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第2章 地方都市 エベラルドトゥリー
第12話 賢い盗賊団
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「今晩は、良いカモがそろっていますぜ」
夜になり、暗躍する者達が本性を見せる。
峠の盗賊は、あまり働かない? 今なら安全? そんなわけは無い。
頭を務める、カステド=コンスタンサ。
元男爵家の三男。スキームとアングラの町。その二つで直営の宿を経営している。
むろん、良い獲物が来れば、峠で襲うためだ。
短時間で効率よく稼ぐ。それが身上。
「サルツ商会というのも、荷馬車四台。女もいます」
「若そうか?」
「ええ、商会の娘も若そうだし、護衛の奴らも若そうでした」
下品な笑顔を浮かべる男は、宿の従業員。
「それは良い。明日は仕事だ。連絡をしとけ」
「へい」
カステドは、明日になったら手に入る女達を、どうするか考え始める。
「うーん。宿も含めて、こいつら駄目だな」
アシュアスは、妙な時間に活発になった、人の動きを検知して、追いかけてきていた。
ここは、スキームの町ではあるが、宿屋などが建ち並ぶ所から、さらに奥。
林の中に、かなり立派な家が建っている。
天井裏で話を聞いたアシュアスは、家の中を探検する。
探査をすると、地下があり幾つもの反応がある。
地下牢には、若そうな男や女の人が捕まっているようだ。
奴ら、盗賊の主立った奴らは、話しによると、夜明け前には山へと向かうようなので、その後なら手薄だろう。救出に来よう。
たぶん、それでも出発には間に合う。
「散歩か?」
クノープが、何かを炙りながら聞いてくる。
「そうだ。この町。宿も盗賊の一味だな」
そう言うと、皆が一応驚く。
「そうなの?」
アミルは魚を、串に刺して焼いている。
お金も勿体ないし、野営をする準備は出来ている。
俺達だけではなく、他の商隊に雇われた護衛達も周りにいて、以外と同じ考えのようだ。
「ああ。妙に人の動きが、さっきあっただろう」
「うん。あったね」
当然皆も気が付いていた。返事をしながら、すでに、フィアとリーポスは何かを囓っている。
「宿の客。その情報を伝えて、盗賊が仕事をするかしないかを決めているようだ」
「ほへー。いりょいりょと、考えるねぇ」
フィアが、もぐもぐと食べながら答える。
「それ、なんだ?」
「うしゃぎ。いっきゃくの」
「分かったけど、食べながらしゃべるな」
そう言ったら、串がこちらへ伸びてくる。
「たべりゅ? おいしいよ」
「ありがとう」
一口貰う。
タンパクだが、塩が良い感じで美味い。
「塩加減が完璧だな」
「でしょ」
「これも美味しいわよ」
リーポスが差し出してきたのは、カエルっぽいが、結構な大きさ。
「ジャイアントトードか?」
「しょう」
またこいつも、食いながらしゃべるし。
「また、ジャイアントフロッグと、間違えて無いだろうな」
「大丈夫、目の周りに瘤があったし」
自信満々にリーポスが答えるが、瘤が有るほうがまずい。
どちらも体長一メートルくらいだが、片方は無毒、片方はアルカロイド系の神経毒を耳線と言う瘤から出してくる。それに触れると、酔っ払う。
「瘤が有るほうが、ジャイアントフロッグ。毒持ちだ。白い液体には、触ってないだろうな」
「あーうん。でも、川で洗っちゃったから、どうだろう?」
全員で顔を見あわす。
「そりゃ下流側。大変かもな」
そう言うと、クノープがすこし嬉しそうに聞いてくる。
「拾いに行くか?」
「いや、良いだろう」
毒を流すと、魚が浮いてくる。
浮いた魚を食べると、毒が残っていて幻覚を見る事がある。
その事で、めったに見ないドラゴンキャットフィッシュが下流で暴れたらしく。大きな橋が流されたらしいが、この時の俺達は知らなかった。
後に、面倒が起こる。
夜半になり、俺が見張りをしている。
こんな場所だと、モンスターより、周りで野営をしている、護衛達の方が質が悪そうだ。
