はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第四章 魔王と魔人

第61話 ヒト族襲来

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「何、それはまことか?」
 とうとう将軍の一人、ソーロが話を受けた。

 魔人族四天王の一人、ソーロは土系統魔法が得意。鬼タイプで額に大きな角。二メートルを越える体躯でオッサン。
 まさに鬼というイメージそのものである。

 他にも、フラーマ。
 彼女は炎系統が得意。女性の鬼系。性格はオラオラ状態で額に小さな角が生えている。なんと言うか勢いだけで突っ走る性格なので、報告は後回しにされる。

 アクーラは水系列。女性でありダークエルフの美人さん。
 うふふと笑いながら、首を狩る。

 ベントスは、不可視の風。鬼族だが、小さめの角が、額とこめかみ三方に生えており、フッとか言いそうな男前である。

「様子を見てくる」
 でかい図体の割に、腰が軽かったのはソーロ。
 だが、そう言った彼の顔は、オラむっちゃくちゃ興味があっぞ。
 そんなまるで、子どものような嬉しそうな笑顔だった。
 
 戦うのが好きな彼にとって、四天王になった事で非常に窮屈な世界となった。
 道行く者に喧嘩をうり、適当に殴り合いをするのが大好きだった。

 だが今、それをやると、魔王様が目覚めたときに陳情が上がってしまう。
 流石に彼でも、魔王様にはかなわない。
 彼は別格なのだ。

「じゃあ、どの辺りか教えてくれ」
 部下にそう伝える。

 そう彼は、地方名も方向も判らない。
 まあ究極の方向音痴である。
 戦う以外はまるで駄目。

 流石にあちらですと言われて、逆に走るようなことはしないが、まっすぐ走っているつもりがあっちこっちへふらふら行って、気がつけば逆方向というのはある。

 そのため、彼の移動専用馬車がある。

 中にはラウンジのように酒樽が搭載、お相手をする鬼女も乗車している。

 そして、トイレも完備。
 そう彼を外に出してはいけない。
 
 過去にあった内乱時、彼はトイレに行ったまま数ヶ月帰ってこなかった。
 そして、敵兵の背後から暴れながら帰ってきた。
 そんな感じで、だが、実績は残して昇進を受ける。

 抜群の戦闘力と、それ以外の無能さ。
 彼がなぜか兵に好かれる一因である。


 彼は馬車を降り、兵に聞く。
「敵がいるのはどっちだ?」
「はっ、敵はあちら側から奇妙な物で移動してきております。馬より早くそれを飛べる者が確認をしました」
「馬より早く走っているのか? それはすごいな」
 彼は感心をする。

 魔族でも、馬に勝てる者はかなりの実力者。
「うーむ。早く来い」
 ドドンと、街道に立つ。

 堂々として待っていたが、馬車の中で飲み過ぎたようで、もようして来てしまう。

「うぬ、ちと、もようしてきた」
 鬼女がやって来て、馬車へと促す。

 トイレに座り込み、彼は落ち着く。

 だがその時、にわかに外が騒がしくなる。
「なんだ一体、やかましい奴らだ」
 かれは、立ち上がり、トイレから出てくる。

「おしぼりをどうぞ」
「ああ、すまんな」

 そうして、酒を飲み、落ち着いてしまう。
 そう、来た理由を忘れてしまっていた。

 外では、通り過ぎた敵のことを報告したいが、まだ馬車からでてこないため声がかけられない。

 彼が、馬車から出てきたのは、たっぷり四時間後くらい。
「おお悪い、すっかり忘れていた。来たか?」
「申し訳ありません、四時間ほど前に通り過ぎました」
 なんだとぉ…… そんな感じで驚く。

「追いかけろぉ」
 そう、兵達の…… ほんの少しの油断。
 
 彼は走り出してしまった。

 どこかへ……

「ソーロ様、違います。そちらは、地獄谷へ向かう道、敵はあちらです」
 だが兵のそんな声は、すでに聞こえていなかった。

 砂埃を立てながら、すごい勢いで彼は遠くへ。

「いかん。追いかけろ」
 彼らは、大慌てで走り始める。

 その後どうなったのか不明である。
 そうその間に、他の四天王と戦闘になり、魔王城周辺は壊滅することになる。

 
「敵、近付いてきました。城門を閉めます」
「いや、打って出る」
 周りの意見は聞かず、フラーマが飛び出していく。

「えっ、フラーマ様あぁ」
 兵があわてる。
「もう良い、奴に当たらせろ、現在得ている情報は少ない」

 現在聞こえて来ているのは敵が来た、そして味方はあっという間にやられたと言う事だけ。

 
 彼女は門前で、腕組みをしてまさに仁王立ち。
 遠くに土煙が見えて、あっという間に近寄ってくる。
 それを見て、フラーマの額にちょこんと生えている角が怪しく光り出す。
 魔力を錬り、それが臨界状態になった証。

 彼女の周りに十を超える炎が浮かび上がる。
 鬼火と言われる青白い燐光、ただ、通常の燐光とは違い、温度は青白い炎、温度は一万度に達する。

 それが、問答無用で機関砲のように撃ち出され始める。

「おわっ、いきなりフラーマ様の登場だ」
 デモゴルゴンが教えてくれる。

「フラーマ様ってだれだ?」
「四天王の一人、炎系統の頂点だ」
「男か女か?」
「性格の悪い女の人よ」
 ウェヌスが教えてくれる。

 こっちに来てから、俺を独り占めできているから機嫌が良い。

「どうするかな?」
「殺ったほうが良いわよ、性格が悪いし」
 そう言ってむくれる。
 頭をなでながら、浄化の光を飛ばしてみる。

「なんだこれは?」
 フラーマの体を白い光が包む。
 これは……

 彼女の体から、白い炎が吹きだして包み込む。
「にゃんだ、これわぁ……」
 
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