63 / 95
第四章 魔王と魔人
第63話 魔王
しおりを挟む
「ぬっ、何かが来た」
まだ、彼の目は覚めてはいない。
だが、その強大な力が来たことは気がついた。
忌々しい、光を纏った何か?
霊廟のドアが今開かれた。
吹き抜ける風、善と悪の波動が混ざりあう。
それに呼応するように、背筋に寒気が走るような音が鳴り響く。
それは、おおおぉとでも言うような、地獄の底からでも聞こえるような、苦しみの声のように聞こえるし、ジュースの瓶の口。そこに息を吹きかけるような音にも聞こえる。
多分後者が正解だが、雰囲気はある。
回廊は石の柱が建ち並び、伏兵を潜ませるには丁度良さそうな造り。
まあ誰も居ないことは、気配で分かる。
罠などを気にしながら進んでいく。
そして突き当たり、ここにも丈夫そうな扉がドドンと存在した。
そしてドアの前には…… 張り紙があった。
『魔王様就眠中、時が来れば起きるので起こすべからず。無理に起こせば、存在は災いとなりけり』
「なんか書いてるな」
「自宅へ帰ったら、俺の部屋のドアの前に、書いて張っておきたい文言だな」
「引きこもりかよ」
つい口を突いて言ってしまう。
「いや休みでも、容赦なく起こされるだろ。たまにむっとくるんだよな」
「まあ、わからんでもない。さて開け方は?」
そう言って周囲を探す。
鍵穴はなく、特に何か魔導具が設置されている感じでもない。
「何もないな?」
ふと思いつき、観音開きの扉、取っ手を掴み引いてみる。
重いだけだった……
あっさりと扉は開く。
魔王が眠っているのに非常に不用心…… だと思ったら、中に奇妙な物が……
「なんだこれ?」
うにょうにょとした、粘体。
まるで繭のような造り。
半円形の二十畳はありそうな部屋の中、その丸いものはうにょうにょと表面が動いている。
「気持ち悪い、何これ?」
そう言いながら、ウェヌスが触れようとする。
「ウェヌス、触るな」
「はいぃ」
龍一が言うと、びたっと手が止まる。
「どう見ても生き物だ、やばいものだと食われそうだ」
「えっ、私のことを心配して?」
「当然だろう」
「りゅーいち…… 好き」
そう言って、彼女は龍一に飛びついてくる。
まあそんなものは、いつものこと。彼女は事あるごとに理由を付けて龍一に抱きつくので慣れた。なので、他の皆は彼女の行動は無視をして、その奇妙な繭に対して攻撃を開始。
生物なら火だろう、そう考えて、躊躇無く魔法がぶち込まれる。
だが吸収されるように、ふっと消える。
当たった部分は、一瞬だけ奇妙に蠢くがそれだけ。
「これはあれだな、荷車を持って来い」
「ほいほい」
幾人かが入り口へ戻っていく。
その間に、何か無いかと探すが何もない。
剣で刺しても、ぽよんとして通らない。
「結構固いな」
「見た目は、うにょうにょだけどな」
全員、思い思いに攻撃をする。
この膜、一応魔王様の造った物。
安眠繭。
敵の魔法も物理攻撃も吸収して、中まで攻撃を通さない。
見た目は趣味だ。
言うなれば、魔法シールド。
だが、趣味の悪い見た目に反してその力は本物。
四天王達の攻撃でも通らない。
過去に、下剋上を狙い、眠っているところに攻撃をしようとした奴らが居たためだ。
だから、恐ろしく丈夫。
だが、起こすだけなら、攻撃をし続けるか、周りで叫べば良い。
魔王アシュメダイは眠りながらも、周りのことは理解している。
ええい騒がしい。我が眠りを妨げるのは何者だ。
そんな事を思っていた。
そこへ、やって来ました荷車が。
「ようし、構え―、てぇ」
適当なかけ声で、銃口から火が噴き出す。
