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第五章 本当の戦い
第80話 非常識
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紡は、報告書をしたためる。
魔導具の灯りが、優しくその紙を照らす。
だが彼は、絶望的に字が汚かった。
今までは、パソコンへの入力だったから問題が無かった。
だがそれが無くなった今、そう…… この書類が上に回っていくということ。
そしてこの手の報告書は残る……
かれは、ワインを口に含み、おもむろに振り返る。
「マリーダ。日本語は書けるかい?」
「いいえ。大陸標準語と、古代魔法文字が少しだけです」
「そうか、残念だ…… 古代魔法文字って何だ?」
そう聞くと、彼女は多少悩む。
「文字と言いますが、なんと言うのでしょ。組み合わせると魔法が発動するという感じでしょうか?」
そう言って、少しの文字を紙に書き、魔力を流すと風が吹いた。
「おわっすごいな」
その文字は、梵字というか……
「神代文字のようだな」
「神代文字でございますか?」
「そう物の形が、文字となったようなものだ。日本では今、こんな形の漢字とか、かな文字を組み合わせて使うが、えーとどんな字だったかな」
彼はなんとか思い出した、ヒを示す文字を書く。
横一を書いて、その下に丸。
その中にまた横一。百が丸くなったか旦が引っくり返って丸くなったか。
この系統の文字は、神社などでまだ使われているしいくつか系統がある様だ。
字が持つ意味が、そのまま魔法となって発動をする。
それは陰陽師とかその辺りとかにも通ずるものじゃないか?
「この漢字というのも、神代文字なのですか?」
彼女が書きかけの報告書を指さす。
「あっこれは、俺が下手なだけなんだ。すまない……」
どうやら神代文字というか、象形文字に見えるようだ……
ガクッと落ち込みながら、報告書に戻る。
そして当然だが、退職願も同封をする。
「どうなっている? あの国へ行くと皆が退職を願いだしてくる」
「何か魅力的なのでしょうか?」
主任である成行 真守二十六歳と、課長古固 史行三十五歳は頭をかかえる。
主任は進言する。
「私が行きましょうか?」
「それでお前も、なんかに魅入られて帰ってこなくなるのか?」
「いえ、そんな事は。こちらには親もいますし」
彼は意外と苦労人で、無理をして仕事をした父親が、脳卒中となり今大変なことになっている。
そう、発見が早く命は助かったのだが、左半身に麻痺が残ってしまった。
母親がなんとか面倒を見ているが、困っていた。
「そうか親御さんが、大変なんだったな」
そう言うと考え込む課長。
「バイクを与える。行って見てくれ、これに書かれているような、『この国は併合するのではなく独立を認めるべし、この国は獅子である、犬にあらず。人においては現人神なり』こんな怪しい報告書、信じられん」
課長は、バサッと机の上に書類を投げ出す。
「はあ、行ってきます」
だが彼の困りごとが、かの国が手助けをして、改善をされる。
「日本からまいりました、成行と申します。王様にお目通り出来ませんでしょうか?」
「連絡をするから、あそこに見えるのが居城だ。門番に用件を言えば多分通れる」
「ありがとうございます」
そう言ってバイクにまたがり、城へ向かう。
あっさりと、面会できることになったが、そこに幸せそうな顔をした国野と、ドレスに身を包まれた稲田がでへでへの顔で座っていた。
「お前達…… 随分と幸せそうだな」
顔だけで判る。
役職をと思ったが、この二人半分は退職をした身、ため口でつい言ってしまう。
すると執事から忠告が入る。
「陽愛様は、王妃様のお一人。国野様はこの度、侯爵位を叙爵されました。礼節を持って接していただけますようお願い申し上げます」
「ウーメザーさん。知らない仲ではないし良いよ」
「そう仰るのであれば」
インセプトラ―王国宰相、トーミオー=ウーメザーは暇になり、執事のようなことをおこなっていた。
宰相の場所は、杉原 楓真が完璧にこなし、彼が持つ智の珠もその力を遺憾なく発揮していく。
情報の解析、それに、第六感のような思考外の何かを与える。
これにより彼の立てる計画に、不測の出来事が、ほぼなくなってしまった。
「それはそうと、成行さん」
「はい。なんでございましょう?」
「お父さんがご病気だったよね?」
「はい、確かに」
「連れてこないか?」
「はっ?」
そこに、陽愛の声が割り込む。
「りゅうちゃん、あっ王様で私の旦那様だけど、治療もできるの。腕の一本や二本くらい生やせるそうよ」
「はぃ?」
当然だが、間抜けな声が出る。
「ああ、あの人はすごいんだ」
何かやばい薬でもやっているかのような、笑みを国野も浮かべる。
よく見れば、横に控えている侍女と、こそこそと乳繰り合ってる。
スカートの中に手が入り、ペシッと叩かれる。
見た感じ、侍女さんえらく若そうだが……
「信じられなくとも、日本では治せないんだろ。ものは試しだ。魔導具が発展をしているから日本より快適だしな」
「確かに、いまは、モーターを回すだけとかなら出来るので、扇風機とかは使えるのだが。その魔導具とかは見られるのか?」
そう言うと、国野の指があちらこちらを指し示す。
ポットは、どう見ても陶器製で中身が空。
それに魔力を流せば、なんと言うことでしょう?
