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第2章 地方都市 エベラルドトゥリー

第13話 忍び寄る影は見られていた。

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「では、行きましょうか」
 商隊は、町を出発をする。

 きちんと、捕まっていた人たちは、解放をしてきた。
 この町は怪しいから、一つ手前の村へ行くようにと説明をして。
 ただ、見えていた領主の館。あの人が後ろで糸を引いているとなると、何処だろうが一緒だが。

 昨日と同じように、適当に護衛をする。
 ただ、仲間達には事情は伝えているから、全員が警戒をしている。


 ―― その日彼らは、いつもの様に、決められた仕事をこなしていた。
 今の頭となってから、安全に盗賊が行えている。

 街道とは違う、もう一本の道。
 そこから先回りをして、街道を倒木や落石で塞ぐ、荷馬車が通れない程度に隙間を空ける。

 商隊の後背を突けば、奴らは、荷物を置いて逃げ出す。
 じゃまな男は逃がし、足の遅い女は捕まえる。上り坂を素早く逃げる奴は少ない。

 荷馬車には、当然だが家紋などは入っていない。
 奪った後は、商隊の振りをして、街へ帰れば良い。

「今日は、良い天気だなあ」
「全くだ。絶好の盗賊日和だ」

 この盗賊団、弱い奴は弓隊。
 そして、剣技を習えばサポート部隊。
 そして上位は、実行部隊となっている。
 むろんそのランクで、報酬に差が出る。

 だがその区別により、安全が確保されている。

 そして、いつもの場所。
 峠よりは手前で、回り込み。町からは見えない所。
 少し谷となり、尾根にはさまれた所。

 いつもの様に、後ろから追いかける。

 だが商隊は、止まることなく街道を進んでいく。
「あれ? 止めなかったのか、落石や倒木は?」
「知るか、失敗だ」
 目の前を遠ざかる、満杯の荷物達。
 その荷物の上で、仁王立ちをする赤髪の女。

 少し前。
 少し考えて、アシュアスだけが先行をする。
 山の上側に、三十人程度の盗賊が待っている。

「自分なら街道を塞いで、逃げられなくする。ちょっと行ってくる」

 山道を登る馬車など遅い。
 一気に先頭を追い抜き、峠まで駆け上がっていく。

 峠の手前で、街道上へ乱雑に置かれた、直径一メートル程度の岩達を発見する。

 アシュアスがそっと崖下を見る。下に街道が通っていないことを確認をすると、ぽいぽいと崖下へ、岩を転がす。

 設置すれば、もう用はないのか盗賊達は、少し下手。さっき気が付いた所に集まっているようだ。

 少し峠側に進み、崖の上へと上がる。

 奴らの道を見つけると、一気に駆け下りる。

 道の脇に膝をつき、街道を見張る盗賊達。
 全員が弓を構えている。

 止まることなく、十メートルはある崖下へと、盗賊達を突き落としていく。
 それは、滝壺へ落ちる水のように、端から順に崖下へ見事に落ちていく。
 下では、クノープ達が待ち構えており、順に縛っていく。

 三十人の弓隊。ひとつなぎの大盗族が出来上がる。

 もっと下ると、二十人ほどの出番を待つ男達。
 
 アシュアスは、音を立てないくらいで、雷をばら撒く。
 これも、崖下へ投げる。

 
 あと十人ほど、もう少し下に居る。

「結構面倒だな」
 ぼやきながら走っていく。


「なぜ、馬車が止まらねえ」
「どうせ、へまをしやがったんだ。奴ら面倒ごとは新人にやらすから、綺麗に封鎖ができていなかったんだろう」
「失敗だ」
 幾人が同様の判断をして、崖上に戻るつもりで、道となっている涸れ沢へ移動をしようとした。
 だが、何かが駆け抜けると、体が動かなくなっていた。

 アシュアスは持っていた紐で、ひとつなぎにして行く。

 それを引きずり、坂を登っていく。

 途中で見つけた、呻いている二十人をまた縛っていく。

 そうしていると、仲間が降りてくる。
「商隊は、峠で休憩中」
「りょーかい。こいつらは、連れて行けば金になるんだろ」
「きっとなるでしょ」

 そうして、馬車の後ろで引きずられていく盗賊達。


 その頃、峠の反対側でも、盗賊達がハッスルをしていた。
 こっちは、本来の手順通りに、乱暴狼藉中。

「くっ。人数が多い。それに、矢が面倒だ」
 街道に置かれた岩を抜け、身一つで逃げ出した商人や護衛達。

 逃げ遅れた商人を冒険者達が守っているが、かなり厳しいようだ。

 そこに、馬車がやって来る。
「助かった」
 安堵をした冒険者。

「おおい。手を貸してくれ。盗賊だ」
 『海竜の天敵』というチーム。その代表であるエデュが、手を振る。

 むろん、アシュアス達は分かっていた。
 盗賊達を結んだ、殿の馬車。リーポスと代わって荷物の上にフィアが登り、弓で盗賊達を見張る。

 気が付けば、岩がなくなっていた。
「あれ、いつの間に」
「ああ、あの若い子が崖下に投げちまった」
 エデュの問いかけに、イーリスが雑に答える。

 オッサンのエデュ。一応チームの代表だが横で腕を組み、仁王立ちをするイーリスが実質的に仕切っている。

 イーリスは女性。
 日焼けした肌。亜麻色の髪とブラウンの瞳。
 肝っ玉母さん的な性格は、慕われている。
 体型的にも、リーポスとかぶっているのが気になる所だ。

 そう言っている間に、崖の上から盗賊達が降ってきて、崖下でも魔法が炸裂をしている。

「すげえな。良かったな。ありゃあ、相当の高ランクだ」
 一緒に居た商人や、仲間達も呆然と見つめる。

「すごい」
 いま、エデュに剣技を習っているアルトは呆然と見つめている。
 弓使いのクリシュは、銀髪でブルーアイ。おとなしい彼女だが、皆が使う魔法を見て、習いたいと思う気持ちが湧いてくる。
「すてき……」


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