はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第四章 魔王と魔人

第65話 やって来た者達

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「おいあれなんだ?」
 魔人族の大陸、港町イントロイトスで、船を守っていた兵達は騒ぎ始める。

 そう前回遠征時に、船を守るために警備についていた者達だ。
 だが、敵は陸側ではなく海から来たようだ。

 水しぶきを上げて、光を放つ目が二つ。
 『ぶおおー』と奇妙な音を立てている。

「っ、大きいぞ、魔導砲準備」
「隊長、旗が我が国の旗です。援軍です。上部にこちらより黒くて、大きな立派なブツがこちらを向いています」

 双眼鏡をひったくり見つめる。
「あれは船なのか?」
 港側ではなく、浜の方へと向かうようだ。

 子どものような感じで、皆が謎の物を追いかける。
 それは、普通に浜へと上がってきて、呆れたことに街道を走り始めた。

 内部では、こんないい加減な会話がされていた。
「なあ、ホバーってさあ、陸も走れるよなあ」
「走れるな」
「荷車を出して、ガタガタしながら移動するより、こっちの方がよくね」
「そうだな、行くか」

 そんな重要な事があっさりと適当に決められた。
 だが実際、大陸間の移動も陸上も、ホバーの方が早い。
 スカートもきっと地球の物より丈夫。
 通常の矢や槍も刺さらない。

「あっ、残していた兵がいる。乗せるぞ」
「了解」
 死に戻ったときから、すっかり忘れていた。

「辛く長い任務、ご苦労であった。あの時、我らは負けてしまった。特殊な事情があり詳細は言えないが、再びこの地へとやって来た。共に戦おう」

 そう言って言葉を濁したが、今回ついてきた兵達に詳細を聞いた様だ。
 殺されたが、シュウガクリョコウの途中であるため王達は蘇ってきた様だ。
「目的を達成するまで、死ぬことすら許されないらしい」
「そりゃありがたいが、辛いな」
 そしてそれは、人間離れした強さを持つ王達が死ぬほどの戦いに、自分たちも乗ったと言う事。

「俺達も若返って生き返るのかな?」
「さあ、どうだろうなあ? 聖戦ではあるが……」
 彼らは不安を募らせる。


 いつか来た道をまたひた走る。
 今回横ではしゃいでいるのは、ウェヌスではなく、澪達だ。
 ふと思い出すと、それは悲しく、心の棘として刺さっている。
 だが澪達には、そんな心の内は告げられない。

 勘ぐられるだけだしな。
「あのテクはすごかったものねぇ、忘れられないんだ……」
 なぜかそっちへ、話が飛んでいくからだ。

 悲しみを、語れない辛さ……

「龍一ったらさ、師匠の話をすると必ず一部が元気になるんだもの、どう思う?」
「あれすごかったもの……」
 そんな話しが、女子側ではあった。

 そして今回、ホバーによる移動のため、速度が速すぎて偵察と連絡が魔人族側で遅れて混乱をする。

 大きくて、早い。

 街道を走る馬車達も、あっというまに撥ねられていく。
 それは本当に無慈悲な事。

「ええ、そいつは突然現れました。ぶおおとか言う音を…… いえ唸りでしょうか? 馬にひかれた荷車。それごと、パイーンと…… そこに容赦は無く。えっ? 怪我をした馬? 美味かったです。まあ最近始まった保険が効きまして。ええまあ損はありませんが恐ろしかったです」

 魔人族領の各地で起こったひき逃げ事件。
 それは、魔王の町アンダワルドへと近付いていく。

 だが、彼らは町には寄らず、そのまま行きすぎ、霊廟へと一直線。
 そう彼らは、魔王が目覚めたことを知らない。

 彼の地へと一直線に向かってしまう。

 そこは 、扉がぶち抜かれ、おっぴろげられていた。
「久しぶりだな」
 周囲には、あの時乗っていた、荷車の破片が散乱していた。

 あの爆発にも霊廟は耐え、あの時のまま。
 奥の扉もそのままに、あのブヨブヨは無くなっていた。

 いくつかの骨が転がっている。
 一緒にいた兵達と、あの兄妹。

 皆は手をそろえ、拝んだ後。
 箱に収めていく。
 そして、各自の身守りナイフを回収。

「居なくなっているな」
「ああ。ここより奥に魔人の居る洞があると言っていた。そっちを浄化しよう。向こうは実体がなく、悪意の固まりらしいからな」

 そうして彼らは、山奥の洞へと向かう。

 魔人が蠢くところ。
 ボス戦を回避していきなりラスボス戦へ。

 だが、彼らの使う浄化はめっぽう効いた。

「おいそっち、逃げるぞ、逃がすな。それにガス状の黒い奴、そいつが本体のようだ、触れるな、食われるぞ」

 皆が強さの差はあるが、浄化の光を纏い、魔人を消していく。
 その黒き煙は噴く出す端から滅されていく。


「魔神様が助けを求めている」
 キュピーンと何か電波を感じたらしく、魔王がいきなり立ち上がり、走り始める。
 よく判らない繋がりがある様だ。

 魔人は眠っていた。
 だが、端から焼かれる様な痛み。

 逃げようとするが、どこまでも追いかけてくる浄化の光。


「何かくるぞ」
「魔人族だろ撃て」
「了解」
 今回、初の砲撃。
 
「ターゲットロック。フルオート追尾オン。てぇ」
「了解」
 その時、狂気の様な銃撃は始まった。

 魔王はとっさにシールドを張る。
 だが、凶悪な物理攻撃は、シールドを抜け、類い希なる身体再生が追いつけないほどのスピードで彼を壊していく。

 時代の変化。
 昔なら無敵だった。
 魔導具の進化により、その攻撃は生き物の限界を超えた。

 龍一達が魔人を浄化する間に、名も無き兵達が魔王を倒してしまう。
 いや本当、三十五ミリ機関砲は凶悪だった。
 魔王は銃弾を食らい、分解されていった。
 その後駆けつけてきた四天王達も、後を追うことになる。

 それは、訳も分からず無慈悲に……
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