それは、無敵を誇る魔王の繭を少しずつ削り、穴を開けていく。
「ぬっ、なんだこれは?」
騒がしい音、そして衝撃。
閉じていた目が今開かれた。
魔王様、激おこである。
「我が眠りを妨げるとは…… 死ぬがいい」
その瞬間、繭が内側から弾けて、黒い炎が霊廟内を埋め尽くす。
なんと言うことでしょう。
龍一達はとっさにシールドを張ったが……
「ほい、反省文を書け」
懐かしい先生の顔、グランド周りに見える校舎。
差し出された、原稿用紙。
当然それがどういう事か、龍一達は理解する。
「負けたのか……」
「そうみたいだな」
神野 龍一、杉原 楓真、松本 大和、松岡 大翔、小林 一颯等々、あそこに参加していたのは主だったメンバー全員とほか多数。
高校時代まで戻り、幼くなった顔を少し懐かしみながら反省文を高速で書き込む。
『今度は負けない』
全員の反省文、最後の文言はなぜか同じだった。
彼らは島の小高い山の頂上へと戻ってくると、一気に山を下り丸太を探すと、魔法で操り、いつか練習をした波乗りで大陸へとあっという間にもどる。
城へ戻ると、迎えた者達は幼くなった皆を見てその意味を理解をする。
そして、戻ってきた者達と、戻って来れなかった者達。
そうあの究極ともいえるエロ婦、ウェヌスとデモゴルゴンの兄妹がもう居ないことを理解する。
「そっかぁ、死んじゃったんだ、お師匠様……」
龍一の嫁ーズの中では、彼女は神格化されていたようだ。
伝説の性技は、私たちが後世に伝えるわ。
そう言って、よくわからない星に誓う。
その時、龍一達は少しのぼせ上がっていた自身に反省をして、修行を始める。
その頃、お怒りな魔王は、勢いそのままに、魔人族領で暴れていた。彼らにとっては良い迷惑だけが残った。
そして彼らは願う、誰か魔王を倒してくれと……
まだ、彼の目は覚めてはいない。
だが、その強大な力が来たことは気がついた。
忌々しい、光を纏った何か?
霊廟のドアが今開かれた。
吹き抜ける風、善と悪の波動が混ざりあう。
それに呼応するように、背筋に寒気が走るような音が鳴り響く。
それは、おおおぉとでも言うような、地獄の底からでも聞こえるような、苦しみの声のように聞こえるし、ジュースの瓶の口。そこに息を吹きかけるような音にも聞こえる。
多分後者が正解だが、雰囲気はある。
回廊は石の柱が建ち並び、伏兵を潜ませるには丁度良さそうな造り。
まあ誰も居ないことは、気配で分かる。
罠などを気にしながら進んでいく。
そして突き当たり、ここにも丈夫そうな扉がドドンと存在した。
そしてドアの前には…… 張り紙があった。
『魔王様就眠中、時が来れば起きるので起こすべからず。無理に起こせば、存在は災いとなりけり』
「なんか書いてるな」
「自宅へ帰ったら、俺の部屋のドアの前に、書いて張っておきたい文言だな」
「引きこもりかよ」
つい口を突いて言ってしまう。
「いや休みでも、容赦なく起こされるだろ。たまにむっとくるんだよな」
「まあ、わからんでもない。さて開け方は?」
そう言って周囲を探す。
鍵穴はなく、特に何か魔導具が設置されている感じでもない。
「何もないな?」
ふと思いつき、観音開きの扉、取っ手を掴み引いてみる。
重いだけだった……
あっさりと扉は開く。
魔王が眠っているのに非常に不用心…… だと思ったら、中に奇妙な物が……
「なんだこれ?」
うにょうにょとした、粘体。
まるで繭のような造り。
半円形の二十畳はありそうな部屋の中、その丸いものはうにょうにょと表面が動いている。
「気持ち悪い、何これ?」
そう言いながら、ウェヌスが触れようとする。
