はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第四章 魔王と魔人

第63話 魔王

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「ぬっ、何かが来た」
 まだ、彼の目は覚めてはいない。
 だが、その強大な力が来たことは気がついた。

 忌々しい、光を纏った何か?

 霊廟のドアが今開かれた。
 吹き抜ける風、善と悪の波動が混ざりあう。


 それに呼応するように、背筋に寒気が走るような音が鳴り響く。
 それは、おおおぉとでも言うような、地獄の底からでも聞こえるような、苦しみの声のように聞こえるし、ジュースの瓶の口。そこに息を吹きかけるような音にも聞こえる。
 多分後者が正解だが、雰囲気はある。

 回廊は石の柱が建ち並び、伏兵を潜ませるには丁度良さそうな造り。

 まあ誰も居ないことは、気配で分かる。
 罠などを気にしながら進んでいく。

 そして突き当たり、ここにも丈夫そうな扉がドドンと存在した。

 そしてドアの前には…… 張り紙があった。

 『魔王様就眠しゅうみん中、時が来れば起きるので起こすべからず。無理に起こせば、存在は災いとなりけり』

「なんか書いてるな」
「自宅へ帰ったら、俺の部屋のドアの前に、書いて張っておきたい文言だな」
「引きこもりかよ」
 つい口を突いて言ってしまう。

「いや休みでも、容赦なく起こされるだろ。たまにむっとくるんだよな」
「まあ、わからんでもない。さて開け方は?」
 そう言って周囲を探す。
 鍵穴はなく、特に何か魔導具が設置されている感じでもない。

「何もないな?」
 ふと思いつき、観音開きの扉、取っ手を掴み引いてみる。

 重いだけだった……

 あっさりと扉は開く。
 魔王が眠っているのに非常に不用心…… だと思ったら、中に奇妙な物が……

「なんだこれ?」
 うにょうにょとした、粘体。
 まるで繭のような造り。

 半円形の二十畳はありそうな部屋の中、その丸いものはうにょうにょと表面が動いている。

「気持ち悪い、何これ?」
 そう言いながら、ウェヌスが触れようとする。

「ウェヌス、触るな」
「はいぃ」
 龍一が言うと、びたっと手が止まる。

「どう見ても生き物だ、やばいものだと食われそうだ」
「えっ、私のことを心配して?」
「当然だろう」
「りゅーいち…… 好き」
 そう言って、彼女は龍一に飛びついてくる。

 まあそんなものは、いつものこと。彼女は事あるごとに理由を付けて龍一に抱きつくので慣れた。なので、他の皆は彼女の行動は無視をして、その奇妙な繭に対して攻撃を開始。
 生物なら火だろう、そう考えて、躊躇無く魔法がぶち込まれる。

 だが吸収されるように、ふっと消える。
 当たった部分は、一瞬だけ奇妙に蠢くがそれだけ。

「これはあれだな、荷車を持って来い」
「ほいほい」
 幾人かが入り口へ戻っていく。

 その間に、何か無いかと探すが何もない。

 剣で刺しても、ぽよんとして通らない。
「結構固いな」
「見た目は、うにょうにょだけどな」
 全員、思い思いに攻撃をする。


 この膜、一応魔王様の造った物。

 安眠繭。
 敵の魔法も物理攻撃も吸収して、中まで攻撃を通さない。
 見た目は趣味だ。
 言うなれば、魔法シールド。

 だが、趣味の悪い見た目に反してその力は本物。
 四天王達の攻撃でも通らない。

 過去に、下剋上を狙い、眠っているところに攻撃をしようとした奴らが居たためだ。

 だから、恐ろしく丈夫。
 だが、起こすだけなら、攻撃をし続けるか、周りで叫べば良い。
 魔王アシュメダイは眠りながらも、周りのことは理解している。

 ええい騒がしい。我が眠りを妨げるのは何者だ。
 そんな事を思っていた。

 そこへ、やって来ました荷車が。
 
「ようし、構え―、てぇ」
 適当なかけ声で、銃口から火が噴き出す。

 それは、無敵を誇る魔王の繭を少しずつ削り、穴を開けていく。

「ぬっ、なんだこれは?」
 騒がしい音、そして衝撃。

 閉じていた目が今開かれた。

 魔王様、激おこである。
「我が眠りを妨げるとは…… 死ぬがいい」
 その瞬間、繭が内側から弾けて、黒い炎が霊廟内を埋め尽くす。

 なんと言うことでしょう。

 龍一達はとっさにシールドを張ったが……



「ほい、反省文を書け」
 懐かしい先生の顔、グランド周りに見える校舎。
 差し出された、原稿用紙。

 当然それがどういう事か、龍一達は理解する。
「負けたのか……」
「そうみたいだな」

 神野 龍一じんの りゅういち杉原 楓真すぎはら ふうま松本 大和まつもと やまと松岡 大翔まつおか ひろと小林 一颯こばやし いぶき等々、あそこに参加していたのは主だったメンバー全員とほか多数。

 高校時代まで戻り、幼くなった顔を少し懐かしみながら反省文を高速で書き込む。

『今度は負けない』
 全員の反省文、最後の文言はなぜか同じだった。

 彼らは島の小高い山の頂上へと戻ってくると、一気に山を下り丸太を探すと、魔法で操り、いつか練習をした波乗りで大陸へとあっという間にもどる。

 城へ戻ると、迎えた者達は幼くなった皆を見てその意味を理解をする。

 そして、戻ってきた者達と、戻って来れなかった者達。
 そうあの究極ともいえるエロ婦、ウェヌスとデモゴルゴンの兄妹がもう居ないことを理解する。

「そっかぁ、死んじゃったんだ、お師匠様……」
 龍一の嫁ーズの中では、彼女は神格化されていたようだ。

 伝説の性技は、私たちが後世に伝えるわ。
 そう言って、よくわからない星に誓う。

 その時、龍一達は少しのぼせ上がっていた自身に反省をして、修行を始める。

 その頃、お怒りな魔王は、勢いそのままに、魔人族領で暴れていた。彼らにとっては良い迷惑だけが残った。

 そして彼らは願う、誰か魔王を倒してくれと……
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