はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第五章 本当の戦い

第67話 懐かしい顔

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 今回俺達は、トラクターで走る。

 きちんと普通免許でいける、小型特殊サイズだ。
 だが、耕すためのロータリーなどの幅が、一・七メートルを超えると大型特殊になるので気を付けないといけない。高さも二メートルを超えてはいけない。

「向こうじゃ荷車だったけれど、こっちじゃトラクターか」
「そうだな、電装品は全滅らしいぞ。地球全体レベルで現象が起こったんじゃないか?」
「さあなあ、あれが噂の城郭都市か、あの下にあった町とかは何処に行ったんだろうなあ?」
「判らん、地球のあちこち、場所単位で入れ替わった感じだよな」

 そう一瞬だけの、空間干渉。
 その隣り合った世界は一瞬重なった。

「門番がいるぜ、ここはどうかな?」
 そう、同じ様な世界。
 いくつかの、見たことあるような城郭都市でも、時代や人が違う。
 連続するような世界の中で修学旅行先は、少しずつ違っていたらしく、俺達を知らないところが多い。学年が違うと知られているようだ。

 門番が俺を見る。
 少し老けたが、知っているなら分かるだろう。
「おっ王さまだああぁ、帰ってこられたぁ」
 そう叫び、なぜか涙を拭いながら走っていった。

「インセプトラ―王国の王都で正解のようだな」
 そう言ったら、嬉しそうな顔で楓真に脇腹を突かれる。

 そのかわり、俺の背後から澪と結愛が顔を出す。
「皆、生きているかしら?」
「会いたいけれど、モヤモヤするわね。今ならきっと子供が出来るわ」
「あっそうね」
 二人が話しで盛り上がっている間に、前から軍がやって来た。

「本当だぁ、王様だ」
「お前、意外と慕われていたんだな」
「そうみたいだな、借金はしていないはずだし」
 楓真とそんな話をする。

 そのまま、王城へと
「お帰りなさいませ」
 一同勢揃いで出迎えられる。

 中には、泣いている奴まで。
「なんか懐かしいけれど、ここまでだったか?」
「いや、もう少しあっさりだったよな」
 そうその時、俺達は中庭を見なかった……
 俺達と、魔王の戦いが、脚色されて造られていた。

 そう…… 知らない間に、俺達は人類の救世主として祭り上げられていた。
 そして軍や、教会では修行にはいることを、シュウガクリョコウと呼んでいることも後で知った。

 廊下の両側に兵が並ぶ。
 剣を顔の前で持っているのが地味に怖い。

 長年のサラリーマン生活で、少し鈍ったのかもしれない。

 そして、謁見の間。
 入った瞬間に、懐かしい顔が並ぶ。
 王キクーノス=オーガミ、王妃オーヤマー、王太子ゴーロウ。
 そして嫁達。

 いきなり、澪の牽制? 威嚇? ガルルという感じで俺に張り付く。
「お帰りなさいませ」
 正妻らしいデレシアの対応。

「ああ、ただいま。変わりはないか?」
 そう聞くと、嬉しそうに、でも少し淋しそうににっこり。

「おかげさまで、この五年は平和でした」
「五年?」
「はい。前回は若返り、今度は少しお年を召しました?」
「そうか、そうだな」
 何もかもが懐かしい。


 話を聞くと、本当にあれからは平和だったようだ。
 まあいきなり、先日のあれだが……

 そして、やって来る警察。
 一応状況が判っているのは、多分うちの高校関係者のみ。

 警察だろうが、自衛隊だろうが…… 国の一部は知っているのかもしれないが、門番は槍を抱えているし、腰には個人用の携帯魔導銃を持っている。
 そして魔法が使えるため、警官が武道をやっていても勝てない。

「ここは、インセプトラ―王国王都カーブキーである。入場するなら入場料、銅貨五枚を払え」
「入場料? 何かの遊園地か? ここには、元々畑があり、土地の持ち主が困っている」
「そう言われてもなぁ、我が国もいきなりこんな事になり困っておる。ほら、あんな塔など建てた覚えはない。王の言うとおり、あの天変地異でいくつかの世界が混ざったようだな」
 そう言われて、警官も悩み始める。

「上の者と相談をしてくる。もう一度、国名?と都市名、それと王様の名前を教えてくれるかい?」
 でまあ、聞き取るが、代官が元王キクーノス=オーガミ、現王がリュイチー=ジンノー。
 聞けば判るが、日本人ぽい。

 悩みながら、警官は自転車に乗って帰っていく。

 まあ、土地が入れ替わり、こちらの川が町中へと流れ込んだり、段差が出来たり結構大変なようだ。

 だがその断層部で、土の性質が全く違うために、学者達が大騒ぎをすることになる。
「本物だ」
 そう言って。

 そう、そして、現れたモンスター達。
 最初、二足歩行のゴブリンとか、オークとか、コミュニケーションを取ろうとして、結構人が殺されたらしい。

 それに、攫われたり。
 こっちの人に比べて、日本はあわあわするだけで、ひ弱い。
 他には、叫ぶか人を頼るか、くらいだ。

 剣を持った冒険者が助けに入れば、剣を捨てろと威嚇されて警官に撃たれた。
 これの件については、後日になるが、場所がこちらがの領地のため違約金をがっぽり取った。当然、今バカ高い金だ。こちらのレートで請求。

 混乱は、電子機器と通信が復旧するまで、収まることがなかった。
 日本政府には、早めに魔導通信機が渡されて、ざっと説明が行われた。
 校長からだが。

 とにかく、混乱の後、世界は変わった。
 そして変わったおかげで、俺達は平社員から王へと返り咲いた。

「王様も、大学を出ておいた方が良いよな?」
「王立の魔導学園卒業で良いんじゃね? 日本の帝国大学を出ても魔法は使えんだろ」
「賢いな、卒業証明とバッジでも作ろうぜ。学校は、貴族院の名前を変えてすまそう」
 貴族院は貴族の子弟用の学校だ。
 こうして、魔法の練度で人を測るという事を決めて、日本向けに体裁が整う。

 会談の途中で学歴マウントをされたら、俺達は魔法使いのバッジを見せる。
「おや魔法が使えない? それはそれは、計算? 法律? 我が国の法をご存じで?」
 そんな感じで…… 対抗をする。
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