はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

文字の大きさ
上 下
71 / 95
第五章 本当の戦い

第71話 経験

しおりを挟む
 話しをざっと聞いた。
 私立徳井天世高校の修学旅行……
 その不思議さと、高校生には酷な経験。
 そして積み上げた年月……

「えっじゃあ、実際は十こ近く歳上なの?」
「そこまでは、行っていない」
 そっか、途中に出てきた名前。
 特に頻繁に出てきた名前……

 だけど、よく考えれば、もっと気になる所……
「あれ? 王の義務で姫と一緒になった…… ? えっ?」
 私の困惑を気にせず、彼は軽く言う。

「ああ、もうすぐ来るだろ」
 私も通った、浴室からのドアが開き女達が出て来る。そう一言で言えば美しいというレベルの女達。
 金髪や、亜麻色。
 髪も目も色とりどりだし、透けて見えるから……
 全員剃っているし……
 
 透けていないドレスの人は、彼にキスをして出て行った。
 出来ない日なのかな。
 素で、冷静にそんな事が思い浮かぶ。

「あら、あなただあれ?」
 日本人ぽい。言葉は静かだけれど、睨まれた。

「日本国、外務省地球規模異常管理室…… 陽愛です。案内されるままここへ、途中で、侍女様でしょうか? いきなり脱がされてお風呂に入れられて……」
 ざっと、経緯を説明をする。

「あらまあ、龍一がそんなことをするわけがないから、杉原君のいたずらね。でも、若くも無さそうだし、顔も普通、なぜかしら?」
 笑顔で放つ、女としての牽制?
 確かに彼女の方がかわいい。

「ぐっ」
 若くもないし、顔も普通よ。
 でもこっちには、歴史と絆がある。
 小学校の時、おねしょまで知られている仲なの。
 そうお泊まりで、一緒に寝ていて漏らした。
 竜ちゃんのお家でパーティをしていて、パカパカジュースを飲んだ。
 そのまま寝込んで……
 私の黒歴史。
 大洪水だったわ。

「杉原君というと、楓真君ですかね?」
 それを聞かれて、澪は顔に出てしまう。
 貴様なぜそれを知っているという感じで。

「えっ、ええそうよ」
 当然正月とか夏休みには、少しだけ竜ちゃんは帰ってきた。
 その時に、幾度か楓真君を連れてきていて、竜ちゃんの幼馴染みである私は会ったことがある。

「私、竜ちゃんの幼馴染みなので、鈍感な竜ちゃんとは違い、彼には、私の気持ちがバレていたのかも。ねえ竜ちゃん。この女の人達何?」

 その瞬間、部屋の温度がいきなり下がる。
 当然、思った状況とならなかったため、つまらんとぼやいていた楓真は、お叱りを受ける事になる。
 そう彼は、龍一が襲いかかり、行為中に嫁―ズが入ってくることを望んでいた。
 まあ、それでも日本の常識とは違う。龍一が叱られるだけだろうと。

「さっき言っていた嫁達だ。王国は一夫多妻だからな。澪は高校の同級生で平民だが、他は各国の王女だ。俺がこの大陸を平定する度に増えてしまった」
「そっ、それは、婚姻外交」

 政略結婚とも言うが、現在でも存在する風習。
 企業同士の結束のためとか、海外では、やはり国同士でそんな事も。

 「なら、私は日本との架け橋となる。結婚をして」
 ここに来て、彼女、精神的ブレーカーが吹っ飛んだ。

「何を言っているのかしら? この子は」
 当然、澪のこめかみには青筋。

「私は、外務省の職員、あなたがと違い…… あの私の荷物はどこに?」
 すささと、若い姫さんが動き、廊下へ向かって何かを伝える。

 すると、緊迫感が漂い、異様な雰囲気の中へ、ノックがされて、次女さんが篭を下げてやって来る。

 その中から、私のビジネスバッグを見つけると、私はババーンと見せつける。
「日本国からの正式な貴国との交渉全般について、全権委任の委任状です。私は日本代表です」
 それを見せられて、悔しそうな澪。 
 なんでこんな小娘が……

 そして周りの姫様は、その意味を理解した。
「では、私たちと同じですわね。龍一様、お迎えをせねばいけませんね」
「なっ、でも、この娘平民よ」
 澪の言い分に、少し噛みつく。

「帝国大学を卒業、一種の公務員試験を通過、国の代表でございます」
「ぐっ」
 澪がひるんだところで、龍一が動く。

「昔から、努力していたもんなぁ、そうか官僚か、お母さん喜んだだろう」
「うん、両親共に褒めてくれたわ」
 澪は感じる。
 今、此処に見えない壁が……

 高校の時から紡いできた龍一との歴史。
 それ以前から繋がる連綿れんめんの繋がり。
 くっ、敵わない。

 この小娘、幼馴染みという最強のカードと、賢さ。その二つの意味を知り、惜しげも無く使ってきている。
 きっと今が、そのカードを使うベスト。

 ブラックジャックで、こちらも互いに絵札、私はスタンドし、ベットを積み上げた最後にそっと静かにヒット。
 その札は、A。

 二十と二十一、その差はわずかだが大きい。
 見目の差を努力による知識でカバー、私でも分かる。
 この混乱の中、日本との関係を考えたとき、彼女は必要な札、それも強力であると、私でも分かる……

「判ったわ、彼女を迎え入れるにあたって、誰かノーはいる?」
 周りは首を振る。
 だけど、今は無くなった小国、チーサイノ王国第一王女オフィレディヌから質問がくる。

「あの迎え入れるのはいいとして、日本国の国力はどのくらいでしょうか?」
 そう聞かれて考える。

「国力が、経済なら、間違いなくこの国全部より上。だが、彼女は代表ではあっても皇族では無い。それを考えると……」
「デレシアの下、私の上ね」
 それを聞いて龍一は感動する。
 澪が、澪が客観的判断をした。

「大人になったな」
 そう言って、頭をなでてハグをする。
 澪は複雑な気持ちでそれを受ける。
 だけど、なんか認められた。
 それは嬉しい
 だけど……

「王妃の務め、あなたに務まるかしら?」
 そう、政治だけではない。
 子をなすのも務め、彼は、そして私も普通の人間ではない。
 世界が、繋がった後。失っていた力が再び活性化をした。

「そう我らは、通常の人間にあらず、選ばれた民なり」
 修学旅行から帰って、ずっと考えていた文言。
 澪は今その言葉を口にした。
 その意味を理解した姫達は頷く。
 戻って来た龍一は、すごかった……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...