、器用に逃げ回っている。
気があうことに、全員が、石を握りしめて投げる。
ワイバーンの頭部が破裂し、谷底へ落ちてしまった。
「しまった。後で拾いに行こう」
俺達が倒したのを判ったのか、皆が一斉にこっちを見る。
ちょっと怖いので、つい手を上げて挨拶をする。
そのおかげか、俺達がとろくさくても、きちんと搾らせてもらえた。
ほくほく顔で、今度は谷へと降りる。
するとだね。
ワイバーンを食べようと、一生懸命マウンテンウルフがかじりついていた。
「皮膚が硬いからなぁ」
また石を掴んで投げる。
乳をこぼさないように慎重に。
都合十匹ほど。
「さて問題です。どうやって持って帰る?」
「私たちが、バケツを持つから、アシュアス達で何とかして」
「うーん。まあそうなるか。荷車を作って持って帰るから、先に乳を帰ってくれて良いよ」
「はーい」
皆を見送ってから、クノープと二人。
少し麓まで、マウンテンウルフ達を担いで運ぶ。
そして戻ると、またかじりついていた。
「なんだ、こいつら?」
また石を投げて、退治する。
運んで戻るとまた……
ちょっと運んで、様子を見てみる。
すると、谷の反対側。森の中から奴らは来ていた。
「巣でもあるのか?」
「ゴブリンじゃあるまいし」
クノープにそう言われるが、森へと入る。
探査を撃つと大きな個体がいる。
「だが、これは?」
「マウンテンウルフじゃないな」
二人で奥へ入ると、狼たちを従え一際大きな個体が居た。
番なのか二匹。
「人間の来るところではない。ここは我らの場所」
一匹は、弱っているようで、もう一匹が前に出てそう言ってくる。
むろん言葉ではなく、頭に直接響く。
そうだ、聞いたことがある。
「森の守護者、オルトロス」
俺がそう言ったら、声が響く。
「たわけ。私が犬に見えるのか、お前達はフェンリルと呼んでおろうが」
叱られた。
「フェンリルって、もっと湿原の方に住んでいるんじゃないのか?」
「情けないことに、やられたのだよ。ドラゴンに遊ばれてな」
降下してきたのを躱して、飛び上がったところで、しっぽの一撃を食らったらしい。
「ちょっと見せてくれ。治せるかもしれない」
「なに? おい、ちょっとまて……」
そう言ったときは、すでに横。
クノープは、守っていたもう一匹を牽制する。
「叩かれたところが、線状に折れているな」
前足の肩から、肋骨。後ろ足の膝まで。
順に治していく。
「うん? おおっ。ふむ。鼻の頭にあった皺が消え、表情が穏やかになる」
いくつかの古傷もあったので、壊れているところを治すために、いきなりナイフ。躊躇無く突き刺す。
「ぎゃおおおーん」
「お前何を?」
クノープが見ていた個体から、周囲に怒りが撒き散らされる。
周囲にいたマウンテンウルフ達が怖がり、一気に逃げて行った。
「ああ、古傷は一度開いて治さないと駄目なんだ」
その間も、ギャンギャンやかましい。
「黙れ」
威圧をすると、目の前の奴も背後の奴も、一廻り大きくなる。
毛が逆立ったようだ。
犬なのに、表情が分かる。そう考えたら聞こえたようだ。
「犬ではないというのに……」
そっと、ぼやきが来た。
治療が済むと、起き上がれるようになった様だ。
「おおっ。ふむ。突っ張っていた、古傷まで治った」
「良かったわね。あなた」
もう一匹はメスだったようだ。
「何か望め。礼だ」
「特には必要ないが…… それじゃあ、精霊種の住む森を知らない?」
「精霊種? ふむ。それは人型かな?」
「そう。多分」
「わしらも、一応精霊種と呼ばれるものだが……」
「精霊種の住まう森に、フォビドゥンフルーツというのがあるらしくて、それを探しているんだ」
「ふむ…… …… どうしようぞ。エクレフ」
「水の精霊様?」
「ああ」
「大丈夫だと思います。人間? では無いようだし……」
フェンリルに、人間じゃない判定をされてしまった。
この時に、アシュアスは重大な失敗をした。
素直に、聞けば良かった。
魔力が多いが為に、起こってしまっている、自家性魔力中毒症。
その治療法を聞けば良かった。
基本魔力が多いフェンリル達にも、そういう個体は多い。
そうすれば彼は、「大きくなり、体が丈夫になるまで、魔力回路を少し閉じれば良い」簡単にそう教えてくれただろう。
閉じないが為に、あふれる魔力で体が壊れ。耐えられるからだが作られない。
だから、死んでしまう。
「まあ、水の精霊様の所に、連れて行ってやる。聞きたいことを尋ねるがいい」
そうして、フィア達が心配をすることも忘れて、二人はついて行ってしまった。
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