お湯が、幾らでも湧き出てくるではあーりませんか。
「ものは試し、日本の常識は今非常識になった」
「ああ……」
かくして、彼の親父さんは走り回っている。
魔導具の灯りが、優しくその紙を照らす。
だが彼は、絶望的に字が汚かった。
今までは、パソコンへの入力だったから問題が無かった。
だがそれが無くなった今、そう…… この書類が上に回っていくということ。
そしてこの手の報告書は残る……
かれは、ワインを口に含み、おもむろに振り返る。
「マリーダ。日本語は書けるかい?」
「いいえ。大陸標準語と、古代魔法文字が少しだけです」
「そうか、残念だ…… 古代魔法文字って何だ?」
そう聞くと、彼女は多少悩む。
「文字と言いますが、なんと言うのでしょ。組み合わせると魔法が発動するという感じでしょうか?」
そう言って、少しの文字を紙に書き、魔力を流すと風が吹いた。
「おわっすごいな」
その文字は、梵字というか……
「神代文字のようだな」
「神代文字でございますか?」
「そう物の形が、文字となったようなものだ。日本では今、こんな形の漢字とか、かな文字を組み合わせて使うが、えーとどんな字だったかな」
彼はなんとか思い出した、ヒを示す文字を書く。
横一を書いて、その下に丸。
その中にまた横一。百が丸くなったか旦が引っくり返って丸くなったか。
この系統の文字は、神社などでまだ使われているしいくつか系統がある様だ。
字が持つ意味が、そのまま魔法となって発動をする。
それは陰陽師とかその辺りとかにも通ずるものじゃないか?
「この漢字というのも、神代文字なのですか?」
彼女が書きかけの報告書を指さす。
「あっこれは、俺が下手なだけなんだ。すまない……」
どうやら神代文字というか、象形文字に見えるようだ……
ガクッと落ち込みながら、報告書に戻る。
そして当然だが、退職願も同封をする。
「どうなっている? あの国へ行くと皆が退職を願いだしてくる」
「何か魅力的なのでしょうか?」
主任である成行 真守二十六歳と、課長古固 史行三十五歳は頭をかかえる。
主任は進言する。
「私が行きましょうか?」
「それでお前も、なんかに魅入られて帰ってこなくなるのか?」
「いえ、そんな事は。こちらには親もいますし」
彼は意外と苦労人で、無理をして仕事をした父親が、脳卒中となり今大変なことになっている。
そう、発見が早く命は助かったのだが、左半身に麻痺が残ってしまった。
母親がなんとか面倒を見ているが、困っていた。
「そうか親御さんが、大変なんだったな」
そう言うと考え込む課長。
「バイクを与える。行って見てくれ、これに書かれているような、『この国は併合するのではなく独立を認めるべし、この国は獅子である、犬にあらず。人においては現人神なり』こんな怪しい報告書、信じられん」
課長は、バサッと机の上に書類を投げ出す。
「はあ、行ってきます」
だが彼の困りごとが、かの国が手助けをして、改善をされる。
「日本からまいりました、成行と申します。王様にお目通り出来ませんでしょうか?」
「連絡をするから、あそこに見えるのが居城だ。門番に用件を言えば多分通れる」
「ありがとうございます」
そう言ってバイクにまたがり、城へ向かう。
あっさりと、面会できることになったが、そこに幸せそうな顔をした国野と、ドレスに身を包まれた稲田がでへでへの顔で座っていた。
「お前達…… 随分と幸せそうだな」
顔だけで判る。
役職をと思ったが、この二人半分は退職をした身、ため口でつい言ってしまう。
すると執事から忠告が入る。
「陽愛様は、王妃様のお一人。国野様はこの度、侯爵位を叙爵されました。礼節を持って接していただけますようお願い申し上げます」
「ウーメザーさん。知らない仲ではないし良いよ」
「そう仰るのであれば」
インセプトラ―王国宰相、トーミオー=ウーメザーは暇になり、執事のようなことをおこなっていた。
宰相の場所は、杉原 楓真が完璧にこなし、彼が持つ智の珠もその力を遺憾なく発揮していく。
情報の解析、それに、第六感のような思考外の何かを与える。
これにより彼の立てる計画に、不測の出来事が、ほぼなくなってしまった。
「それはそうと、成行さん」
「はい。なんでございましょう?」
「お父さんがご病気だったよね?」
「はい、確かに」
「連れてこないか?」
「はっ?」
そこに、陽愛の声が割り込む。
「りゅうちゃん、あっ王様で私の旦那様だけど、治療もできるの。腕の一本や二本くらい生やせるそうよ」
「はぃ?」
当然だが、間抜けな声が出る。
「ああ、あの人はすごいんだ」
何かやばい薬でもやっているかのような、笑みを国野も浮かべる。
よく見れば、横に控えている侍女と、こそこそと乳繰り合ってる。
スカートの中に手が入り、ペシッと叩かれる。
見た感じ、侍女さんえらく若そうだが……
「信じられなくとも、日本では治せないんだろ。ものは試しだ。魔導具が発展をしているから日本より快適だしな」
「確かに、いまは、モーターを回すだけとかなら出来るので、扇風機とかは使えるのだが。その魔導具とかは見られるのか?」
そう言うと、国野の指があちらこちらを指し示す。
ポットは、どう見ても陶器製で中身が空。
それに魔力を流せば、なんと言うことでしょう?
お湯が、幾らでも湧き出てくるではあーりませんか。
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