はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第五章 本当の戦い

第71話 経験

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 話しをざっと聞いた。
 私立徳井天世高校の修学旅行……
 その不思議さと、高校生には酷な経験。
 そして積み上げた年月……

「えっじゃあ、実際は十こ近く歳上なの?」
「そこまでは、行っていない」
 そっか、途中に出てきた名前。
 特に頻繁に出てきた名前……

 だけど、よく考えれば、もっと気になる所……
「あれ? 王の義務で姫と一緒になった…… ? えっ?」
 私の困惑を気にせず、彼は軽く言う。

「ああ、もうすぐ来るだろ」
 私も通った、浴室からのドアが開き女達が出て来る。そう一言で言えば美しいというレベルの女達。
 金髪や、亜麻色。
 髪も目も色とりどりだし、透けて見えるから……
 全員剃っているし……
 
 透けていないドレスの人は、彼にキスをして出て行った。
 出来ない日なのかな。
 素で、冷静にそんな事が思い浮かぶ。

「あら、あなただあれ?」
 日本人ぽい。言葉は静かだけれど、睨まれた。

「日本国、外務省地球規模異常管理室…… 陽愛です。案内されるままここへ、途中で、侍女様でしょうか? いきなり脱がされてお風呂に入れられて……」
 ざっと、経緯を説明をする。

「あらまあ、龍一がそんなことをするわけがないから、杉原君のいたずらね。でも、若くも無さそうだし、顔も普通、なぜかしら?」
 笑顔で放つ、女としての牽制?
 確かに彼女の方がかわいい。

「ぐっ」
 若くもないし、顔も普通よ。
 でもこっちには、歴史と絆がある。
 小学校の時、おねしょまで知られている仲なの。
 そうお泊まりで、一緒に寝ていて漏らした。
 竜ちゃんのお家でパーティをしていて、パカパカジュースを飲んだ。
 そのまま寝込んで……
 私の黒歴史。
 大洪水だったわ。

「杉原君というと、楓真君ですかね?」
 それを聞かれて、澪は顔に出てしまう。
 貴様なぜそれを知っているという感じで。

「えっ、ええそうよ」
 当然正月とか夏休みには、少しだけ竜ちゃんは帰ってきた。
 その時に、幾度か楓真君を連れてきていて、竜ちゃんの幼馴染みである私は会ったことがある。

「私、竜ちゃんの幼馴染みなので、鈍感な竜ちゃんとは違い、彼には、私の気持ちがバレていたのかも。ねえ竜ちゃん。この女の人達何?」

 その瞬間、部屋の温度がいきなり下がる。
 当然、思った状況とならなかったため、つまらんとぼやいていた楓真は、お叱りを受ける事になる。
 そう彼は、龍一が襲いかかり、行為中に嫁―ズが入ってくることを望んでいた。
 まあ、それでも日本の常識とは違う。龍一が叱られるだけだろうと。

「さっき言っていた嫁達だ。王国は一夫多妻だからな。澪は高校の同級生で平民だが、他は各国の王女だ。俺がこの大陸を平定する度に増えてしまった」
「そっ、それは、婚姻外交」

 政略結婚とも言うが、現在でも存在する風習。
 企業同士の結束のためとか、海外では、やはり国同士でそんな事も。

 「なら、私は日本との架け橋となる。結婚をして」
 ここに来て、彼女、精神的ブレーカーが吹っ飛んだ。

「何を言っているのかしら? この子は」
 当然、澪のこめかみには青筋。

「私は、外務省の職員、あなたがと違い…… あの私の荷物はどこに?」
 すささと、若い姫さんが動き、廊下へ向かって何かを伝える。

 すると、緊迫感が漂い、異様な雰囲気の中へ、ノックがされて、次女さんが篭を下げてやって来る。

 その中から、私のビジネスバッグを見つけると、私はババーンと見せつける。
「日本国からの正式な貴国との交渉全般について、全権委任の委任状です。私は日本代表です」
 それを見せられて、悔しそうな澪。 
 なんでこんな小娘が……

 そして周りの姫様は、その意味を理解した。
「では、私たちと同じですわね。龍一様、お迎えをせねばいけませんね」
「なっ、でも、この娘平民よ」
 澪の言い分に、少し噛みつく。

「帝国大学を卒業、一種の公務員試験を通過、国の代表でございます」
「ぐっ」
 澪がひるんだところで、龍一が動く。

「昔から、努力していたもんなぁ、そうか官僚か、お母さん喜んだだろう」
「うん、両親共に褒めてくれたわ」
 澪は感じる。
 今、此処に見えない壁が……

 高校の時から紡いできた龍一との歴史。
 それ以前から繋がる連綿れんめんの繋がり。
 くっ、敵わない。

 この小娘、幼馴染みという最強のカードと、賢さ。その二つの意味を知り、惜しげも無く使ってきている。
 きっと今が、そのカードを使うベスト。

 ブラックジャックで、こちらも互いに絵札、私はスタンドし、ベットを積み上げた最後にそっと静かにヒット。
 その札は、A。

 二十と二十一、その差はわずかだが大きい。
 見目の差を努力による知識でカバー、私でも分かる。
 この混乱の中、日本との関係を考えたとき、彼女は必要な札、それも強力であると、私でも分かる……

「判ったわ、彼女を迎え入れるにあたって、誰かノーはいる?」
 周りは首を振る。
 だけど、今は無くなった小国、チーサイノ王国第一王女オフィレディヌから質問がくる。

「あの迎え入れるのはいいとして、日本国の国力はどのくらいでしょうか?」
 そう聞かれて考える。

「国力が、経済なら、間違いなくこの国全部より上。だが、彼女は代表ではあっても皇族では無い。それを考えると……」
「デレシアの下、私の上ね」
 それを聞いて龍一は感動する。
 澪が、澪が客観的判断をした。

「大人になったな」
 そう言って、頭をなでてハグをする。
 澪は複雑な気持ちでそれを受ける。
 だけど、なんか認められた。
 それは嬉しい
 だけど……

「王妃の務め、あなたに務まるかしら?」
 そう、政治だけではない。
 子をなすのも務め、彼は、そして私も普通の人間ではない。
 世界が、繋がった後。失っていた力が再び活性化をした。

「そう我らは、通常の人間にあらず、選ばれた民なり」
 修学旅行から帰って、ずっと考えていた文言。
 澪は今その言葉を口にした。
 その意味を理解した姫達は頷く。
 戻って来た龍一は、すごかった……
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