ぼーっと、燃える火を眺めながら、周りを探査する。
すると芋虫のように、フィアが這ってくる。
「どうした、寝てていいぞ」
「うん。まくら」
仕方が無いから、足をのばす。
こてんと、頭が乗ってくる。
「また明日も、盗賊退治。どうして盗賊になるんだろう」
「どうしてだろうな。奪うと作る人や運ぶ人が居なくなる。皆が困るのにな」
「そうね。どうせなら、モンスター退治でもすれば、喜ばれるのに」
「そうだな」
そう言って、頭をなでると嬉しそうに目が閉じる。
メルカトアさんの娘、リディアーヌは眠れずに寝返りを打っていた。
「何もない貧乏人のくせに」
馬車の中では見せないが、休憩中などにアシュアス達が見せる。嬉しそうな、じゃれ合い。
仲間を、信用しきった笑顔。
リディアーヌは、子供の頃から教えられた。人を信用してはいけないという、母親の教育と、父親であるメルカトアさんからは、信用をすることから、すべてが始まるという教えを受けた。
母親は、お金は裏切らないというのが持論。
お父さんは、お金は稼げば良い。
命と、信用。人を裏切ってはいけない。本当に信用できる人を見つけなさいと、口癖のように言う。
どちらが正しいのかは分からないが、先日あった盗賊は、人とは思えず怖かった。
それを、あっさりと壊してしまった、あの人達。
嬉しそうに笑い、じゃれ合う姿。
どれが本当なのか、リディアーヌは分からない。
ベッドから降りて、外を覗く。
まどは、板張りの跳ね上げ式だが、隙間があるため外が見える。
彼らは貧乏な連中とともに、外で野営をしている。
なにか、得体の知れない肉を分け合い、嬉しそうに話をする。
そして、外などで寝るから、一人が見張りをしている。
さっき起きたときには、そんな姿を見たが、いまは、女の子が一人。頭を預けてなでられている。
同じようなことを、小さな頃にしてもらった記憶がある。
「リディアーヌ。眠れないの? 良い子だからおやすみなさい」
あの頃のお母さんは、優しかった。
そして、今ほど、お金が大事だと言っていなかった。
リディアーヌはなぜかその時。隙間から見える景色が、ひどく羨ましく感じた。
夜になり、暗躍する者達が本性を見せる。
峠の盗賊は、あまり働かない? 今なら安全? そんなわけは無い。
頭を務める、カステド=コンスタンサ。
元男爵家の三男。スキームとアングラの町。その二つで直営の宿を経営している。
むろん、良い獲物が来れば、峠で襲うためだ。
短時間で効率よく稼ぐ。それが身上。
「サルツ商会というのも、荷馬車四台。女もいます」
「若そうか?」
「ええ、商会の娘も若そうだし、護衛の奴らも若そうでした」
下品な笑顔を浮かべる男は、宿の従業員。
「それは良い。明日は仕事だ。連絡をしとけ」
「へい」
カステドは、明日になったら手に入る女達を、どうするか考え始める。
「うーん。宿も含めて、こいつら駄目だな」
アシュアスは、妙な時間に活発になった、人の動きを検知して、追いかけてきていた。
ここは、スキームの町ではあるが、宿屋などが建ち並ぶ所から、さらに奥。
林の中に、かなり立派な家が建っている。
天井裏で話を聞いたアシュアスは、家の中を探検する。
探査をすると、地下があり幾つもの反応がある。
地下牢には、若そうな男や女の人が捕まっているようだ。
奴ら、盗賊の主立った奴らは、話しによると、夜明け前には山へと向かうようなので、その後なら手薄だろう。救出に来よう。
たぶん、それでも出発には間に合う。
「散歩か?」
クノープが、何かを炙りながら聞いてくる。
「そうだ。この町。宿も盗賊の一味だな」
そう言うと、皆が一応驚く。
「そうなの?」
アミルは魚を、串に刺して焼いている。
お金も勿体ないし、野営をする準備は出来ている。
俺達だけではなく、他の商隊に雇われた護衛達も周りにいて、以外と同じ考えのようだ。
「ああ。妙に人の動きが、さっきあっただろう」
「うん。あったね」
