はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第五章 本当の戦い

第74話 日本からの接触

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 その男はアポもなく、突然やって来た。
 手土産に、日本酒をぶら下げて。

「あーすまない。日本側の使者だが、王様に会わせていただきたい」
 まず手順だが、儀礼的な決まり事を稲田 陽愛は何も知らせてこなかった。
 過去の各国儀礼集を見ていたが、先触れを行い、その日程を調整と考えてはいたが、日本側の宿泊施設は全滅。
 何せ、日本中で流通が止まっているのだ。

 考えた末、こちら側へとやって来た。

 こそっと書かれていた魔導具について調査を行いたい。
 彼女が書いた、ヤバイぶつ保有。外国に知られる前に、新しい国と認めて日本とは違うとしておかないとまずいです。
 そんな文言が、気にはなる。
 だが彼女は、兵器にはあまり詳しくは無いはず。
 どの程度のものを保有しているのか。
 それと……

 その日、命令が上から降ってきた。
「国野君、君武器とか好きだよね」
「はい? ええまあ」
 その時、緊急時特別対外対策課、課長補佐国野 紡くにの つむぐは、その時、思いっきりいやな予感はした。
 喋っている課長が、妙に目をそらし、口角が右だけ上がった。
 一般的に、片側の口角が上がるのは、軽蔑とか優越性の主張と言われている。
 この状態で、なぜ?

「この報告にな、やばい武器を王国が有していると書いてあるだろう。有識者によると海外も電子デバイスが壊れて、強力な武器は運用は出来ないはずだと報告は来た。だが、王国は違う。聞けば魔導とか言う、全く未知な理屈で動いているらしい。それにな、彼女。どうやら魔法使いになったようだぞ。書かれてはいないが、筆圧痕にそんな記述があったようだ。『言うべきか言わざるべきか、この世界では、魔法が使える。私はすでにこちら側へ来てしまった。この事実は凡人には理解し得ないだろう。中世の迫害、そして魔女狩り…… やはり口を噤もう。』そんな感じで、まあ、読まそうと言う気が満々で、気がつかなければ別に良いかと言う感じだな」
 そう言うと課長は、椅子に深く腰をかけ直して一呼吸おく。

「君、行ってきてくれ」
 そう言い放つ。
 やっぱりという感じだ。

「私がですか?」
「ああ、調査対象は先ほど言った、魔導武器。それと魔法についてだ」
「えー…… はい」
 彼はそう言って、命令書を受け取る。

 旅行命令。
 『暫定名インセプトラ―王国に対する調査』
 魔法の有無と、魔導兵器に対して詳細な調査を行うこと。
 ついでに、正式な国名も。

「今日から出発で、無期限ですか?」
「交通インフラがないんだ、徒歩だと遠いぞ」
 彼はそれを聞き、がっくりと肩を落とす。

 徒歩ではなく、自転車にまたがり、背中のリュックにはインスタント食品や缶詰をぶち込み出発をした。
 野を越え山を越え、そんな道中が意外と彼には嬉しかった。
 元々サバイバルが好き。
 彼は、寄り道をしながらも無事たどり着く。
 だが、到着してみれば、ホテル関連は全滅。

 再開予定は未定だ。
 食材の調達や空調がすべて止まっているからだ。

 日本が、いかに流通に頼っていたかが、うかがわれる。
 だがその配達業は、過酷だと言う話もあり、こんな事が無くとも、近いうちに危機的状態になっていたのかもしれないが。

「コンビニも全滅だよなぁ。仕方が無い…… 行くか。向こう側は元々整備されたインフラがない国。こっちより、ましかも知れない」
 そう言って彼は王都へと向かい、門番に捕まる。



「ここは、インセプトラ―王国王都カーブキーである。中へ入るなら入場料、銅貨五枚を払え」
 ただまあ、それは折り込み済み。

「あーすまない。日本側の使者だが、王様に会わせていただきたい」
 一応十円玉を五枚渡す。

「何、日本? 少し待て」
 そう言うと門番は、脇にある詰め所に一度戻り、魔導通信機を持ちながら出てきた。

「貴殿、名前と所属は?」
「緊急時特別対外対策課、課長補佐国野 紡くにの つむぐ。先に稲田 陽愛という担当者が来ているはずだが?」
「イナーダ=ヒーメ。おお、今度奥方になったと言われる。少し待て、王城へ案内をする」
 そうして意外とあっさりと、案内をされることになった。

 だがその額に、赤い点がマークされていたことを彼は知らない。
 そう、王宮から、そんな奴は知らんと言われた瞬間、彼の命はなかった。
 
 中央の通りを結構な距離歩いたが、キョロキョロと町中を見学する。
 レンガ作りを基本にして、木材を組み合わせている。
 デンマークとか、北欧にあるような造りの建物が並ぶ。
 その光景は、彼の気分を高揚させる。

 公務で他国に行っても、ゆっくりと見ることなどはできない。
 大抵目的地、それと、交通インフラの主要場所、駅とか空港のみ。
 大昔はゆったりしていたそうだが、今ではコンプライアンスが厳しく、私的なことは何も出来ない。

 ただ気がつく。
 路上にいても、この城郭都市へ入った瞬間から涼しい?
「中が結構涼しいんだな」
「ああ、もう五年くらい前かな? そういう魔導具が開発されたんだ」
「魔導具が、へえっ」
 予想と違う。魔導具恐るべし。

 そんな事に驚く彼だが、王城でもっと驚く光景を目にする。

「イナーダ=ヒーメ様なら、今ちょうど訓練中でございます」
「では、やはり王様に会う前に、稲田…… イナーダ=ヒーメ様と会う、いやお会いするのが本筋でしょう。案内をお願いいたします」

 そして、案内をされた中庭には、熱気が充満をしていた。

 凶悪な、直径三メートルほどの火球が空中に浮かび、その色が赤系列から青へ色と変化をしながら、凶悪な熱を周りにまき散らす。
「さすが、天才と名高いイナーダ=ヒーメ様」
 案内として付いてきた、ちょっと立派そうな装束の兵はご満悦だった。

「なんぞあれ?」
 そう、言葉も出ないという状況。
 稲田の横であわあわしているのは誰だろうか?

 いつの間に、常温常圧で核融合が成功したのかと、彼はふと考えた。
 兵からの声が届いたのか、火球が一瞬で消え彼女がこちらに向く。
 彼を見た瞬間、ものすごく嫌そうな顔で……
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