「ウェヌス、触るな」
「はいぃ」
龍一が言うと、びたっと手が止まる。
「どう見ても生き物だ、やばいものだと食われそうだ」
「えっ、私のことを心配して?」
「当然だろう」
「りゅーいち…… 好き」
そう言って、彼女は龍一に飛びついてくる。
まあそんなものは、いつものこと。彼女は事あるごとに理由を付けて龍一に抱きつくので慣れた。なので、他の皆は彼女の行動は無視をして、その奇妙な繭に対して攻撃を開始。
生物なら火だろう、そう考えて、躊躇無く魔法がぶち込まれる。
だが吸収されるように、ふっと消える。
当たった部分は、一瞬だけ奇妙に蠢くがそれだけ。
「これはあれだな、荷車を持って来い」
「ほいほい」
幾人かが入り口へ戻っていく。
その間に、何か無いかと探すが何もない。
剣で刺しても、ぽよんとして通らない。
「結構固いな」
「見た目は、うにょうにょだけどな」
全員、思い思いに攻撃をする。
この膜、一応魔王様の造った物。
安眠繭。
敵の魔法も物理攻撃も吸収して、中まで攻撃を通さない。
見た目は趣味だ。
言うなれば、魔法シールド。
だが、趣味の悪い見た目に反してその力は本物。
四天王達の攻撃でも通らない。
過去に、下剋上を狙い、眠っているところに攻撃をしようとした奴らが居たためだ。
だから、恐ろしく丈夫。
だが、起こすだけなら、攻撃をし続けるか、周りで叫べば良い。
魔王アシュメダイは眠りながらも、周りのことは理解している。
ええい騒がしい。我が眠りを妨げるのは何者だ。
そんな事を思っていた。
そこへ、やって来ました荷車が。
「ようし、構え―、てぇ」
適当なかけ声で、銃口から火が噴き出す。
それは、無敵を誇る魔王の繭を少しずつ削り、穴を開けていく。
「ぬっ、なんだこれは?」
騒がしい音、そして衝撃。
閉じていた目が今開かれた。
魔王様、激おこである。
「我が眠りを妨げるとは…… 死ぬがいい」
その瞬間、繭が内側から弾けて、黒い炎が霊廟内を埋め尽くす。
なんと言うことでしょう。
龍一達はとっさにシールドを張ったが……
「ほい、反省文を書け」
懐かしい先生の顔、グランド周りに見える校舎。
差し出された、原稿用紙。
当然それがどういう事か、龍一達は理解する。
「負けたのか……」
「そうみたいだな」
神野 龍一、杉原 楓真、松本 大和、松岡 大翔、小林 一颯等々、あそこに参加していたのは主だったメンバー全員とほか多数。
高校時代まで戻り、幼くなった顔を少し懐かしみながら反省文を高速で書き込む。
『今度は負けない』
全員の反省文、最後の文言はなぜか同じだった。
彼らは島の小高い山の頂上へと戻ってくると、一気に山を下り丸太を探すと、魔法で操り、いつか練習をした波乗りで大陸へとあっという間にもどる。
城へ戻ると、迎えた者達は幼くなった皆を見てその意味を理解をする。
そして、戻ってきた者達と、戻って来れなかった者達。
そうあの究極ともいえるエロ婦、ウェヌスとデモゴルゴンの兄妹がもう居ないことを理解する。
「そっかぁ、死んじゃったんだ、お師匠様……」
龍一の嫁ーズの中では、彼女は神格化されていたようだ。
伝説の性技は、私たちが後世に伝えるわ。
そう言って、よくわからない星に誓う。
その時、龍一達は少しのぼせ上がっていた自身に反省をして、修行を始める。
その頃、お怒りな魔王は、勢いそのままに、魔人族領で暴れていた。彼らにとっては良い迷惑だけが残った。
そして彼らは願う、誰か魔王を倒してくれと……
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる