僕は弟を救うため、無自覚最強の幼馴染み達と旅に出た。奇跡の実を求めて。そして……

久遠 れんり

文字の大きさ
上 下
5 / 80
第1章 旅立ちと冒険者活動

第5話 昇級試験前夜の事

しおりを挟む
「判りました。それで、宿は何処でしょうか?」
「あっそうですね。説明もするし一緒に行きましょう。すぐ近くです」

 そう言って、ティナさんが案内をしてくれた。

 ギルドを出て、すぐの所を裏に回り込んだ、ひっそりとしたところ。
 町の入り口周辺は危険なため、土地が安い。
 大きなモンスターが来れば、ギルドを含めて破壊されるから。
 そんなことを、後日女将さんからきいた。

 元冒険者だった女将さん達が店を開き、その時に父さん達も絡んだ話があったようだ。

 ティナさんが説明をすると、女将さんが驚いていた。

 旦那さんは、数年前に町を襲ってきた、モンスターの氾濫で亡くなったようだ。

 たまにモンスターは、氾濫を起こす。
 ダンジョンだけではなく、ごく普通の森だが、魔力の濃度が高くなったりして、起こる事もあるようだ。

 町を囲む壁を高くすれば良いが、時間と金が掛かる。
 辺境の町にこそ、高い壁が必要そうだが、なかなか予算が無いようだ。

 その晩はゆっくりとして、女将さんから、顛末を聞いた。
 女将さんであるセヴラーヌさんと亡くなったダーナムさんは、仲間三人を依頼途中になくし、たまたま通り掛かった父さん達に助けられた。

 その後、話を聞いた父さん達は、面倒を見てやれと、クレッグさんに投げたようだ。

「懐かしいわねえ。お父さん達は元気?」
「ええ、この前もワイバーンが迷い込んで、おもちゃにして遊んでいました」
 山へ少し入ると、自然が豊か。
 そうすると、モンスター達も豊かである。

 よく、ハニービーを追いかけて、蜜を盗ったりして遊んだ。
「いい。アシュアス。盗むときに気が付かれると、居なくなっちゃうからね。魔力を体の周りに纏わせ気配遮断をするの。そして、全部は盗らず、必要な分だけを盗るのよ。たまに、デスベアとかが来ているときには、気配遮断をせずに一緒になって攻撃をするの。するとハニービーも、御礼に少しくらいなら分けてくれるようになるから。そうなれば儲けものよ」
 うーん懐かしいな。

 蜂蜜のきいた、クッキーを頂きながら思いだした。

 女の子達は、ミードを飲んでいるけれど大丈夫かな?
 ミードは、蜂蜜を酵母や花粉を混ぜて発酵させたお酒。うちでは五パーセントくらいのアルコールだった。

「うちのミードは改造をしたものだから、ガツンとくるだろう」
 そう言って、ニコニコしている女将さん。
 普通なら、十パーセントくらい? だったよな。

「甘いけれど、すっきりしてますね」
 少し赤くなりながら、フィアが聞いている。

「そうだろう。蒸留をしたアルコールをさらに添加してあるんだ。甘くて飲みくちはすっきりしているからね。女の子が飲むと、いきなり足が立たなくなるんだよ」
 そう言って女将さんが、こちらを見ながらにまにましている。

 その横で、リーポスが、かぱかぱと空けている。
 リーポスは酔うとおとなしくなって、甘えんぼになる。
 適当なところで止めよう。

「さて、ありがとうございました。冒険に出るときの注意点とか、また教えてください。明日は試験なので、おやすみなさい」
「そうかい。じゃあまた日を改めよう。試験は何の試験だい?」
「旅をしたいので、黄銅級です」
「そうかい。確かに黄銅級を持てば、町から町へそのまま行けるね」
 そこまで言って、旅の目的を思い出す。

「噂でも何でも良いのですが、精霊種のすむ森の話を知りませんか?」
「精霊種ねえ。この大陸には居ないかもしれないよ。人に見つからないように森全体に幻術をかけて居るとも言うし」
「そうですか。何かを聞いたら教えてください」
 そう御礼を言って、部屋へ行こうとするが、クノープが半分寝こけて、リーポスはふにゃふにゃしてる。

「カパカパ飲むから」
 二人を担ぎ、フィアとアミルをつれて、部屋がある二階へと上がる。
 部屋は隣同士で、男と女で別れる。二人と三人で少し女の子が窮屈だけど仕方が無い。

 クノープをいったん廊下へ転がして、リーポスを部屋の中へ連れて行く。

「寝ているからベッドを使わせるよ。良いかな」
「うーん。多分大丈夫」
 少し酔っているのか、フィアもヘラヘラしている。

 ベッドへ、リーポスを寝かせて、振り返るとフィアからお願いされる。
「ねえ。ちょっとぎゅっとして」
「ああ」
 ハグをして、一言言っておく。

「ありがとうな。弟のために皆を巻き込んで」
「んーん。それは良いのよ。一緒に旅をするのは楽しそうだし。それに皆アシュアスと離れたくなかったのよ」
「そうか。それでも。ありがとう」
「えへっ。お休み」
 そう言って、離れ際にキスをされた。

「えっ」
 挨拶のほっぺじゃなく口へ。
「お休みのキス。うちは家族でするの」
「へっ。あっそうなんだ」

 翌朝、皆が起きない。
 電撃を喰らわして、皆を起こす。

 椅子に座らせ、強制的に、朝食を口に詰め込む。
 そのまま、引きずっていく。
 目が覚めたのは、リーポスとクノープ。
 昨夜まともだった、フィアとアミルがなかなか目を覚まさない。
 担いでいく。

 あの後、フィアは舞い上がり、寝れなかった。
 家族のキスを口にするなど、当然嘘。
 そして、それを羨ましそうに見ていた、アミルだが、不意に何かに目覚める。

 お父さん達の睦み事。
 それを見てしまった記憶。
 それが急に蘇り、ドキドキが止まらなくなった。そして、アシュアス達に異性を感じ始める。そして眠る事が出来なかった。

 そう十五歳。丁度多感なお年頃。
 リーポスもまだ、愛とかそういうものには、はっきりと気が付かず。モヤモヤ状態。
 ただ、アシュアス達と一緒に居たい。
 触れ合いたい。
 そんな気持ちを持て余していた。

 村から出て、町で初めて迎える十五の夜だった。

 クノープは疲れていて、さらに、初めて薄めずにミードを飲んだので寝た。

 それも、女将さん特製の、四十パーセントミード。

 宿名物、レディキラーシリーズの一つ。
 他にも、生クリームがウォッカにフロートされた、ホワイトルシアンやオレンジジュースがステアされた、スクリュードライバーなどもレシピとして持っている。

 客から「彼女にあれを」と言われると、部屋の鍵とともに、この手の酒が提供される。
 意外とかみさんも凶悪な人だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~

鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合 戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる 事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊 中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。 終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人 小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である 劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。 しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。 上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。 ゆえに彼らは最前線に配備された しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。 しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。 瀬能が死を迎えるとき とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

[完結:1話 1分読書] 冒険者学校の落ちこぼれが、学年主席の美人に惚れられる

無責任
ファンタジー
<1分読書>冒険者学校で一番弱いが・・助けた相手が主席美人 この世界は、魔物が多くいる。 それを守る冒険者を育成する教育機関として冒険者学校というのがある。 そこに攻撃力も弱ければ防御力も弱い少年がいる その少年が学年主席の美人を助ける。 その学年主席に・・・。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...