当然皆も気が付いていた。返事をしながら、すでに、フィアとリーポスは何かを囓っている。
「宿の客。その情報を伝えて、盗賊が仕事をするかしないかを決めているようだ」
「ほへー。いりょいりょと、考えるねぇ」
フィアが、もぐもぐと食べながら答える。
「それ、なんだ?」
「うしゃぎ。いっきゃくの」
「分かったけど、食べながらしゃべるな」
そう言ったら、串がこちらへ伸びてくる。
「たべりゅ? おいしいよ」
「ありがとう」
一口貰う。
タンパクだが、塩が良い感じで美味い。
「塩加減が完璧だな」
「でしょ」
「これも美味しいわよ」
リーポスが差し出してきたのは、カエルっぽいが、結構な大きさ。
「ジャイアントトードか?」
「しょう」
またこいつも、食いながらしゃべるし。
「また、ジャイアントフロッグと、間違えて無いだろうな」
「大丈夫、目の周りに瘤があったし」
自信満々にリーポスが答えるが、瘤が有るほうがまずい。
どちらも体長一メートルくらいだが、片方は無毒、片方はアルカロイド系の神経毒を耳線と言う瘤から出してくる。それに触れると、酔っ払う。
「瘤が有るほうが、ジャイアントフロッグ。毒持ちだ。白い液体には、触ってないだろうな」
「あーうん。でも、川で洗っちゃったから、どうだろう?」
全員で顔を見あわす。
「そりゃ下流側。大変かもな」
そう言うと、クノープがすこし嬉しそうに聞いてくる。
「拾いに行くか?」
「いや、良いだろう」
毒を流すと、魚が浮いてくる。
浮いた魚を食べると、毒が残っていて幻覚を見る事がある。
その事で、めったに見ないドラゴンキャットフィッシュが下流で暴れたらしく。大きな橋が流されたらしいが、この時の俺達は知らなかった。
後に、面倒が起こる。
夜半になり、俺が見張りをしている。
こんな場所だと、モンスターより、周りで野営をしている、護衛達の方が質が悪そうだ。
ぼーっと、燃える火を眺めながら、周りを探査する。
すると芋虫のように、フィアが這ってくる。
「どうした、寝てていいぞ」
「うん。まくら」
仕方が無いから、足をのばす。
こてんと、頭が乗ってくる。
「また明日も、盗賊退治。どうして盗賊になるんだろう」
「どうしてだろうな。奪うと作る人や運ぶ人が居なくなる。皆が困るのにな」
「そうね。どうせなら、モンスター退治でもすれば、喜ばれるのに」
「そうだな」
そう言って、頭をなでると嬉しそうに目が閉じる。
メルカトアさんの娘、リディアーヌは眠れずに寝返りを打っていた。
「何もない貧乏人のくせに」
馬車の中では見せないが、休憩中などにアシュアス達が見せる。嬉しそうな、じゃれ合い。
仲間を、信用しきった笑顔。
リディアーヌは、子供の頃から教えられた。人を信用してはいけないという、母親の教育と、父親であるメルカトアさんからは、信用をすることから、すべてが始まるという教えを受けた。
母親は、お金は裏切らないというのが持論。
お父さんは、お金は稼げば良い。
命と、信用。人を裏切ってはいけない。本当に信用できる人を見つけなさいと、口癖のように言う。
どちらが正しいのかは分からないが、先日あった盗賊は、人とは思えず怖かった。
それを、あっさりと壊してしまった、あの人達。
嬉しそうに笑い、じゃれ合う姿。
どれが本当なのか、リディアーヌは分からない。
ベッドから降りて、外を覗く。
まどは、板張りの跳ね上げ式だが、隙間があるため外が見える。
彼らは貧乏な連中とともに、外で野営をしている。
なにか、得体の知れない肉を分け合い、嬉しそうに話をする。
そして、外などで寝るから、一人が見張りをしている。
さっき起きたときには、そんな姿を見たが、いまは、女の子が一人。頭を預けてなでられている。
同じようなことを、小さな頃にしてもらった記憶がある。
「リディアーヌ。眠れないの? 良い子だからおやすみなさい」
あの頃のお母さんは、優しかった。
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