はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第四章 魔王と魔人

第66話 その時

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「いよっし」
 浄化は進み、かの敵はほぼ浄化できた。

 外では、兵により魔王達が粉砕された。

 その時、関係者の頭の中に声が降り注ぐ。
「条件を達成しました。ミッションコンプリート……」

「はっ? なんだこれ?」
 そう、驚いたが、龍一達は一瞬で…… 気が付けばグランドへ戻って来ていた。

 周りは、先日見た光景。
 ただ、反省文のテントには先生がおらず、校舎から校長先生達がグラウンドへと出てくる。

「思ったより達成が早かったようだな」
 そう、修学旅行が終わったようだ。

 だが、生徒達の顔は暗い。
 向こうで結婚をした者達なども居たのに、強制的な別れ。

「ふざけるな、元に戻してくれ」
 そんな声が上がり、騒ぎとなる。

「案ずるな、じきに相まみえよう。お前達は自身に不足している物が分かったはず。これから少しの間、精進するがいい」
 校長達はそう言ってニコニコ顔。

 だが、大多数の生徒は戻って来て、一週間もすれば元のように戻った。
 実際のところは判らないが……
 二年三組の連中が幾人か、向こうでの気持ちが抜けなかったのか、警察に捕まった。
 そして、一部では、武器や兵法、化学、物理を狂ったように勉強をしだした集団が居た。

 俺達もそうだ。
 勉強嫌いだった澪までが、必死で勉強をしていた。
 『実践サバイバル生活』
 『砂糖の採取と磨き方』
 『旦那様を虜にする、毎日の献立』
 『旦那様を虜にする技、奥の奥まで』
 『旦那様を虜にする……』

「なんだこれ?」
「みっ、見ないでよ」
 そういって隠す、澪。

 耳まで真っ赤だ。
 まあなんだろう、結局こっちへ帰って来たのは一人だけだから、俺は独占されているが、それでも不安なのだろうか? そんなに浮気…… 浮気なのかね。政治的にノーと言えない婚儀と言うのは。

 つい、おかしくなって、澪の頭をなでる。
「なによ」
 この前帰ってきて、若くなった自分を鏡で見て、くるくる回っていたのだが。

 校長のすぐ、と言う言葉も気に掛かるが、やれることをしよう。


 ―― そうして、早十年。
「なあ、楓真」
「ああっ?」
 俺達は、営業の途中。

 サボって…… いやコーヒーを飲んで休憩中。
 金が欲しくて、高校卒業後大学へは行かず、学校の伝手がある会社へ入社。
 澪は大学へ行ったが、遅れてうちの会社へ入ってきた。

 するとだ…… 俺達は、あっという間に抜かれて、澪主任となった。
 今度係長になるらしい。

「大学を出ないと、係長止まりって知っていたか?」
「いや、課長補佐まではいけるらしい。その上はマネージメント能力がうんたらかんたらで、大卒は必須と言われた」
 うーんと悩む。

「通信制か夜間の大学へ行くか?」
「それも良いかもな」
 二人とも、大学に行かなくとも、多方面の知識は付けた。
 無論、大学レベルだ。
 

 そんなある日、青空が割れた。
「パキッ」
 そんな音が、世界中に鳴り響いた。

「なっ何だこりゃ?」
「ネットは?」
「死んでやがる。電源が切れた」
 電離層外で現象が起こったせいなのか、 電磁パルス攻撃のように電子機器がすべて吹っ飛んだ。

「車も動かん。キャブのバイク。CDIは駄目だ、ポイント点火の奴を探せ」
 そう言って走り回る。
 CDIは点火タイミングを拾ってトランジスタで増幅。
 昔のは、機械式ガバナとかディストリビューターという部品が付いていて、ケース内部ではT字の電極がクルクル回っていた。

「楓真あったか?」
「あったが、一人乗りだ」
 ドドンと現れた楓真は、古いトラクターに乗っていた。
「乗れるさ」
 そう言って飛び乗る。

 なにも言わずとも、目指すは高校。
 なんとなく、行かなきゃいけない気がして集まった。

「龍一」
 呼び方は変わったが、澪もきた様だ。
「契約はしたの?」
 この状態で、開口一番それかよ。

「したよ。書類は車の中だけどな」
 だがそれは、使えるのか……

 放電をしまくっている空に、地球のような星が見え始め、こちら側と向こう側、鏡を見ているような奇妙な感覚。
 中間では絶好調に放電現象がバシバシ起こり、なんか虹が出たり色々してる。

「なんだありゃ、オーロラがでているぞ」
 虹じゃなかった。オーロラだったのか。

 そんな馬鹿なことを言っていて、ふと体に懐かしい感触。
 魔法の元、魔素が体を巡り始める。

「おい、復活だ」
「そうだな」
 楓真も魔力循環を行っているようだ。

 そうして、その星から黒き何かが吹きだしてくる。
「ありゃあ」
 俺達がぼけっとしていたら、周囲から浄化の光が立ちのぼる。

 そうだよな。歴代、うちの学生は修学旅行をこなしていたんだ。
 その時代時代に、猛者がいたはずだ。
 どこかで、有名な剣の名が呼ばれている。


 光の柱が立ち、浄化の光が届いた瞬間、ピカーと言う感じで、光が世界を包んだ。

 その光が収まったとき、相手の星はなくなり、空のひび割れもなくなった。
 だが、そのかわり、人工衛星だった物が落ちてきて火球となる。

 そんなこんなで、大騒ぎの後、情報がないので分からないが、世界中に大陸だったり訳の分からない国だったり、建物が現れた。

 そして、それと同時に怪異が発生。

 死人が蘇り、モンスターが闊歩、情報が途切れた世界で、異常が起こると混乱が発生。
 近代的システムは沈黙をして、旧来の物理現象を利用した物だけが動作をする。

 古いバイクとか……

 魔導具だったり。
「おい後輩、魔王と魔人を探しに行くぞ」
 先輩方から声が掛かる。


 向こう側の星でも、パニックが起こっていた。
 だが、こちら側ほど困ってはいない。
「状況を確認をしろ」
 調査のための早馬が飛び出していく。

「あの石造りの塔はなんだ、山よりも高いではないか」
「御父様、何があったのでしょうか?」
「彼らが消えて、五年の月日……」
 あの日から、時の流れを含めて色々と変わっていたようだ。
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